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悪意の仮面・完結編

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悪意の仮面・完結編

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第7章

 こうして、ツァンダに巻き起こった仮面の事件は、一応の解決を見た。
 街に多くの傷跡と……人々の心に爪痕を残したが、いずれは、その傷も癒えることだろう。


「まあ、その、なんだな」
 ほとんどがれきと化した一角のがれき撤去を続けながら、白泉 条一がぽつり。
「ちょうど撤去工事の計画が進んでいたみたいだし。こうやって片付ければ、処分はなしってことになったんだから、ラッキーといえばラッキーだな」
「……うう、それにしても、やっぱりあんなこと……」
 くすん、と未だに泣きそうになっている乙川 七ッ音。
「それに関してはこっちも同じだ、気にするな」
 こちらは熊楠 孝高。付き合いよく、がれき撤去に付き合っているのだ。
「ま、まあ、同じような悩みを抱えてる人が居るって分かっただけでも、少しは気が軽くなったのだ」
 天禰 薫と、一応は共犯者である朱雀の石榴が、がれきを郊外まで運ぶ作業から戻って来た。
「とりあえず、めそめそするのはこの作業が終わるまでにしようや。それからは心機一転、いいな?」
「はい……」
「うん」
 孝高が二人に告げると、七ッ音はおずおずと、薫は素直に頷いた。


「はあ……」
 ステージ袖で、神崎 輝が大きくため息をついた。
「……まだ気にしてるんですか?」
 その様子に気づいた茅野瀬 衿栖が声をかける。こくんと頷く輝。
「でもでも、ほら、仮面のせいなんだし。みんなもステージを楽しみにして紆余」
 と、フォローを入れる松本 恵。
「でも……ボク、思ったんです。こんなんじゃダメだ、まだまだだって」
「まだまだ?」
「みんながボクの歌にノってくれなかったのは、迷惑だたからじゃなくて、ボクが未熟で、一人前じゃないからじゃないかって」
「何言ってるのよ、自信持ちなさい!」
 ぱんっ!
 と、輝のお尻がいい音を立てて叩かれた。
「ひゃあ!?」
 悲鳴を上げる輝に、ふふふと口元を隠して笑う多比良 幽那。
「まだまだだったら、これからもっと素敵になれば良いのよ」
「そうですよ、それに、輝さんが落ち込んでたらみんな、元気がなくなっちゃいますよ」
「ほら、笑顔笑顔!」
 衿栖と恵に励まされて、はっとしたように輝が頷く。そうして、気合いを入れるように拳を握ったかと思うと、その表情に笑顔を作る。
「ありがとう、みんな! ……ボク、がんばるよ!」
「出番だよ、がんばって!」
 ぱっと光がステージを照らす。大きく深呼吸した後、輝は、自分を待っている人たちの前に踏み出していった。


「で、なんだってあんなことまでしたんだよ?」
 呆れたように頭を掻く緋山 政敏。その視線の先は、自分で斬った服の修繕を手伝わされているセイニィである。
「……それは……あ痛っ」
 慣れない針仕事で穴だらけになってしまいそうな指に絆創膏をまきながら、うーっとうなるセイニィ。
「なんとなく、分からないわけじゃないけど……」
 と、ルカルカ・ルー。
「というと?」
「そりゃあ、女の子だもん。いろいろあるよね?」
 にっこりと笑みを向けるルカルカ。かっと、セイニィの顔が赤らんだ。
「べ、別に!」
「何だよ、お前が見た目なんか気にするタマかよ……あいてててっ!」
「もういいから、これ以上つっつかないの!」
 カチェアに耳を引っ張られて、その場から退場していく政敏。それを見送って、ダリルがたったいま届いた連絡から顔を上げた。
「今までの事件で回収された仮面は、分かっている限り、各校が封印することになったようだ」
「あんなでも貴重な代物だから、壊すわけにもいかないんだね」
 ふうっとルカルカがため息をつく。
「だが……なぜか、これで終わりとは思えんのだ」
「いつか、第2第3、じゃなかった、第5第6の悪意の仮面が……」
「あんたたち、それが言いたいだけじゃないの?」
 遠い目をする二人にセイニィが告げる。
「……そうだな。気のせいだろう。さあ、ノルマがまだまだ残ってるぞ」
「あたしはもう、絶対被らないからね!」
 思わず叫ぶセイニィ。一同が笑いを上げた。


 悪意の仮面にまつわる物語の終幕。
 だが人々よ、気をつけたまえ。
 仮面があろうとなかろうと、人の中には悪意が宿り、育つもの。
 ほら今も、あなたの心にも……。

担当マスターより

▼担当マスター

丹野佑

▼マスターコメント

 本シナリオのリアクション執筆を担当させて頂きました、丹野佑と申します。
 シナリオに参加していただき、あるいはリアクションを読んで頂き、まことにありがとうございます。

 長く続いた悪意の仮面のシリーズも、これにて完結となります。
 PCの普段見られない一面を様々に描き、またPC同士の対決も演出できるこのシリーズは、書いていて実に楽しかったです。

 初回を書いた時には、このシリーズの出発点はダジャレだとか、手抜き根性だとか言っていましたが、実はもう一つ、理由がありました。
 というのは、シナリオガイドを書く時、PCが絡みたくなる事件を考えるのが大変なので、こうなったらPCが事件の発端ということにしてしまえ! という、乱暴な思考です。
 ……あれ、それって結局手抜き根性のような?

 今回も、活躍や内容を踏まえ、何人かの方に称号を贈らせて頂きました。
 仮面にかかわる称号だけで膨大になっているため、すべて仮面を着けた/外したキャラクターへ贈っています。

 最後になりましたが、重ねて、ご参加頂いた皆様、ありがとうございました。
 また何らかの形でPCの他の一面を描く機会があればいいですね。
 では、機会があれば、またマスターを務めさせて頂きたく思います。