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リアクション
『グゥゥゥッ……敵ハ、全テ倒ス!』
――オオオオオオ!!
咆哮と共に手にしたサウザンドソードを振り下ろす千年王。
自我を失った彼は、契約者たちに牙を剥く。
「千年王の復活……正直、期待していましたが、この様な姿での復活とは……見るに堪えかねません」
中願寺 綾瀬(ちゅうがんじ・あやせ)が暴れる千年王の姿を見てつぶやいた。
と、彼女の纏う漆黒の ドレス(しっこくの・どれす)が主に声をかける。
「では、どうするの?」
「千年王に安らかな眠りを与えますわ」
「それは正しい答えなのかしら」
「少なくとも私はそう思いますわ。千年王があんな姿で、その力だけを悪用されるなんて許す事は出来ない……それならば全力で倒すのが、英雄への礼儀というものですわ」
「――同感だね」
横から現れた紫月 唯斗(しづき・ゆいと)がそういって、千年王へと鋭い視線を向けた。
「過去の英雄に泥を塗るような行為をこれ以上させないためにも、ここで千年王を終わらせる」
「……紫月」
「やるか、綾瀬」
見知った顔のふたりには、その胸の中にある思いを共有するための言葉はこれ以上は必要なかった。
ふたりは武器を握り締めると、千年王へ向かっていく。
「……千年王」
リネン・エルフト(りねん・えるふと)に背負われていたエンヘドゥが、目を覚ましてつぶやいた。
そんな彼女の視界の中に、契約者たちと戦う千年王の姿が映り込む。
「止めないと、いけませんわ」
「エンヘドゥ、無茶しちゃだめよ!」
背中から下りようとするエンヘドゥにリネンがそう声をかける。
だが、彼女は言うことを聞かずに地へ足をつけた。
「あっ――!」
と、下に降りたエンヘドゥの視界がグラリと揺れる。
血を流し過ぎたせいで足元のおぼつかない彼女は、その場に膝をついた。
リネンはそんなエンヘドゥにすぐさま手を差し伸べて、その体を引き起こす。
「だから、言ったじゃない」
「すいません。でも、皆さんお願いですわ。わたくしに力を貸して……!」
瞳に強い意志を宿してそういうエンヘドゥ。
そんな彼女の姿を見た契約者たちは、お互いに顔を見合わせて大きくうなずいた。
「皆さん、ありがとう」
エンヘドゥはそういうと視線を千年王へ向ける。
そして千年王を復活させた儀式についての逸話を話し始めた。
「――わたくしはおとぎ話だとばかり思っていましたけど、そうではなかったようですわね」
胸元に当てていた手をぎゅっと握りしめ、エンヘドゥは瞳をそっと閉じた。
(これ以上、千年王にこんなことをさせてはいけませんわ。言葉がダメでも歌なら届くはず……お願い、千年王! あなたに心が戻っているのなら、本当のあなたを取り戻して!!)
エンヘドゥは心の中でそう叫びながら、豊穣なるカナンの大地を謳った雄大な牧歌を唄いはじめた。
「エンヘドゥさん……」
杜守 柚(ともり・ゆず)は、エンヘドゥの想いがこもった歌声を聞いてつぶやく。
そして彼女は暴れる千年王を見つめた。
「私は争いたくない。争う事以外にも道はあるはずです」
柚はそういうと口を開き、エンヘドゥと同じように歌を唄いはじめた。
それを見た天禰 薫(あまね・かおる)も前に出て口を開く。
「我も一緒に歌うのだ。ほんのちょっぴりの力かもしれないけど……我の想いを伝えたいのだ」
「――私も歌います。千年王の苦しみが少しでも和らぐように……」
ティー・ティー(てぃー・てぃー)はそういうと、手にしていた竪琴に奏でて歌いはじめる。
そんなティーの服の端をぎゅっと掴み、イコナ・ユア・クックブック(いこな・ゆあくっくぶっく)も一生懸命に声を出した。
エンヘドゥと契約者たちの歌が重なり、歌は戦場となっている聖堂内に響き渡る。
それは千年王と戦っていた契約者たちの耳にも届いた。
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