校長室
再来、呪いの○○○人形!
リアクション公開中!
「あたたっ……おっほんっ! フハハハハ! 我が名は世界征服を企む悪の秘密結社オリュンポスの大幹部、天才科学者ドクター・ハデス(どくたー・はです)!」 「そして俺様はパラミタを支配する、予定のダーク・スカル(だーく・すかる)様だ!」 「ハデス様に相対するものはこのオリュンポスの騎士であるアルテミス・カリスト(あるてみす・かりすと)がお相手に……」 「どうした、アルテミス?」 「いえ、その……あの人形浮いて……」 人形=浮いている→本来ありえない 本来ありえない→ありえないことが起きている 人形が浮く=ポルターガイスト=心霊現象 アルテミス=心霊現象が苦手 つまり、アルテミス+心霊現象=……。 「ああああああ! に、にんぎょ、人形が勝手に動いてますっ!?」 =錯乱 以上証明終了。 「アルテミス……まあいい。ククク、怪人ジャック・オー・ランタンよ! お前のその人形軍団の力があれば、蒼空学園の制圧どころか、世界征服も容易い!」 「そういうわけだ。俺様たちの仲間になりな。今なら『秘密結社オリュンポス傀儡兵団長』の座をくれてやるそうだぜ、けけけっ」 「わ、私は断固反対です! そんな霊的な何かっぽい人形さんを仲間にだなんて!」 「……アルテミスさんでしたっけ?」 「は、はい」 夢悠がアルテミスに話しかける。それはごくごく単純な質問だった。 「見たところ霊的なものがだめみたいだけど、そっちのドクロのペンダントは平気なの?」 「え、ダークスカルさんですか? ……」 「ああ? なんだぁ?」 「……よくよく考えればダークスカルさんも正体不明に喋ってます!? いやあっ!」 「今更かよっ!」 今の今まで平気だったダークスカルに対しても恐怖心が噴出してしまったアルテミス。そんな二人を見かねたハデスが渇を入れる。 「二人とも! 漫才をしている場合ではない! 今は敵を打ち倒し、ジャックを助けるのだ! さあ行け! アルテミス、ダークスカルよ!」 「けけっ、ジャックの野郎に手を出す奴は、この俺様が相手になってやるぜぇっ!」 「……(絶賛立ったまま気絶中)」 アルテミスの心中などお構いなしにハデスが始動する。【戦闘員】、【特戦隊】、【メカハデス】を総動員し【優れた指揮官】で指示を飛ばす。 そこに呪いの人形、ジャックが加わりその制圧力はなかなかに手ごわく、雅羅たち相手に牙をむく。 「ちょっとちょっと!? もうエンディングに入るところだったじゃない!?」 「正義という理由だけで終わるエンディングはもう飽きた! オリュンポスはそんな伝統をぶち壊すのだ!」 「そういうことだ! さあジャック! 俺様たちの即席必殺技だ!」 同時に、ダークスカルはフラワシを飛ばし、ジャックもこれまで以上に俊敏に動き周囲の女性徒のスカートを捲り上げる。 「ちょ、それって必殺技なの!?」 「何のこれしき!」 「正子さんも隠してくださいっ」 「や、やめ、やめてーっ」 「そして俺様がそれを、描きおさめる!」 夢のような光景を光よりも早く描き上げるダークスカル。正に仕事人である。 「って、なんで私まで巻き込まれなければいけないんですか!」 「ついでだついで。しかし、ズボンを履いているやつらぁ! いただけねぇな」 そう行って三人が立ち並ぶ方を睨みつけるダークスカル。 「と、言われてもね」 「隠密行動にスカートなど不要でありますよ」 「動きやすさは重要ですね」 「お前は何を普通に混ざってるんだ」 いつの間にか加わっていたのはフレンディス・ティラ(ふれんでぃす・てぃら)、その後ろにはベルク・ウェルナート(べるく・うぇるなーと)がいた。 「さて、なんかふよふよ浮きやがる人形を捕まえて騒々しいところにきてみれば、案の定ハデスと雅羅に出会ったわけだが」 「ハデスさん、よくお会いしますね。雅羅さんもお久しぶりです」 「ひ、久しぶり」 「それで、今回はどんな人形なんだ? 突っ込むのもめんどくせぇ」 「あ、あはは。まあ見ての通りだけど今回はジャック・オー・ランタンよ」 「なんと……この人形さんたちがふよふよしていたのはあの人形のせいでしたか。でしたらご協力いたします。遠慮なくお申し付けください。……?」 フレンディスが考え込む。先ほどのベルクの発言に不に落ちない点があったからだ。 「あの、マスター? 昨年も何か騒動があったのでしょうか? 私には覚えがないのですが」 「大丈夫だ。一部で騒乱があっただけだよ。ってか、かぼちゃ人形って時期はずれもいいところだろっ!」 「その突っ込みなら私がやったわよ! とにかく協力してくれるのなら心強い。先にあっちを止めましょう」 「ああ、ハデス止めるならまかせろ。専門職だ」 「やはりか! やはりまた邪魔をするか! 悪魔のようなくせして正義きどりとは卑怯だぞ!」 「大丈夫だぜぇ? 俺は、お前だけの、悪魔だからなぁ!」 イジメ魂のギアを全開にしてハデスに飛び掛る。ベルクを先頭にして他の契約者たちもハデスを追い詰める。 「おらおらハデス! そんなんじゃ去年の二の舞だぜぇ!?」 「くっ、このままでは! とにかく、封印の札だけでも消滅させればっ」 「……雅羅さん、正子さん、フレンディスさん。少々お耳を」 加夜が三人を呼んで話し込む。それは呪いの人形を成仏させるための最後の作戦。 「なるほどね、わかったわ」 「失敗などない。わしも信じよう」 「大役ですが、頑張りましょう」 「それじゃやってしまいましょう。最後まで、楽しく」 加夜の合図とともに散開する四人。正子はベルクや他の契約者と共に足止めへ。 雅羅は自分の分と正子の分の封印の札全てを持ち、ツリーの方へと投げ捨てた。 「……! あれさえなくなれば! アルテミス! その札を切り刻め!」 「え、えええ! ……も、もうーヤケクソです!」 ハデスの指示にようやく息を吹き返したアルテミスが札へと向う。そして。 「はあっ!」 全ての札を一刀両断にした。しかし、恐怖から再起したばかりの足は止まらず、あまつさえもつれてそのままツリーへとダイブ。 ゴツン! 鈍い音を立てて倒れそうになるアルテミス。その寸前で加夜がアルテミスの体を支える。 思い切り揺さぶられたツリーの頂点部は激しい揺れに襲われ、一番上の星が落ちてくる。それをフレンディスがキャッチ。 それを見た呪いの人形がフレンディスのところへと一直線。その瞳は、ずっと欲しかったものを見つけた子供のものだった。 「……今日は楽しかったでしょうか? 心の底から、楽しめたでしょうか?」 呪いの人形は体全体を使って肯定の意思を表す。 「そうですか。それはよかったです。では、楽しんでくれたお礼にこれを差し上げますね」 そう言ってフレンディスは呪いの人形、ジャックの右手にお星様を付けてあげた。 「ふ、ふははは! これでもジャックが成仏することはへぶっ!」 「もう終わったんだよ、ハデス。ってわけで、今日はお前をいじめるのもこれくらいにしといてやるよ」 空気をぶちこわす者と空気を守る者のやりとりを横に、ジャックの体が光りだす。 そして人形からもやもやした光が抜き出て、天へと上っていた。 ―――ありがとう。 たった五文字の言葉だけを残して。 「……終わったのかしら?」 「そのようだな」 雅羅と正子が顔を見合わせた後、フレンディスのほうを見る。彼女の手の中にある人形はもう動かない。 フレンディスの手には右手に星をつけた人形が横たわっていた。 「もう少し私も一緒に楽しんでいたかった、というのは我侭すぎるでしょうかね」 「いいんじゃねぇか」 「マスター。マスターには楽しいと思えること、ありましたか?」 「俺か? 俺は、まあ、今が楽しいから」 「どうしてでしょう?」 「……あー、それはだな、主に、フレイが居る、からとかか?」 「そう、ですか。……ふふっ」 「フ、フレイはどうなんだよ」 「私は……幼き頃の修行の日々の中、刀で敵を倒すのが楽しかったです」 「……人形が先に成仏してて正解だったな、こりゃ」 フレンディスとベルクがいい雰囲気になっている。しかし、それを打ち壊すものありけり。 「ま、またしても失敗だというのか! くそうっ!」 「所詮はその程度ってことか、けけっ」 「に、人形さんはいなくなりましたけど、ダークスカルさんが。ああ、私はこれからどうすれば……」 去年同様己の野望に人形軍団を取り入れることができなかったハデスたち。 その姿を見て笑うフレンディス、呆れたようなベルク。 「しかし、あんなハプニングがあるとはなぁ! 急いで駆けつけてよかったぜ!」 「ゲブーさん、いつの間にかいましたもんね」 「ふむ、ミッション完了でありますな」 「私たちはそんなに活躍してないけどね」 「そんなことありません。皆さんがいたからこそ楽しんで成仏して頂けたのですよ。ねっ」 「その通りだ。この勝利は我ら全員のものだ」 「……カラミティは嫌。けど、こうやって助けられものもあるのなら、悪くないのかもしれないわね」 各人、それぞれの感想を口にしたところで人形騒動は一件落着。去年に続き今年も無事に終わったのだった。 「……ローグ。我とおぬし、完全に忘れられているな」 「……うるさい。 へっくし!」 約一名が若干の風邪を引いたこと以外は。
▼担当マスター
流月和人
▼マスターコメント
雅羅たちが年末を楽しんでいたと思ったら自分は年を越していた。 衝撃的な事実から今年がスタートした、流月です。この場を借りて。 みなさま、めりーくりすます。 そして今年も残り364日くらいとなり終わりが近づいています。 最後まで悔いのないように今年を過ごしてください。 ……って今年は! 始まったばかり! ゆるやかにいきましょう! あけまして、おめでとうございます! またどこかでお会いすることがあれば生暖かい目で見守っていただければ僥倖です。
▼マスター個別コメント