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【第三話】始動! 迅竜

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【第三話】始動! 迅竜

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 戦域を飛ぶ一機のジェファルコン
 その機体には四人の男女が乗っていた。
 本来は二人乗りの筈であるジェファルコン。
 一見すると、コクピット内には二人だけが乗っている。
 だが実際は三人だ。
 メインパイロットシートにはリカイン・フェルマータ(りかいん・ふぇるまーた)
 そしてサブパイロットシートにまたたび 明日風(またたび・あすか)という二人の組み合わせである。
 ではなぜ三人なのかというと、リカインの髪型がわずかにいつもと違っているということに理由があった。
空を漂う黄金の海月型ギフトであるシーサイド ムーン(しーさいど・むーん)は繊細かつ大量の触手をもつ為、逆さまだと金髪のカツラのような状態になるのをいいことにリカインの頭上に陣取っているのだ。
 リカインの頭上に陣取ってウィッグのふりをしているシーサイドはともかくとして、ではもう一人はどこにいるのか?
 それは機体の中ではなく外だった。
「このまま迅竜って艦に向かうわけね」
 機体の外から問いかけてくるのはシルフィスティ・ロスヴァイセ(しるふぃすてぃ・ろすう゛ぁいせ)
 とにかくイコンは嫌い、撲滅すると言ってはばからない彼女は、無謀にも生身のままジェファルコンにつかまってついてきてしまった様子だ。
 途中までは土佐に乗艦して来たからいいものの、土佐から迅竜に乗り移るまでの間、彼女は生身のままつかまっていた。
「ええ。オペレーターとして合流するつもりだけど。ところで……本当にそれで大丈夫?」
「大丈夫よ! どうってことないわ!」
 戦闘要員としてではなく、あくまでもクルー候補として迅竜に合流することを目的としているリカイン。
 そのゆえ、戦力というよりは足としてジェファルコンを使うため、明日風は出力確保のある意味生贄として引っ張り出されてしまうことに。
 イコンで戦い続けるつもりならともかく、リカインがオペレーター志望である以上、ジェファルコンは今後は格納庫の肥やしとなる可能性がとても高く、あんまり乗り気ではない明日風だが、そこはパートナー。
 渋々ではあってもちゃんとついてきてくれたようだ。
「とんでもない機体を相手にしてるとは迅竜クルーの御仁たちですがね。相手にするこっち側にも、まさか生身でイコンにつかまって移動するなんてトンデモな御仁がいると知ったらさぞ驚くでしょうなぁ」
 念の為、ジェファルコンは至極ゆっくりと飛んでいた。
 もしジェファルコンが普通に飛行などしようものなら、流石に契約者の片割れといえど、振り落とされてしまうだろう。
 そして、その隙を逃す敵ではなかった。
 迅竜を襲っていた“ドンナー”の一機が、援軍に気付いて早速襲いかかって来る。
 “斬像刀”を振りかざし、斬りかかってくる“ドンナー”。
「いけないっ……!」
 スピードを殆ど出していないジェファルコンでは対応しきれず、そればかりか機体表面に張り付いたシルフィスティも危険に晒される。
 リカインが焦った瞬間、横合いから飛来した何かが“ドンナー”の頭部をかすめ、斬撃の狙いを逸らした。
『まさかボクたち以外にも人間サイズでイコンと空戦してる人がいるとは思わなかったんだよ』
 ジェファルコンに通信が入る。
 その声の主はリカインたちと同じく天御柱学院の鳴神 裁(なるかみ・さい)だった。