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【ぷりかる】老婆とお姫様の贈り物

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【ぷりかる】老婆とお姫様の贈り物

リアクション

 火事があり、小鳥が飛び回っている時。

「……野次馬ばっかりだな。火事も酷いぜ」
 昇る煙から身を守るために探索セットを使用中のシリウスは『空飛ぶ魔法↑↑』で上空から動きの怪しい人物を捜していた。それだけでなく目に付く火事は『ブリザード』で片付けていた。人命救助と犯人をおびき寄せるために。
 地上ではリーブラが探索セットで煙から身を守りながら犯人を捜し回っていた。シリウスからの合図が来たらすぐに動けるよう準備も整えている。
「……このような事をする犯人はどのような人なんでしょう」
 リーブラは犯人の事を考えながら捜索を続けていた。

 上空。
 捜索を開始してすぐシリウスは静かな通りで突っ立っている女性を発見した。
「……あの女、怪しいな。野次馬に参加しない逃げもしない立っているだけ。リーブラに確認に行って貰うか」
 シリウスはリーブラに連絡を入れた。

 地上。
「分かりましたわ」
 リーブラは連絡を受けるなり『心頭滅却』で火に負ける事なく『パスファイダー』で火事で騒がしい通りも易々と移動し、『軽身功』を使い、地面だけでなく壁をも走り、猛追撃を始めた。途中、どうしても邪魔な炎は『絶零斬』で凍らせ吹き飛ばし、ひたすらに突き進む。

「オレも行くか。捕まえてグィネヴィアの元まで引きずって全て白日に晒してやる。生命と声を奪ったならグィネヴィアの特徴が何か出ているはずだ」
 シリウスも現場へ駆けつけた。

 静かな通り。

「……つまらぬな。誰か遊び相手でも来れば良いが。そうすれば存分に楽しめるというのに」
 グィネヴィアから精気と声を奪った老魔女は楽しげに燃えさかる炎をあちこち眺め回るのに飽きてここに立っていた。
「……もうそろそろ誰かが気付くかもしれん。そうすれば」
 老魔女は口元を歪めた。騒ぎの犯人を捜そうとする者が出て来るのは考慮済みなのだ。むしろ出て欲しい。なぜなら手に入れた力を試す事が出来るからだ。
「……来たようだ」
 老魔女はシリウス達の気配を感じ取った。

「……申し訳ありませんが、ここで何をしていらっしゃるのですか? 避難でしょうかそれとも」
 到着したリーブラは一応確認のためにに美女に訊ねた。
「それともの続きは何だ」
 老魔女は唇を歪め、言葉を発した。グィネヴィアの声で。

「……その声」
 グィネヴィアの声を知るリーブラははっとし、犯人で間違い無い事を知る。そして瞬時に『エンデュア』で魔法への抵抗力を高め、光条兵器を構えた。
「ほう、聞き覚えがあるか」
 老魔女は愉快そうに警戒するリーブラを見た。
「あなたは何者ですか」
 リーブラは美女から目を離さず、臨戦態勢のまま問いただした。
「見た通りの美しい魔女さ。お前達は何だ?」
 老魔女は胸に手を当て面白そうに答える。美しい外見の奥に醜いものが見え隠れする。
「……オレ達はお前をとっ捕まえる者さ!」
 意気揚々とシリウスも登場。
「……捕まえる。ほう、他にもいるのか? 小娘はどうしてる? 死んだか? 疑う事を知らないお気楽な嬢ちゃん。何が起きたのか分からないまま死んでいく。面白いねぇ。あの坊やも騙されている事など何も知らない。知ったらどうなるだろうねぇ。まぁ、自業自得さ。毒を渡したのも食べたのも署名したのもわしのせいじゃない」
 老魔女はグィネヴィアの声で悪事を口にし、グィネヴィアの死を喜ぶ。グィネヴィアを知るシリウス達にとって我慢出来ない事だ。
「唆したのはあなたでしょう。早く奪ったものを返して下さいませ。それから必ず罪を懺悔してもらいます」
 リーブラは怒りの滲んだ声音で言い放った。

「……わたくしが死ぬのは愚かなせいですわ」
 老魔女は嫌味溢れるグィネヴィアの口まねまでしてシリウス達の気分をますます逆撫でする。
「……自業自得、愚かだって。その声を使うな!」
 老魔女のやり方に怒ったシリウスは『アルティメットフォーム』を使用した。怒りと共にシリウス・ヴァンガードCが発現し、二段変身を遂げ、繰り出す『ファイナルレジェンド』も強化された。

「……!!」
 老魔女は叫ぶ前に壁に叩き付けられ、地面に倒れてしまう。
「リーブラ」
 シリウスは捕縛を手伝って貰おうとリーブラに声をかけた。

 その呼びかけにリーブラは驚きの声で答えた。
「……きゃぁっ!」
 突然、建物から出て来た人々に囲まれ、足首や腕を掴まれ動けずにいた。
「おい、どうした?」
 シリウスは異様な様子に声を上げた。
 人々の顔色は青白く両目がそれぞれ違う方向を向き、ぶつぶつと口を動かしている。中には口から泡を吹いている者もいた。
「……住人ですわ。助けてと」
 間近にいるリーブラは悲痛なつぶやきを耳にしていた。
「……助けて、だと」
 シリウスは視線をリーブラから倒れている老魔女に向けた。
「ふぅ、乱暴者だな。前なら死んでおったが今は違う。さて行くとしようか」
 老魔女はゆっくりと起き上がり、埃を払ってからどこかへ去ろうとする。
「おい!」
「ふふふ、わしを追ってもよいが、その者達はいずれ心臓が止まるぞ。あと、少しで。ほらほら、助けなくてよいのか」
 老魔女は待ったを入れるシリウスに邪悪な笑みを浮かべながら言った。
「……くっ」
 リーブラと被害者を放っておけないシリウスは足を止めざるえなかった。
 老魔女が去ってすぐ流れて来た『幸せの歌』で人々はリーブラから離れ、地面に倒れた。

「無事?」
「もう大丈夫ですわ」
 さゆみとアデリーヌ。
 『幸せの歌』を歌ったのは『演奏』を心得ているさゆみだった。そのためあっという間に人々は幸せな表情になったのだ。
「犯人を追って下さい」
 ノエルが二人に言った。
 さゆみ達と弾達は契約書探しで動き回っていた時にシリウス達を見つけ駆けつけたのだ。

「すまない。頼むぜ、みんな」
「お願いしますわ」
 シリウスとリーブラは礼を言ってから急いだ。

「……こんな酷い事を」
 弾は幸せそうな表情で倒れている人々を見た。酷い有様に心が痛む。

 人々は目を覚まし、
「……たすけて……たすけて」
 一筋の光にすがるように助けを請い始めた。

 そこに
「治療なら手伝うよ」
「任せて下さい。すぐに助けますわ」
 四人と同じように契約書捜索中に気付いてやって来た涼介とミリィが登場した。

「……お父様、このままでは」
 ミリィは極端に冷たい住人の手に触れ驚いた。目の動きの異常、多少の錯乱、人によってそれぞれ重傷さが違う。
「急ごう。絶対に助けるんだ」
 涼介は真剣な面持ちでミリィにうなずき、診察を始めた。
「はい」
 ミリィはうなずき、『清浄化』を使い、癒していく。涼介も『命の息吹』で治療をした。『医学』と『薬学』を持つ涼介達によって被害者全員救われた。さゆみは『幸せの歌』ノエルは『子守歌』で治療前や後の被害者の心を落ち着かせ、弾とアデリーヌは治療が済んで会話が出来る人達の相手をした。

「……美人な女に誘われて」
「女の人に道を聞かれて、あたし……」
 被害者達が証言する。老魔女にたぶらかせたり、道を聞かれたりして近付いた途端、魔法で意識を失わされて試されたのだ。魔法や自作の薬を。そして、気付いたらこの場所にいて無性に恐怖が襲い、リーブラにすがったのだと。被害者達は安全な場所へと送り届けられた。

 被害者を送り届けた後、
「優しく言い寄って魔法や薬を使ったり、酷い事ですわ」
「気付いたらここにいた、という事はおびき出されたのかもしれない。それとも来るのを待っていたのかな」
 アデリーヌと弾は不愉快な気持ちになっていた。
「……人の命を弄ぶ事は許されないよ。早く捕まえて欲しいね」
「はい。また犠牲者が出る前に一刻も早く捕まえて欲しいですわ。同じ魔法使いとして許せません」
 仕事を終えた涼介とミリィは救命出来た事に安心しながらも解決していない事に心配をいだいていた。
「……連絡だ」
 弾にシリウスからの連絡が入り、追跡のためか情報だけ伝えて一方的に切られた。
 そして、弾はシリウスの代わりに他の仲間にも連絡した。
「……グィネヴィアさんの声をしているなんて不愉快です」
「そうだね。見た目は美女でも中身は違う。早く声を取り返してくれるといいんだけど」
 ノエルとさゆみは老魔女に不愉快になっていた。
 この後、自分達の出来る事をしなければならないという事で皆契約書破棄に戻った。
 涼介達の元にエオリアから重要な任務が入って来る事に。