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金の道

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金の道

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 金の道は、観光地化やパラ実生との協力で平和的に保護していき、基本的には専守防衛で自らは攻撃に赴かない――という方針が取られ始めてはいるが、それでも最低限の警備として何人かが交代で駐在していた。

「はあ……暇だ」

オデット・オディール(おでっと・おでぃーる)は、金の道を一望できるアトラスの傷跡の高所から、かれこれ一時間ほど監視を続けていた。

「ねえねえ、そろそろ交代の時間じゃない〜?」

 オデットからだいぶ下にある金の道入り口付近のテントでは、瀬乃 和深(せの・かずみ)、そのパートナーである上守 流(かみもり・ながれ)アルフェリカ・エテールネ(あるふぇりか・えてーるね)、さらに柊 恭也(ひいらぎ・きょうや)の四人が賑やかにトランプに興じていた。

「うーん、まだじゃね?」

「あと一ゲームぐらいだと思うよ」

「だいたい、『次のゲームで最下位だった人は一時間交代』と言ったのオデットの方であろう」

「もう少しで終わると思うので、それまでの辛抱ですよオデットさん。あっ、私あがりです!」

 キャッキャと楽しそうに遊んでいる四人を見ながら、オデットは渋々と監視に戻っていく。

「はあ……いっそのこと、盗賊団が襲って来たりしないかな……」

 そんな事を言いながらオデットがイナンナの加護を使い、辺りの気配を探り始めた時――

「み、皆大変っ! すごい数の敵がすぐそこまで来てるよっ!!!」

 オデットが指差す先には、暗い森の中でかすかに蠢く数十の影があった。彼女の声に促され、慌ててテントの四人も表に出てくる。

「ここはまず、私が遠距離攻撃可能な人魚の唄で相手の出鼻を挫くわ!」

「待て、オデット。アクリトから相手が手を出さない限り攻撃はするなって言われてるだろ? ひとまずここは様子見だ」

 恭弥に言われ、オデットはひとまず身を引くが――

「ひゃっはああああ!!!」

「どけどけ!! 邪魔する奴はなぎ倒すぜえ!!」

 お互いに姿が視認できる距離になっても、盗賊団たちは一向に止まる気配すら見せない。

「とんでもない数の盗賊団がこっちに向かって来ているぞ! わしらだけでは捌ききれぬかもしれんな……」

「和深さんは私が守ります!」

 いち早く相手を迎え撃つために、流は、鬼神力神降ろしのスキルを融合し、「鬼神降臨」 を発動させる。

「くっ、戦闘は避けられそうにないな……」

 和深は疾風迅雷を発動させ、木と木の間を素早く移動しながらしびれ粉を散布する。

「ぬっ?! なんだか舌がピリピリするぞ……って、体が重い!」

「今だわっ!」

 盗賊団たちの体が鈍っている隙に、オデットは人魚の唄を発動させる。彼女の口から、流れるように不思議な音色が紡ぎ出され、周りの木々がまるで共鳴するように葉を揺らしていく。

「ぐっ……な、なんだこの歌は?! 力がどんどん抜けていくっ」

 次々と膝をつき、崩れ落ちていく盗賊団たち。それを、流が鬼神の如き力強さでバッタバッタと斬り伏せていく。

「みんなすげえぞ! よっしゃ、俺も千里走りの術で盗賊団どもをかく乱してやるぜっ」

 血気盛んな恭弥も、他の者に乗せられて暴れ出そうとする。が、

「待つのだ恭弥、周りをよく見てみぃ」

 アルフェリカが恭弥を止める。

「なんだよ、俺だって戦いたいぜ……って、盗賊団のやつら、どんどん増えてきてやがる!」

「そうだ……これ以上増えたらさすがにこちらの身がもたん。だが、ここにはセイニィ・アルギエバ(せいにぃ・あるぎえば)たちが視察で明日来る予定だ。恐らく、もう近くまでは来ておるだろう。おぬしはその自慢の素早さでセイニィたちに連絡をしてくるのだ!」

「んなの、みんなを見捨てるみてえじゃねえか!」

「違うわ! わしらはおぬしの力を信じて送り出し、おぬしはわしらの力を信じて行ってくるのだ。さあ、一刻も早く、セイニィを呼んでこいっ」

「チッ……絶対に俺が来るまでくたばんじゃねえぞ!」

 恭弥は走り出した。一度も後ろを振り向くことなく、ひたすらセイニィを目指して――