|
|
リアクション
「いやーしかし、学園はいいねぇ」
「そうか? 我にはいささか明るすぎ、いや眩しすぎるがな」
校庭にでて周りの喧騒から少しだけ離れた位置から校内を見渡す二人。
ローグ・キャスト(ろーぐ・きゃすと)とコアトル・スネークアヴァターラ(こあとる・すねーくあう゛ぁたーら)だ。彼等が校庭にいる理由はたた一つ。
「追跡者だからっていつも真正面から追うってわけじゃないんだよ」
「つまり、ここに標的が来るということか?」
「ああ、奴の進行ルートを観察し、ここに来るだろうって予測はついた」
「何故だ?」
「これがあるからさ」
ローグが指差したのは装飾が施された大きなツリー。校庭を彩る装飾の数々の中で一際目立っている。
「奴の行動原理は面白そうな物があるところへ行く、これに尽きる」
「しかし、この植物はそんなに面白いものだろうか」
「あいつが面白いと思うものはこれで間違いない。なにせ相手は子供だ、この頂上の一番上にあるお星様に惹かれないわけがない」
ツリーの一番上で燦々と輝きを放つ星。それは子供の頃なら誰もが手にしたかったお星様だ。
「だから遅かれ早かれここに来るってわけだ」
「なるほど、なかなかの観察眼だな」
「だろ? ……さて、うわさをすればだ」
ローグの読み通り呪いの人形は校庭にやってきた。その瞳にはきっと映っているだろう。手に入れることができなかったあのお星様が。
「さあ、もう逃がさないわよ!」
「ここが年貢の納め時だ」
雅羅と正子が並び立つ。遊びはここまでだと言わんばかりに腕を組んで仁王立ち。
「……おーい、お二人さん」
ローグが小声で二人に呼びかける。二人は何も言わず、視線だけローグの方に向ける。
「あんたらが上手い具合にあいつを引き付けてくれたら、こっちで確保できる。ここは連携プレーでいこう」
「……さあ呪いの人形! 大人しく捕まることね!(O)」
「これ以上は混乱が生まれる。悪く思うでないぞ。(K)」
語尾の最後に口元だけ歪ませて了承した旨をローグに伝える二人。
「……よし、それじゃ始めてくれ」
「これで最後、みんな行くわよ!」
雅羅、正子、夢悠、加夜、吹雪、コルセア、リース、ラグエルが一斉に人形たちに飛び掛る。
しっちゃかめっちゃかのはちゃめちゃ騒ぎに人形たち、呪いの人形も逃げながら最高に楽しんでいた。
次第に人形たちが捕まっていき数が減っていく。やがて、呪いの人形だけが残った。
どんなことにも終わりはくる。この騒動も例外ではないのだ。
「……悪いけど、これで終わりなの。ごめんなさいね」
雅羅の言葉を聞いた呪いの人形に、反発する素振りは見られない。
大人になりきれなかった怨霊の、未成熟な大人の部分が覚悟を決めたのだろう。
「それじゃ」
雅羅が合図を送り、ローグが動く。これで、終わり。
……のはずだった。
「フーハハハハハ! それ以上はさせんぞ! おわっ!」
「ぐがっ!!?」
「そ、空から人が降ってきた!? どういうこと?」
「ちょ、ちょっと私にもわかりませんね。正子さんはわかりますか?」
「わしにもわからん、が」
空から降ってきた人物と衝突したローグがツリーに隠されるように気絶していたい。
「プラン変更を余儀なくされたことだけはわかる」
「プラン?」
突如現れた謎の人物。その正体とは。