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めざめた!

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「はいはいはい、それでは、手許のマニュアルを開いてください」
 臨時講師として教壇に立ったテティス・レジャ(ててぃす・れじゃ)が、特別講義に集まった生徒たちを前にして言った。
「光条兵器に関しては、先ほどまでの特別講義でだいたい説明しましたが、何か質問はありますでしょうか?」
「はいはーい」
 その言葉を待ってたぜと、夜刀神 甚五郎(やとがみ・じんごろう)が手を挙げた。蒼空学園の講堂に気合いの入った声が響く。
「間接攻撃としての光条兵器に、まったく新しいコンセプトに目覚めたんだ。聞いてくれ!」
「面白そうですね。どうぞ」
 テティス・レジャにさされて、夜刀神甚五郎が立ちあがった。
「俺は接近戦しかできない!」
 いきなり、夜刀神甚五郎が言い切った。これは、自慢ではなくて、思いっきり弱点なのではないのだろうか。
「だったら、距離をとった相手には、射撃型の光条兵器が有効なんじゃないか?」
「ふむふむ」
「だが、弓じゃ、攻撃を見切られちまう。だったら、大砲……、これも発射を見切られるだろうな。だったら、攻撃のモーションがなければいい。つまり、全身からビームを出せばいいんだと考えついた」
「ええっと……」
「つまり、全身を光条でつつんで戦いつつ、一瞬の隙を突いて全身から全方向にビームを発射する。完璧だろ?」
「それは無理ですね……」
 さすがに、ちょっと困ったように、講師のテティス・レジャが言った。
「まず、大前提として、光条兵器は手に持てる物でなければならないと言うことがあります。つまり、鎧とか、帽子とか、翼とか、一般的な武器の形状をしていない物はだめだと言うことですね。全身を被うというのは論外です。もともと、防御には使えませんし。ビームシールドと勘違いしてはいけません」
「じゃあ、別に、全身を光の鎧で被うんじゃなくて、無数のビーム発射口をつけた鎧で全方位攻撃を……」
「だから、手に持てないとダメなんですってば。それに、光条兵器は敵単体を攻撃するものです。複数を同時攻撃することはできません。それが可能なのは、星弓か星拳ぐらいの物です。あれらは、光条兵器であると同時に女王器ですので、性質がかなり上位の特別な物になります。通常の光条兵器では、可能なのは、連続攻撃になりますね。拡散してしまえば、当然威力は落ちますから、現実的にはほとんど無力です。むしろ、光条兵器は収束する物と考えた方がいいでしょう」
「巨大な光の剣とか、大型ミサイルとか光の巨人とか、ダメなのか?」
「大きくなればあたりやすくなると考えがちですが、弱くなるだけですね。それから、光条部分の形状は変化しません。そのため、全て光条だけでできたロボットが動くとかはありえませんから。あくまでも、武器の一部が光条によって形成されるだけです。主に刃などの部分ですね。その部分のみ光条で形成されるか、その部分が光条によってつつまれるわけです。剣などのように、形状が一定であれば、柄だけでも光条の刀身を形成できます。ただし、形状変化はないので、剣と斧と自由に変化するなどというのも不可能です。光条の形は、発現したときからずっと同じと言うことになりますね。光条部分の途中での変形はありえません」
「じゃあ、光条でスケイルメイルみたいにして……」
「持てないとダメなんですってば。光条部分も、基本は一箇所だけです。複数の箇所に光条が発生する物は特殊ですので、基本的に同種の光条である必要がありますね。例えば、光条の銃剣を持った銃は、光条の銃弾は使えません。形が違いすぎます。あくまでも、銃弾か、剣かのどちらかですね。想像力が一番の強みである光条兵器ですが、妄想にまでいってしまうとダメだと言うことです。その場合は、使い手のイメージを具現化できず、基本形態である剣状の物になってしまいますから注意が必要です」
「失敗すると、形にならないということかよ」
「その通りです。また、パートナーの剣の花嫁が近くにいない場合は、携帯電話を接続する形になりますから、コネクタのことを考えに入れないと、まったく継戦能力のない物になります。さて、遠隔攻撃をする場合、モーションを最小限にして攻撃するのであれば、内装型の射出用兵器にする方法はあります。籠手のような物に固定して発生させたアームブレイドなどで、いざとなったら射出や投擲して離れた敵を攻撃するものですね。ただし、これの難点は、弓や銃型のように矢や弾を命中後に消去して再発生させて再装填する形になるので、一度射出してしまったら、一時的に光条部分を失ってしまうと言うことです」
「うーん、いったいどうすりゃいいんだ?」
「モーションを最小限にするなら、やはり銃でしょうか。とはいえ、モーションの大きい弓でも、速射できる達人はいくらでもいますから、戦い方次第ですね。モーションによって避けられるからモーションの少ない武器にするのではなく、そのモーション自体を肉体の鍛錬で限りなくゼロにするべきでしょう。ビームのように光条を発射するのであれば、籠手やナックル型で格闘モーションから発射できる物にすればあなたに似合ってるんじゃないでしょうか?」
「うーん」
「それでは、今日はここまで。みんな、頑張って、いい光条兵器を作ってくださいね」
 
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「こ、これは、なんていう展開の夢だったんだ……」
 ベッドの上で目覚めた瀬乃和深は、先ほどの無茶苦茶な夢を思い出そうとして頭をかかえた。
 ドラゴン退治の夢を見た気がするが、いつの間にかドラゴンがイコンになって、光の女神様と一緒に戦って、ドラゴンに必殺の一撃を浴びせかけたところで、超音波で世界そのものが砕け散った……。
「いや、確かに、いろいろと無理のある展開だったけどさ……」
 なんだったんだろうと、瀬乃和深はベッドの上でそのままぼーっとし続けた。
 
    ★    ★    ★
 
「なんだ、どうも腹持ちが……」
 いつもの奴の所で食事してきたはいいが、どうもちょっとおかしいとロア・ドゥーエ(ろあ・どぅーえ)鏡をのぞき込んだ。
「またでかくなってる……」
 いつの間にか、超感覚が目覚めている。しかも、羊の角は捻れて大きくなっているし、爪と牙も大きくなっているではないか。羊の獣人化のはずが、これではまるで古文書の悪魔のようだ。もしかして、ずっと羊だと信じていたが、ベースの獣は何かの魔獣だったのだろうか。
「そういえば……」
 なんだか思いあたる節もあるような気もするが、うまく言葉にできない。
「なんで、いまさらこんな力が……」
 いきなり降って湧いたというわけではなさそうだし、修行の結果で拳聖になれた影響なのだろうか。それとも、あいつの所に足繁く通うようになったせいなのか……。
「まあ、これで、あいつを守ってやるって約束も充分果たせそうだな。求めた力の結果がこれなら、別に悪くはないぜ」
 鏡の中の自分にむかって、ニッとちょっと壮絶な笑みを浮かべてロア・ドゥーエが言った。
「それにしても、あいつは、いつも俺になんの肉を食わせてくれていたんだ?」
 ちょっと、それだけが気になるロア・ドゥーエであった。