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五月のバカはただのバカ

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五月のバカはただのバカ

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                              ☆


「いやー、上手くいったぜー」
 と、アキラ・セイルーンは言った。
 残った似顔絵ペーパーをブレイズから譲り受けたアキラとアリス・ドロワーズは、残った5枚のペーパーにカメリアの似顔絵を描きまくったのである。

 その結果、ここにツァンダ地祇戦隊カメリアンが誕生した!!

「アホかお主はーーーっ!!!」

「カ、カメリア落ち着いて!! 気持ちは分かりますが!!」
 と、朔に抑え込まれたカメリアはじたじたと暴れ、今にもアキラに殴りかかろうとする。

 だが、その様子を見たアキラは、のほほんと応えた。
「まあ、そう怒るなよ……ほら、どうやら他にも応援が来たみたいだぜ?」

「……え?」


 カメリアは目を丸くした。


 見ればその言葉通り、街のあちらこちらからカメリアとブレイズ達が戦っている場所にコントラクターが集まってきていた。

 七枷 陣。
「ふん……なんか面倒そうなことになってんなぁ、他の連中が集まるまで、時間稼ぎってとこか?」

 仲瀬 磁楠。
「時間稼ぎか……それもいいが――別に倒してしまっても構わんのだろう?」

 シリウス・バイナリスタ。
「ふん……あれがこのふざけた騒ぎの元凶か……とっととぶっ潰しちまおうぜ!!」

 秋月 葵とそのフェイク、リリカルあおいブラック。
「さあ、最後まで全開で行くよっ!!」
「……ん」

 宇都宮 祥子とそのフェイク、えむぴぃブルー。
「まったく――そろそろ終りにしましょうか」
「そうだね、大体街中の迷惑フェイクは回収したと思うよっ!」

 高峰 結和のフェイク、えんじぇる☆たかみん。
「みんな幸せになっちゃえばいいのですーっ!!」

 そして、レン・オズワルドと憂内 干斗のサングラサーコンビ。
「さあ……最後の大掃除と行こうじゃないか」
「ああ……この俺のビームが唸りを上げるぜ!!」


「お……お主ら……」


「さあ、最後の仕上げじゃ!!!」
 5人おカメリアは叫ぶと、ダークシャドウマスクに一斉に飛び掛り、その闇の身体を押さえ込んだ。
「皆の者、今の内に全力で攻撃するのじゃ!!」

「お、おのれぇぇぇーっ!!!」

 そこに集まったコントラクター達が一斉に攻撃を仕掛けた!!

「セット!!」
 陣のファイアストーム!!
「我が焔は猛り狂う……!!」
 磁楠の爆炎波!!
「これでも、喰らいなーっ!!」
 シリウスのサンダーストーム!!
「いっけぇーーーっ!!」
 葵のシューティングスター!!
「……!!」
 リリカルあおいブラックの歴戦の魔術!!
「いい加減、終りにしよう!!」
 祥子のブラインドナイブス!!
「ゲームセットってヤツだよっ!!」
 えむぴぃブルーの氷術!!
「悪い子にはおしおきですっ!!」
 えんじぇる☆たかみんの凍てつく炎!!
「……終りだ」
 レンのサイドワインダー!!
「目から100万パワーーーッ!!!」
 憂内 干斗のサンダークラップ!!


「ぬぁああああぁぁぁっっっ!!」
 叫び声を上げるダークシャドウマスク、すかさずそこに第二陣の攻撃が浴びせられた!!


「不本意ながら、綺麗なお兄さんの敵っ!!」
 クド・ストレイフの魔弾の射手!!
「可愛くなければ、こっちのものだ!!」
 鬼崎 朔の則天去私!!
「兄弟の敵だあああぁぁぁっ!!」
 ゲブー・オブインの鳳凰の拳!!
「正義の拳を喰らいなさいっ!!」
 小鳥遊 美羽の則天去私による正義の拳!!

「くらえ、輝く正義の雷を!!」
 ブレイズ・ブラス――正義マスクの轟雷閃!!
「――ボクは風、風を捉えることは、誰にもできないっ!!」
 そして鳴神 裁のブラインドナイブス!!!


「ぎゃあああぁぁぁーーーっ!!!」


 もはや闇の化身であろうが影の存在であろうが関係ない。
 これだけのコントラクターの攻撃を一身に受けては、どんな存在もひとたまりもないだろう。
 ダーク正義マスクとカメリア・シャドウが合体してできたダークシャドウマスクも例外ではなく、数々の魔術と直接攻撃を受け、闇の炎を全身から吹き出して消滅した。

「あっ!!」
「……!!」

 だが、最後の炎が一瞬だけ辺り一面を覆いつくし、その場にいた普通紙のフェイクを焼いてしまう。
 葵のフェイク、突撃魔法少女リリカルあおいブラックや、魔法憲兵少女えむぴぃブルー、えんじぇる☆たかみん、憂内 干斗はそれぞれダメージを追って元の似顔絵に戻ってしまった。

「……楽しかったね」
 と、葵はブラックを見送った。
「お疲れ様……ありがとう」
 祥子も似顔絵に向けれ敬礼をして、敬意を示す。
「はあはあ……あれ、終ったんですか?」
 そこに、本物の高峰 結和がやって来た。
「ありがとう……サングラサー」
 ノア・セイブレムは、残された憂内 干斗のサングラスを拾い上げ、そっと撫でた。

 消えてしまったのは、隠れて撮影勝負を行なっていた毒島 大佐のフェイクも例外ではない。
「――ふん、なかなか楽しめた。競争は我の勝ちだな」
 と呟いて、本日の戦果、大量のパンチラ写真を胸に帰って行った。


                              ☆


 ちなみに、ツァンダ地祇戦隊カメリアンも数々の攻撃の巻き添えで綺麗に消滅した。
 これで害のあるフェイクはまず処分が終了したと言っていいだろう。

 集まったコントラクター達に、ブレイズは言った。
「いや、すまなかった!! 俺が持ち込んだ『似顔ペーパー』にカメリアが似顔絵を描いたせいであんなことに――」
 カメリアも同様に笑顔を浮かべる。
「うむ、まさかあんなことになるとは思わなかったからの、ついつい勝手な嘘設定を――」

 その言葉を遮って、陣がバキバキと両手の指を鳴らした。


「ほう――ま た 地 祇 か 」


 その剣幕を見たカメリアから、さーっと血の気が引いていく。
「い、いや……あのその……ほ、ほれ……嘘は良くないかと思ったんじゃが、5月1日は嘘をついてもいい日じゃろ?」
 その言葉に、陣は両目をひん剥いて火を吹いた。


「ベタすぎるにも程があんだろーーー!! エイプリルフールは4月1日やーーーっ!! エイプリルの意味言ってみろーーー!!!」


 あっという間に捕まったカメリアはじたばたと暴れて抵抗する。
「す、すまんのじゃー、知らなかったんじゃーっ!! 痛い痛い、地味に痛い!!」
 だが、その程度で陣の怒りは収まらない。カメリアの頭の両側を拳でグリグリしていると、そこにもう一人、怒りに震える男が現れた。
 
 ルーツ・アトマイスである。


「カ〜メ〜リ〜ア〜!!!」


「ひぃ、黒い!! ルーツ黒い、オーラが黒いぞ、どうしたんじゃお主!!」
「ど・う・し・た・も・こ・う・し・た・も・!!」

 陣にウメボシを喰らうカメリアのほっぺたを両側に引っ張るルーツ。
「あんまりにも悪戯が過ぎるぞ!! せっかくチョコブラウニーを焼いてきたが、今日はお預けだ!!」
「しょ、しょんにゃ〜!!」
 情けない声を上げるカメリアに、ブレイズが止めに入った。
「お、おい待ってくれ!! カメリアばかりのせいじゃないんだ、元はといえば俺が持ち込んだペーパーのせいで――」

 その肩を、後ろから磁楠がぽんと叩いた。

「――安心しろ、お前を許すとは誰も言っていない」
「あ……えーとその……スミマセン」


 10分後。


「ブ……ブレイズ……生きておるか……」
「な……なんとか……」

 結局、怒り狂ったコントラクター達にフルボッコにされ、街角に転がるカメリアとブレイズだった。
 クドや朔を始めとするカメリアに友好的なメンバーは止めようとしたが、確かに悪いのは自分達だと、カメリアもブレイズも罰の免除を断ったのである。
 とはいえ、陣やルーツも本気で殴っているわけではない。彼らが仮に本当の本気で殴ったら死んでいるところだ。

「……うう……ひどい目に合ったわ……しかしまあ仕方ない……儂はちょっと行くところがある……」
 と、カメリアはよろよろと立ち上がった。
「……え……どこに行くんだ?」
「……ちょっとな……」
 行き先も告げず、カメリアは立ち去る。
 夕陽の中にその姿は溶け込んで見えなくなった。


                              ☆


「アキラ〜おるかこの馬鹿ものが〜」
 と、カメリアはよろよろになりながらアキラ・セイルーンの自室の窓を開けて進入した。
 いつぞやに報復に来て、自室の場所は分かっていた。
 カメリアは今回も、ツァンダ地祇戦隊カメリアンという馬鹿げたたくらみをしたアキラに仕返しに来たのだ。

 が。

「……なんじゃこりゃ」
 アキラの部屋には誰もいない……いや、一人いた。
 アキラのフェイクだ。
 胸にサンドイッチマンよろしく張り紙がしてある。


『カメリアが怖いので旅に出ます。探さないで下さい』


「……」
 もはや何をか言う気力もない。
 カメリアは無言でアキラのフェイクを殴り、似顔絵に戻した。


 そのままカメリアは、アキラの自室で二日ほど過ごして帰った。
 腹いせに、冷蔵庫の中身を全部空にしていったという。


 ちなみに、藤原 優梨子のフェイクはその後、本人に首を刈られたそうだ。
 その際、フェイクは似顔絵に戻らなかったのか、もしくは何らかの処理を施されたまま首を刈られたのか等は、闇の中である。


                              ☆


 ――後日。

「それじゃ、けっこう大変だったんですねぇ」
 音井 博季(おとい・ひろき)はカメリアを誘って個人的にティーパーティを開いていた。
 カメリアはというと、結局ルーツのブラウニーは食べ損ねたし、陣にはフルボッコにされるし、で全くいいところがなかった。
 そのため、お茶もお菓子も食べ放題と聞いて一も二もなく駆けつけていたのである。

 他にも、博季は数人の友人知人を誘い、カメリアの労をねぎらった。

「そうなのじゃ、儂とてワザとではないというのに……まあ、エイプリルフールが4月1日じゃったのは誤算じゃったが……」
「ははは……エイプリル、の意味を考えてみれば良かったですね。まあいいじゃないですか、今日は嫌なことは忘れて食べて下さい、遠慮せずに」
 と勧めるまでもなく、カメリアは博季の用意したスコーンやクッキーをおいしそうに頬張っている。
「んむ、頂いておるぞ……これはうまいのぅ、お主が作ったのか?」
 その言葉に、博季は微笑んで首を横に振る。
「いえ、お菓子は幽綺子さんが焼いてくれたんです――彼女、喜びますよ」
 と言いつつ、博季はカメリアのために特別に紅茶を淹れた。
「紅茶の種類もいくつかありますし……こう見えても紅茶を淹れるのは得意なんですよ?」
 すると、その様子を見たカメリアは、笑った。
「こう見えても何も――お主と紅茶は、良く似合っておるよ」
 アッサムのミルクティーをリクエストしたカメリア、紅茶を手際良く淹れる博季を、興味深そうに眺めていた。

 平和な午後。
 紅茶を待つ時間、たわいもないおしゃべりの時間だけが、ゆっくりと過ぎていく。


「うん――うまい」
 と、カメリアと博季は、静かに笑い合った。


 時に、カメリアは博季のフェイクも描いたはずなのだが、騒動のせいで本人はすっかりそのことを忘れている。
 そのフェイクはと言うと――。

「あ、次はその辺片付けといて、その次は皿洗いね――いやぁ助かるわ、人手が足りなくってー」
 と、博季のパートナー、西宮 幽綺子(にしみや・ゆきこ)は笑った。
 博季のティーパーティのために各種お菓子などを用意した彼女、その裏方として博季のフェイクがこき使われていたことを博季は知る由もない。

「は、はい……うううぅぅぅ」
 そのフェイク博季は、なにやら女子にトラウマがあるようで、女の子の言う事は何でも泣きながら聞いてしまうのだ。

「あぁ、これは楽だわぁ……♪」
 と、幽綺子もまた優雅な午後を過ごすのだった。


                              ☆


 ところで、朝霧 垂が苦労して持ち帰ったフェイク『垂るぱんだ』はどうなったのかというと。


「ぱっぱぱんだ〜♪」


 ――実は、まだ家にいるのです――。


『五月のバカはただのバカ』<END>


担当マスターより

▼担当マスター

まるよし

▼マスターコメント

 5月24日
 ・P5、台詞の間違いを修正しました。
 5月19日
 ・P9、キャラクター名の間違いを修正しました。
 ・P16、性格にそぐわない台詞と周辺を修正しました。
 ・P17、状況に矛盾している台詞を修正しました。
  申し訳ありませんでした。

                              ☆

 みなさまこんにちは、もしくはこんばんは、まるよしです。
 しかし今現在は絶賛おはようございます。朝陽が眩しいです。
 これを書いている時点でギリギリの朝ですので、締め切りには間に合いそうです。

 おかしいな……GW挟んでいたから締め切りには余裕がある筈だったのに……。
 えーとまあ、実生活でいろいろと変動がありまして、余裕がなかったという現状です。
 とはいえ、何とか間に合わせることができそうで、ほっとしております。

 これが9作目のリアクションになりますが、いかがでしたでしょうか。
 もし少しでもお気に召していただければ、幸いです。

 今回、書き初めて気付いたことですが、『自分のフェイクがいる』ということは、PL様一人につき、1キャラ分把握しなければいけないキャラが増えるわけで……まあ、書くまで気付かなかったのか、という話ですが、気付きませんでしたすみません。

 お話の特性上、MCとLC間で話が完結するアクションと、他PCと絡まないお話にならないタイプのアクションと両極端だったのが、印象的でした。
 ちなみに、カメリア・シャドウさんを狙った方が本当に一人もいませんでしたので、あのような形の判定となりました。

 もし、口調や設定、表現などで「これはおかしい」という部分がございましたら、遠慮なく運営様までご連絡下さい。可能な限り応対させていただきます。

 さて、それでは次のリアクションもありますので、この辺で。
 次は10作目でスペシャルシナリオ『春は試練の雪だるま』でお会いしましょう。
 何がスペシャルか、というのは本人も悩みどころですが、可能な限りPL様同士を絡める形で、お祭り騒ぎに仕立て上げたいと思っています。
 文章量はあまり変わらないと思います。何しろ、普段のノーマルシナリオですでに規定の量をぶっちぎっているようですので、長くしても読みにくいだけ――量より質、を目指して集中したいと思います。

 ご参加いただきました皆さん、そして読んで下さった皆さん、本当にありがとうございました。