百合園女学院へ

薔薇の学舎

校長室

波羅蜜多実業高等学校へ

金の道

リアクション公開中!

金の道

リアクション

 ここは金の道最深部――そう、いわゆるアムリアナの聖廟と呼ばれる聖なる土地の入り口であり、防衛の最終ポイントでもある。

「ねえ、陽子ちゃん…………今、私す〜〜〜ごっく暇なんだけど!!」

 暇を持て余した緋柱 透乃(ひばしら・とうの)が、パートナーの緋柱 陽子(ひばしら・ようこ)に愚痴を零す。

「あら、私の方もレイスの朧さんボロスゲイプをイジメ飽きて暇ですよ」

「だよね〜〜〜せっかく盗掘団を倒すって名目で人体実験の材料を手に入れる機会が来たかと思ったら、盗掘団の奴らが思った以上にヘタレで、ここまで来る奴がいないとはさしもの私も想像出来なかったよ〜」

「私もせっかく覚えたフールパペットで盗賊団の死体を操れると期待していたのに……遊び飽きた死体を与える予定でしたボロスゲイブも、お腹を空かせてご機嫌ななめですよ」

「ちょっとちょっと、あんさんたちっ! さっきから冗談にしても会話が怖すぎまっせ!」

 一緒に警備をしていた瀬山 裕輝(せやま・ひろき)が二人の会話を見かね、口を出してくる。

「誰……この関西人?」

「あら、ボロスゲイブの餌がようやく見つかりましたね」

「ぬあーっ! さっきから数時間同じ場所で警備やってたやんか!」

「なんだか、顔が覚えづらいっていうか……あ、個性がないって事か!」

「ちょっと、失礼ですよ、透乃ちゃん。個性がないのではなく、ブサイクと言ってあげないと」

「……そうそう、個性がないって表現するんやなくて、ブサイクって言った方が当たりさわりがって、どっちにしろ失礼やないかっ!」

 裕輝が勢いよく突っ込むと、透乃と陽子は二人でこそこそと話し合い始める。

「……これがノリツッコミってやつなの、透乃ちゃん?」

「ええ、関西の方は一日一回ノリツッコミをしないと、全身に発疹が出来て苦しみもがきながら息絶えるそうだから、どんなに寒くてもノリツッコミしなければいけないそうなの」

――三人がコントじみた会話を繰り広げている間、少し離れた場所で騎沙良 詩穂(きさら・しほ)はため息を漏らしていた。

「ああ、もうやだこの人たち……詩穂はアイシャちゃんが敬愛するアムリアナ様の聖廟を守りたいから、警備に志願したっていうのに、他の人たちがこんなにやる気がないなんて……」

 詩穂はブローチ【アイシャの騎士】を握りしめながら、悲嘆に暮れていた。

 そんな時であった――

「み、みんな大変ですわっ!」

 御神楽 陽太(みかぐら・ようた)のパートナーであるエリシア・ボック(えりしあ・ぼっく)が、銃型HC弐式を片手に慌てて駆け込んでくる。

「さっき無線連絡をしたら、パラ実の白津竜造が盗賊団を率いてセイニィ・アルギエバたちの包囲網を突破し、こっちに向かって来ているらしいですわっ!」

「え?! ってことは、あのセイニィちゃんを破った人が向かってきてるの?!」

 驚き、慌てふためく詩穂に対し、

「よ〜〜〜やく、面白い展開になってきたねっ!」

「あら、いい実験体になりそうです」

 緋柱ペアの方はまるで動じた様子がない。

 そして、エリシアの連絡から数分後――

「ひゃっはあああっ!! 強い奴はいねえかぁ!?」

 アムリアナの聖廟の目の前に、盗賊団数名を連れた竜造が現れる。

「くらえ、真空波っ!」

「蝶のように舞い、蜂のように刺す! ソードプレイ

 待ち構えていたエリシアと詩穂がスキルを発動させる。が――

「聖廟を傷つけられないてめえらの攻撃なんか、狙いどころバレバレなんだよっ!!」

 二つの攻撃に襲われた竜造は、逆にそれを狙っており、カウンターで一刀両断を二人にお見舞いする。

「つ、強い!」

 一気に体形を崩された防衛隊側は、そのまま竜造たちに切り崩される――かと思われたが、そこに待ったをかける人物がいた。

「ねえ、陽子ちゃん。このおもちゃ結構面白そうだね〜」

「ええ、透乃ちゃん。それにとっても頑丈そうですよ」

 恐怖の緋柱ペアが、竜造たちに襲いかかる。まずは、紅の透気龍鱗化で攻撃力と防御力を底上げした透乃が、カウンター覚悟の猛突進から唸りをあげる重いパンチを浴びせる。

「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ッ!!!」

 そして、陽子の方は後衛の位置から刃手の鎖を使い、竜造の腕を拘束して透乃を援護する。

「さあ、一体いつまで腕が持ちますでしょうか……」

 さらに、その隙を見逃さずに裕輝も動けない竜造にラッシュを決め込んだ。

「無駄やで無駄やで無駄やで無駄やで無駄やでッ!!!」

「ウボァー……」

 数々の猛攻撃を浴びた竜造は、とうとう沈黙するかと思われた。が、しかし、彼は最後の力を振り絞り、修羅の闘気を発動させた。

「な、なんやこの圧力は?!」

「クッ……鼬の最後っ屁ですね」

 防衛隊側が怯んだ隙に、竜造は刃手の鎖の拘束から逃れた。

「さっきのは……ちょっと痛かったぜえ!!」

 修羅の闘気で怯んだところを、竜造が一刀両断を発動させて豪快に薙ぎ払う。

 そこへ、ようやくセイニィが追いついた――

「みんな大丈夫?!」

 弾き飛ばされた人々の元にセイニィが駆け寄る。

「セ、セイニィさん……竜造は、あなたを聖廟まで待っています……どうか、早くあいつを止めてください……」

 息も絶え絶えになった詩穂が、聖廟の方向を必死で指差し、セイニィに竜造の居場所を伝える。

「わ、分かったわぁ。今すぐ竜造なんかやっつけるから心配しないでっ!」

 セイニィはそう言い、竜造の待つアムリアナの聖廟へと足を運んだ――