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リアクション
2章 【魔王様ゲーム】
「いやあああ!! もうや……ッ、来ないで、もうやめて! とっくに私のSAN値はゼロよ!」
「はいはい馬鹿やってないでとっとと行くわよ!」
街のはずれにある、少し人工的な感じがする建物の中。そこで次百 姫星(つぐもも・きらら)と呪われた共同墓場の 死者を統べる墓守姫(のろわれたきょうどうぼちの・ししゃをすべるはかもりひめ)は走り回っていた。ゾンビから逃げる為である。つまりゾンビに追われているのである。
「っと! ここ入るわよ!」
墓守姫は近場の部屋の中へ姫星を投げ入れ、自身もそこへ入る。
「ふぅ、とりあえず大丈夫かしらね。数体なら大丈夫だけど、あれはちょっと数が多いわ。それにしても、あれだけのゾンビがいるってことはやっぱり、ここに原因があるのかしら?」
次百と墓守姫は、ゾンビ大量発生の原因を突き止める為に動いていたのだ。次百の【トレジャーセンス】でこの場所を発見し、突入したのである。
「あーもー何でこんなにいるのですか……。無理ですよ。生理的に受け付けません」
次百がぐちぐちと言うが、そんなことはどうでもいいとでもいいたげに、墓守姫はそこらの資料をあさる。
「何してるんですか?」
「資料あさってるの。どうやらこの部屋、ビンゴだったみたいね。……ゾンビの研究資料やら日誌やらがたくさんあるわ。でも、ゾンビ自体は自然発生しただけみたい。それを捕まえて『弄って』たら変異種が生まれたってことが書いてあるわ」
どれどれ、と次百も目を通してみる。
「全部で3種類の変異種。へー、色々いるのですね。それじゃあまぁ、とりあえず、この情報は流しておきましょうか。討伐組の役に立つでしょうしね!」
■
「……はい。了解しました。情報提供ありがとうございます。では」
佐野は次百たちから連絡を受けた。変異種についての情報提供だった。
「んーと、まず1つ目、再生力が異常に高いゾンビ、再生ってことで『リバース』って名前がついてるね。仁科、大洞たちが遭遇した真っ黒なゾンビだね。体内の魔力を使って体を再生する。ということは魔力が尽きるまで攻撃すればいいってことだ! 2つ目は大きな鎌を持つ、鎌、『シックル』の名前を持つゾンビ。凶暴で獰猛、獲物を見つけては素早く対象へ近づき、鎌で仕留める、と。ハイコドって人が遭遇してたゾンビだね。最後に工具箱の意を持つ、『ツールボックス』。大きい図体をしていて、体の中には取り込んだ工具が入ってる。両腕はチェーンソーやのこぎり、出刃包丁などになってる。体の至る所から釘を撃ち出したり、体内生成したトラップを吐き出したりする、と。長くなったけど、まとめられたよ。あ、あと、推定の数はそれぞれ50体ずつだね!」
アニスは記録した通信端末を佐野に見せながら言う。
「よし、ありがとう。アニス。それじゃあこの情報を全員に流すとするか。あぁ、変異種は一体につき、普通のゾンビ1000体分の討伐数になるってことも言っておいた方がいいかな」
「じゃ、アニスは引き続き警戒してるね!」
■
「【バニッシュ】!」
背の小さい伊達眼鏡をしている女の子が、変異種『リバース』へ光輝魔法をぶちかます。リバースは浄化され、崩れ落ちる。
「んー……、今の情報が確かなら、変異種狙った方がポイント高いかな? えぇと、1000×50×3だから、150000かな? まぁ適当に始末してれば巻き込まれてるでしょ。さて、時間がもったいない! 次いくかっ!」
■■■
【魔王様ゲーム】ルール
・各々でチームを組みゲーム開始
・一番ゾンビを倒した数が多い人が居たチームが勝利
・相手チームへの妨害可
・撃破数勝利チームの代表は負けたチームの代表に対して一つ命令できる
「で? 勝ったらどうするんだ?」
「勿論、人の事ロートルとか抜かしやがったセラさんに一日服従させますが何か?」
【魔王様ゲーム】参加者である、相田 なぶら(あいだ・なぶら)とフィアナ・コルト(ふぃあな・こると)は、チーム勝利の為、ひたすらゾンビの駆除をしていた。
「まぁ、仮に負けても罰ゲーム受けるのは代表のフィアナだし、割とどうでもいいんだけどねぇ。……っていうかさ、さっきから突撃しかしてないわけなんだけど、少しはこう……作戦とかさ?」
「作戦? 面倒ですね。ほら、あるならとっとと教えなさい」
「あぁ、じゃあ、俺が【歴戦の魔術】や【真空波】の遠隔攻撃で、できるだけ群れを一か所に集めるからさ。そこをフィアナがドカンといってくれるといいと思うんだけど」
「……で、どの群れに突っ込むのですか?」
「なんか良く理解できてないような感じがするけどまぁいいや。……ほら、そこに大きい群れがあるだろ? 俺が必死で集めた大群だからさ。とっととやってよ」
言いながらなぶらが指差す方向には、1万程はいるであろう大群だった。
「なるほど。あそこへ突っ込むのですね? 任せなさぁいッ!」
フィアナは【チャージブレイク】で力を貯め、剣を構え、【アナイアレーション】で大群をまとめて薙ぎ飛ばそうとした、その時。
「ははははは!! 獲物は横取りするものぉぉぉぉぉッッ!!」
という声とともに、高さ10メートルはあると思われる巨大なドラゴンが現れた。ドラゴンは大群を踏みつぶし、火を噴き、大群を殲滅し始める。その足下で、ドラゴンが仕留め損ねたゾンビを、持っている剣を【疾風突き】や【真空波】で無駄なく殲滅している男もいる。
やがて、ドラゴンと男はあっという間に1万のゾンビを殲滅した。
なぶらとフィアナが呆気にとられていると、ドラゴンが突然消滅し、その場には一体の魔鎧と男が残る。
「あら。【Dインストール】、もう切れちゃったかしら」
ドラゴンに変身していたのは、同じく【魔王様ゲーム】の参加者であるリーラ・タイルヒュン(りーら・たいるひゅん)だった。
「ふぅ、いっちょあがりっと」
先程ゾンビを始末した【龍覇剣イラプション】をしまいながら言うのは、柊 真司(ひいらぎ・しんじ)である。
「一段落ついたことだし、さて、次に行きま――」
「ちょっと待てェ! そこの魔鎧!」
リーラが振り向くと、そこには顔を真っ赤にして怒るフィアナの姿が。
「何? 妨害は禁止されていないハズよ?」
「げ・ん・どってモンがあるでしょうがァァッ!」
叫びながら巨大な剣を思い切り振るうフィアナ。しかしリーラはそれをひらりと躱し、
「あらぁ? こんなことしてていいのかしら? さっさとゾンビ駆除に行かないと、私の罰ゲームで一日家来にされちゃうわよ? ちなみに強制コスプレ」
「なっ……。そんな事考えていたのですか!? くっ、仕方ない。すぐに次に向かいますよ、なぶら!」
フィアナはすぐにゾンビを探しに駆け出す。はいはい、と半ば呆れたように、なぶらも着いて行った。
あとに残された真司とリーラは、
「……で? どうする?」
「追跡するわよ。いいカモだわ。あの娘」
その為に先を急がせたな、と真司はため息をつく。
「まぁいいか。行くならさっさと行くぞ。俺もちょっと、暴れたいからな」
■
「ふむ。あの辺りには巻き込まれないようにしないとですね」
【魔王様ゲーム】参加者、チーム代表であるシュリュズベリィ著 セラエノ断章(しゅりゅずべりぃちょ・せらえのだんしょう)は遠くを見ながら言う。彼女の目線の先には、またもや獲物を横取りされそうになっているフィアナと、横取りしようとしているリーラがいた。
「セラ、ゾンビが溜まっている所を見つけたぞ。行くか?」
上空から【移植眼】で探索をしていたリア・リム(りあ・りむ)がセラに言う。
「そうですね……。この辺りはもう狩り尽くしましたからね。そこへ案内して下さい」
リアはセラを案内する。案内された場所は周りに何もない道路だった。道路にはゾンビがひしめき合っていた。
「うふふ……。たくさんいますねぇ。それでは始めましょうか!」
セラはゾンビの群れに突撃する。
「【召喚獣・バハムート・サンダーバード・フェニックス】! 出し惜しみはしません! 全力で行かせてもらいます!」
龍、雷鳥、不死鳥がそれぞれ出現する。3体の怪物はゾンビを片っ端から焼き尽していく。
その上空では、リアが【フライトユニット】、【機晶ブースター】で空中姿勢を制御しながら、【ニヴァーナライフル】でゾンビの群れを撃抜いていた。
順調にゾンビの駆除が進められていたが、ここで一つ問題が発生する。
「……あ、やばいな。エネルギー切れそう」
リアのエネルギーが切れかけていたのだ。
「弾もそろそろ尽きそうだし、地上には降りたくないしな……。仕方ない。……おーいセラ! 僕、帰る! 後は頑張って!」
言いながらリアは撤退準備を開始する。それを見て焦るセラ。
「え!? ちょ!? ちょっと待って下さい! セラがあんなことやこんなことされてもいいんですか!? ねぇ! ちょっとおおおおお!!」
叫ぶが、罰ゲームとか正直どうでもいいし満足できるまで暴れることが出来たからもう特に用は無いリアは、とっとと退散していった。
「う〜、えぇい! 過ぎた事は仕方がありません! 一人で無双するとしますか! 負ける訳にはいきませんしね!」
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