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リアクション
「ふ〜っ、疲れたけど楽しかったね!」
「まぁね」
遠足も終わった夕方、にわかに食堂がにぎわってきた。
背伸びをしながら、セレンフィリティ・シャーレット(せれんふぃりてぃ・しゃーれっと)は席へ着く。
セレアナ・ミアキス(せれあな・みあきす)も、出されたおしぼりで手を拭いた。
「お腹がすいたし、ついでに晩ごはん食べて帰りましょ☆」
「ここまで来たらね、むしろ食べないと損だわ」
「噂によると、この食堂には裏メニューならぬ『へんてこメニュー』があるらしいじゃない!?
それ、2人分お願いしてもいいかしら?」
「ちょっと、勝手に注文しないでよ!」
「でもあたし、セレアナと一緒に食べたいな」
「うっ……しょうがないわねっ!」
掲げられているメニュー以上に謎なのに、なんの確認もなく頼んでしまったセレンフィリティ。
もちろんセレアナは抗議するが、断りきれなかった。
「ふふっ、ありがとう。
それにしても、今日はいろんなことがあったわね」
「えぇ、まずは甘味屋での出来事かしら?」
2人は、今日1日の出来事を振り返る。
甘味屋も数件まわって、そのたびに違うスイーツをいただいた。
ほかにも、衣装屋や道具屋、髪結処も覗いてみたり。
普段の観光では入らないような店や場所にも、たくさん足を踏み入れていた。
と、そうこうしているうちに、お待ちかねの料理が。
「わ〜い、美味しそうだわ!」
「そ、そうね……」
「これ、絶対に写メっとくべきよね!?」
「はははは……」
喜ぶセレンフィリティとは対照的に、若干ひき気味のセレアナである。
なにが『へんてこ』だったかって?
もうそれは、僕の口からはとてもとても……実際に食べてみるべきだと思うよ。
「うん、でも味はまともだわ!」
「けどこれ、このみためでこの味はちょっと……」
「確かに予想外かも!
それに、食べる気が失せるような色よね」
「食べてるときに言わないで〜」
セレンフィリティもセレアナも、なんだかんだで楽しんでいるようだ。
(無邪気ね……やっぱり私、セレンフィリティのことが大好き)
(セレアナと一緒に過ごせる時間って、とっても素敵☆
何物にも代えがたい瞬間だわ)
セレアナは、年下の恋人の姿を微笑ましげに見つめている。
向かいに座るセレンフィリティも、幸せな気持ちを胸のうちに抱いていた。
「ごめんね、ティア」
「うん」
食堂のずっと端の方に、高月 玄秀(たかつき・げんしゅう)の姿がある。
和風ハンバーグ定食と親子丼をあいだに挟み、お向かいにはティアン・メイ(てぃあん・めい)。
ティアンは、玄秀の方を見ようすらとしない。
「ほら、これお土産。
この埋め合わせはいつかしますから」
「ありがとう」
なんとか機嫌を直そうと、玄秀はがんばる。
キラキラ可愛い、陰陽科特製ストラップを渡してみたり。
「ティアは今日、なにをしていたのですか?」
「私?
えっと、あんみつを食べていたわ」
「そうですか、いかがでしたか?」
「うん、美味しかったわよ」
(残念だったな……距離を詰めるいい機会だと思ったのに……)
と、ティアンは、周囲のカップルに嫉妬まじりの視線を投げかけつつ思う。
玄秀とのあいだに、絶対的な心の壁があるような気がしてならないのだ。
「ありがとう、ティア」
「え?」
「ティアのおかげで僕、今日はすっごく有意義な時間が過ごせました。
いろいろと興味のあるものを見つけることもできましたしね」
「そう……よかったわ」
ふっと、ティアンが笑う。
不満はあるけど、玄秀が嬉しければ、ティアンも嬉しいのだ。
「ほら、見てください!
地上では見ないような古い術式があったんですよ!」
「へぇ……それ、って、すごいんですよね!?」
「うん、とってもね!
書庫にも入らせてもらえたから、資料も思いっきりあさっちゃいましたよ!」
玄秀は、特技に『東洋魔術』『資料検索』『捜索』を持っている。
これらを駆使して、その場にあったあらゆる書物を読み解いていた。
「やっぱり、陰陽道の世界は素晴らしいですね」
(玄秀が嬉しそうで、ま、よかったかな)
とりあえず、仲直りしたかな。
食堂は、温かい雰囲気に包まれていたのだった。
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