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【ぷりかる】老婆とお姫様の贈り物

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【ぷりかる】老婆とお姫様の贈り物

リアクション

「……火事ですわね。これも犯人の仕業」
 イングリットは火事をにらみながら言った。
「問題ありませんわ。わたくし達の仲間が必ず消火してしまいますもの。それよりもアグラヴェイン達が情報収集している間、今後の方針をまとめますわよ」
 仲間を信じる麗は最悪の未来など考えてはいない。だから今は自分達が出来る事をするのが大切だと思っている。
「決まっていますわ。犯人を見つけ次第、戦闘ですわ。弾さんからの情報では人としてあるまじき性格のようですから」
 イングリットはシリウスの情報も一緒に伝えてくれた弾の連絡を思い出していた。
「同感ですわ。しかし、逃げられたと言いますわ。もしかしたらわたくし達が見つけて追い詰めたとしても」
 麗はイングリットにうなずきながら万が一の事も考える。
「逃げられる可能性があると」
 イングリットが麗の言葉の続きを言った。
「そうですわ。シリウス達のおかげで犯人の特徴は分かっていますけど」
 と麗。シリウス達のおかげで犯人の姿、見分け方が判明している分捜索は少しは楽になっている。

 ここで聞き込みを終えたマイトとアグラヴェインが戻って来た。
「……それなら捜索をしている仲間全員で協力すればいい。逃げ道を全て塞げば」
 とマイト。シリウス達の話を聞いてから考えていた作戦だ。
「ただ、シリウスさんの攻撃も平気だったそうですわ」
 イングリットは一抹の不安を口にした。
「しかし、元の姿なら死んでいたと言っていたんだろう。それなら契約書が破棄されるまで時間を稼げばいい」
 とマイト。相手が遊びたがっているのなら付き合えばいい。
「……マイトさん、刑事ですわね。自称ですけど」
 イングリットは思わず余計な言葉を含んだ感心を口にした。
「自称でも刑事魂は本物だ」
 マイトは熱い魂が宿る胸を叩きながら言った。
「では皆様に犯人に遭遇した際、連絡を入れ、時間稼ぎをするよう伝えた方がよろしいですわね。契約書破棄と仲間が集まるための時間稼ぎを。アグラヴェイン」
「了解致しました」
 麗はアグラヴェインに他の仲間に伝えるように言った。
 連絡を終えてから聞き込みで得た情報を整理する。
「……やはり、他の方々と同じく悪い噂ばかりです。ティル・ナ・ノーグから流れて来た、顔に火傷の跡、住民達の評判、グィネヴィア様と同郷という事実は偶然と聞き流すには少々気になりますな」
 とアグラヴェイン。
「そして、追加情報の人体実験」
 マイトが弾達からの情報を付け加える。ちなみにマイトが入手した情報もアグラヴェインと似たようなものだった。
「……行きますわよ」
 麗は情報整理を打ち切り、犯人捜索に動き始めた。
「お嬢様、お待ち下さい」
 アグラヴェインは急いで麗に続いた。
「……新しい情報が入るまで聞き込みをするしかない」
「そうですわね」
 マイトとイングリットも麗達に続いた。

 イングリットから事件についての詳細を聞いた後、エヴァルトは犯人捜しへと動いていた。
「……彼女も相当の武人、少年が犯人ではないという勘は信用するには十分足る」
 エヴァルトはイングリットの話に出て来た少年の事を考えていた。気にはなるが、彼女が犯人では無いというのなら信用してもいいと思っていた。
「……しかし、野次馬が多いな。火事と喧嘩は江戸の華、と言うが……いやここは江戸じゃなくてヴァイシャリーだったな。どこでも人は騒ぎが好きだな」
 火事を横切りながら急ぐエヴァルト。目に付くのは消火活動をする仲間と火に群がる住人達。場所や時代など関係無く人は騒ぎが好きなようだ。
「子供を使ってグィネヴィアさんを罠にはめる。自分の手は汚さず、相当陰険な奴のはず。そういう奴は身の安全より自分の悪行で困る人を陰惨に見ているもの。特にこの火事」
 捜索をしながらエヴァルトは今手元にある情報をまとめていく。
「見たくない訳は無いだろう。それとも俺達のような奴を陥れようと蔭から見ているかもな。だとしても容赦はしない。女性だろうと」
 様々な事が思い浮かぶが、結局犯人は卑劣で最低な人物に変わりない。

 ふと連絡が入った。
「……連絡か、犯人を見つけたか」
 シリウス達から情報を得た弾からの連絡だった。犯人の姿、見分け方、被害者などについてだった。
「……犯人は外道だな。あれは」
 エヴァルトは犯人に言葉を吐いた後、同じように犯人捜しをしているエース達を発見した。

「おい、見つけたか?」
 エヴァルトは、捜索状況を訊ねながらエース達に近付いた。
「あぁ、君か」
「いいえ、まだ発見出来ていません。そちらはどうですか?」
 エースとエオリアがエヴァルトに顔を向け、自分達の状況を話した。
「こちらも収穫無しだ」
 エヴァルトも答えた。
 このままエヴァルトはエース達に同行する事にした。

 騒がしい通り。

 植物達の目撃情報を伝って辿り着いたエース達とエヴァルト。
「……ここで間違い無いよ。シヴァもそう言ってるし、邪悪なものを感じる」
 エースが閑散とした通りの入り口を示した。その先から『ディテクトエビル』で邪悪を感じ、使い魔:ネコは鳴いて危機を知らせている。
「時間稼ぎ、か」
「聞きたい事を出来るだけ聞き出そうか。後で聞ける保障はどこにもないからね。そして、報いを受けて貰わないとね」
 エースとエヴァルトは老魔女捕縛、対決についての打ち合わせをしてから突入を決める。
「僕はここに残って連絡係をしていますね」
 エオリアはこの場に残り、他の仲間へ連絡する事にした。

 エース、エヴァルトが行った後、
「……これで大丈夫ですね」
 エオリアは連絡を終えた。

「……見つかったそうね」
「来たでありますよ!」
 コルセアと吹雪が現れた。
「……早かったですね」
 エオリアは予想外に早く来た二人に訊ねた。
「近くにいたから」
「そうであります! 状況はどうでありますか?」
 コルセアは簡潔に答え、吹雪は現在の状況を訊ねた。
「今時間稼ぎをしているところです。契約破棄完了の連絡が来るまで保たさなければなりません」
 エオリアも手早く状況を話す。
「……そうね。吹雪、どこに待機する?」
「奇襲でありますよ。建物に隠れて戦闘中に敵の頭上から攻撃であります! 動けなくしてから言いたい事を聞いてやるであります!!」
 待機場所を聞くコルセアに吹雪は近くの建物を指さしながら言った。
「……相手は魔法を使う。それが最善かも」
「そうでありますよ!」
 二人はこっそり近くの建物に身を潜めながら奇襲をする事にした。
 エオリアはなおも他の仲間の連絡係としてその場に残っていた。