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悪意の仮面・完結編

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悪意の仮面・完結編

リアクション

「おい、手ぇ出すんじゃねえぞ! テメェらは決闘の準備でもしてろ!」
 水を差したことが、かなり頭に来ているらしい。乱世の持つ二つの銃が次々に弾丸を放つ。
「ったく、一回痛い目に遭わせて改心させるしかなさそうね」
 位置を変えて、こちらはアルマ。合計四丁の拳銃による十字砲火だ。
「私の巨乳狩りを! 邪魔させはしません!」
 びゅう、とラグナのナギナタが振るわれる。飛び来る弾丸をはじき飛ばし、素早い身のこなしでその場を離れる。
「あまり、無粋なことはしないでくれる? せっかく、決着をつけようとしていたのに!」
 ふ、と、一瞬で距離を詰めたローザマリアがその背に銃を突きつける。だが、そのバストサイズがラグナの怒りをさらに煽る。その体がねじ回しのようにきりもみし、振り袖が手の中の銃を絡め取って弾いた。
「手こずらせるなっての!」
 乱世の意志に答えて、重力がラグナの体を絡め取る
「これくらい……! 垂れるものなんてないのですから……!」
「なんか、だんだん腹立ってきたわ」
 今度は正面から、アルマが迫る。
「厚着ぐらいしたらどうですの!?」
 本音らしきものを覗かせながら、ナギナタを振り下ろすラグナ。が、アルマの手が掲げられ、魔導銃の銃把ががっきとその刃を受け止めた。
 ふと、背後に気配を感じた。振り向く余裕があるはずもないラグナの腕が……先ほど雅羅にしたように……体ごと、ロープに巻かれた。
「ごめんなさい、確実に捕まえられるチャンスを狙っていたんです」
 と、囁くのはノア・ローレンス(のあ・ろーれんす)。陰から戦いを見守りながら、貧乳盗賊団の一員……ラグナのことだ……を捕らえる機会をうかがっていたのである。
「……巨乳は……はっ」
 ふと、コマ送りの世界でラグナは気づいた。視界の中で宙を舞っている銃が、ぱん、と軽い音を立てて銃弾を放ったことに。彼女自身がはじき飛ばしたはずの、ローザマリアの銃である。
「相手が違っちゃったけど、まあいいわ。Dixieを聞かせてあげる」
 次の瞬間には、その弾丸がラグナの仮面を打ち砕いていた。超人としての能力を用いた機械操作である。
「ううっ……」
 と、気を失いかけるラグナの体に、ノアが素早く……なぜか、その体のラインを強調するように……縄をかけていく。
「強盗団に狙われる前に、先にこっちから捕まえようと思っていたんですけど。なんだか、楽してしまったみたいですみません」
「いいのいいの、これが起きる前にさっさと連れてっちゃって」
 アルマが佑也の脇腹を足でつつきながら、ぱたぱたと手を振った。
「3日以内ぐらいで返してくれればいいから」
 何らかの制裁が加えられるであろうことを見越してである。それじゃあ、とノアは頭を下げて、気絶したラグナを引っ張っていった。


「……なんで、私が動けなくなっている間に仮面を壊さなかったの?」
 サラシをほどかれ、斬られた制服に応急処置を施された雅羅が聞く。
「お前が早撃ちで勝負をしたいっていうなら、それに答えてやるべきだと思ったからだ。このまま仮面だけを壊しても、災厄を恨むお前の気持ちはまた胸の奥に引っ込んでしまうんだろう?」
 と、大助。
「災厄になるつもりなら、それを止めてやらないとな」
「ああ。……本当の銃の使い方を見せてやる」
 マクスウェルと真司が頷いた。
「では、改めて」
 戌子が手を掲げる。
「……3……2……1……ゼロッ!」
 タンッ!
 銃声を響かせたのは、長い銃身を持つバントラインスペシャル……それは、大助が持つ銃だった。
 雅羅は銃を抜き、構えた姿勢のまま静止していた。一瞬遅れて、その仮面が砕け散る……大助の弾丸によって撃たれたからだ。
「……っ!」
 どうと、雅羅が倒れた。
「……勝者の特権だ、行ってやれ」
「自分たちが手を抜いたわけじゃないからな」
 真司とウェルが言う。抜いたものの、引き金を引くに至らなかった銃をそれぞれがしまった。
「っく、う……私は、何を……」
「雅羅!」
 額を押さえてうなる雅羅を助け起こす大助。はっとしたように、雅羅がその手を振り払う。
「え……ええ、そうよ! 自分を変えたいだなんて言っても、こう災厄ばっかり続いてたら気にするわ! 気にしない方がおかしいでしょう!」
「それにしたって、少しやり過ぎよ。ハイ・ブラゼルのことはもう終わったのだから。早撃ち勝負なんて」
 ふう、と小さく息を吐いてローザマリアが代わりに手をさしだした。
「そんなに思い詰めるなよ。世の中、自分から危ないところに突っ込んでくバカも居るんだぜ」
「おい、誰のこと言ってんだ?」
 どん、とライダースーツのビリーを叩く乱世。
「その、なんと言うか……そういうのって、言葉にしたりするのは難しいだろうけど……」
 大助がうめくように言う。にしし、と戌子が背後で笑ってる。
「話を聞くくらいならできるかもしれないし。雅羅は今まで独りで生きてこられたから、いきなり、そんな話し相手が必要にはなったりはしないかもしれないけど、試すくらいはいいんじゃないかなって、思うんだ」
「頼って欲しいって言ったらどうだ?」
 と、野次馬そのままの様子で佑也が声をかけた(復活したのだ)。
「ふ、ふん……ま、まあ、考えておいてあげるわ」
 つっと視線をそらしながら、ローザマリアの手をとって立ち上がる雅羅。
「……ありがとう」
 と、大末は小さく呟いていた。