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ゾンビ無双

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ゾンビ無双

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5章   墓場荒らし共



「じゃ、挨拶がてら―【炎の聖霊】!」
 騎沙良は【大魔杖バズドヴィーラ】を軽く振るう。ゾンビの群れの一部が発火し、あとには灰が残る。
「んー、変異種がまだ残ってるね。【バニッシュ】!」
 残った『リバース』を光輝属性の魔法で浄化する。
「あ、まだビルの中にゾンビいるっぽいね。【召喚獣:不滅兵団】、ビルを解体してゾンビもろとも潰しちゃえ!」
 全身が鋼鉄の兵士が出現し、近辺のビルを倒壊させに動いていく。
 騎沙良はぐるぐると杖を振り回し、
「そろそろ終わりも近いし、全力で行きますか!」
 言って、【叡智の聖霊】と【万能武装サポートツール・N】で火力をあげた上で、
「【召喚獣・サンダーバード・フェニックス】! 焼き尽くしてこい!」
 さらに2体の召喚獣を召喚させる。雷鳥と不死鳥は、それぞれ
「よし! じゃあ私も突撃するよー!!」
 弾ッ! と地面を蹴り、ゾンビの群れに飛び込んでいく騎沙良。
 任務開始から今まで、【聖霊の力】と【リジェネレーション】を駆使し、無限の体力で動き回り、飛び回り、時には人助け、そして常に狩り続けていた彼女は、ここでやっと全力を出す。
 『魔人』と呼ばれた彼女は、ただただ、天真爛漫に暴れるのみ。



 街の中心へ向かう一本道。
 そこで2人の男女が、ゾンビを全滅させる勢いで進撃していた。
 男の方、桜葉 忍(さくらば・しのぶ)は、【バーストダッシュ】【ゴッドスピード】により速度を最大限にまで上げて疾走しながら、巨大な剣【昂狂剣ブールダルギル】を異常な速度で斬り刻んでいく。【アナイアレーション】で周囲のゾンビ達を頭ごとバラバラにしてしまう。その度に赤い鮮血を彼は浴びているのだが、お構いなしに突き進む。
 女の方、織田 信長(おだ・のぶなが)は、「この私が全て片付けてやろう!ふっははははは!」などと吼えながら、忍以上に大量に残酷に殲滅していく。【龍覇剣イラプション】を【武器凶化】で魔力を付与させ、【朱の飛沫】で斬撃とともに焼き尽くす。
 やがて、彼女は調子が出て来たようで、
「私の本気を見せてやろう! 【魔力解放】! 【ヒロイックアサルト『第六天魔王』】!!」
 紅い炎のような覇気が体に纏う。魔力と身体能力が上昇する。
 織田は【魔黒翼】で空へ飛び、【闇黒死球】を放つ。周囲にいたゾンビたちは黒い魔力の塊に引き寄せられていく。
 そして、【龍覇剣イラプション】を思い切り地面に突き刺し、
「我が炎を喰らうがよい! 【ヘルファイア】!!」
 瞬間、剣を中心に、黒い炎が地面に広がっていく。
「はははは! 灰燼と化せ! 屍共!」
 黒い炎は地面から勢い良く噴き出し、ゾンビを燃やし尽くす。やがて辺りは焦土と化してしまうほど、燃え尽きた。
「……ちょっとやりすぎじゃね? 街の復興の為の請求とか来ても知らないぞ」
 思わず忍は言うが、
「何を今更。そこらのビルなんてボキボキ折れとるぞ。さぁ、まだまだ行こうぞ!」



 どうやら、残っているゾンビは街の中心にある避難所付近だけらしい。という情報を受け、続々と契約者たちは集まってきていた。
 瀬乃 和深(せの・かずみ)桜月 舞香(さくらづき・まいか)も情報を受けて集まった者である。
「あれまぁ。こんなところにこんなにも獲物がいるとはねぇ」
「避難所の生存者につられてやってきたのかしらね? まぁ何にせよ、蹴り倒すだけだけど」
 舞香は、既に返り血で真っ赤に染まっている【ハイヒール】をしっかりと履く。
「……赤足の〜ってか」
「さて、それじゃ、そっちも頑張ってね。行くわよ!」
 舞香は瀬乃の戯言を無視して、桜月 綾乃(さくらづき・あやの)奏 美凜(そう・めいりん)と共に屍の海へ突撃していく。
「まいちゃん! 左に見えるビルに、たくさん潜んでいるよ!」
 【御信託】でゾンビの潜む場所のお告げを聞いた綾乃は、舞香に教える。
「了解! 美凜! 背中は任せたわよ!」
「おぉ、任せるアル!」
 相手がゾンビということでキョンシーの服を着ている美凜は、早速カンフーでゾンビの首やら脊椎やらをへし折っていく。
「よぉーし、あたしも気合い入れて蹴って行きますか!」
 舞香はハイヒールのピンでゾンビの頭を踏みつぶしたり、回し蹴りでゾンビの首をくの字に折りながら進んでいき、やがて綾乃の言うビルに到着する。
「美凜、あなたは正面から見て左から、私は右から、壁やら柱やらを壊して行って。このビル、ぶっ壊すわよ」
 2人はビルへ突入する。ビルの中から、鈍い轟音が炸裂し続ける。そしてやがて、ゴゴゴゴゴ……と、ビルは根元から崩壊していく。
「うん。これで大分減ったんじゃない? さて、まだビルは残ってるわ。行くわよ! 2人共!」
 次々とビルを倒壊させていく舞香たちを見て、瀬乃も動き出す。
「んー、そろそろ行くか――ってあれ?」
 瀬乃が気づくと、さっきまで一緒にいた筈のリオナ・フェトラント(りおな・ふぇとらんと)セドナ・アウレーリエ(せどな・あうれーりえ)が2人共消えていた。何処へ行ったかと探してみると、案の定、既に戦場入りしていた。
「狩りつくす……」
 大量のゾンビを前に元傭兵だった頃の血が騒いだのか。リオナはそんな物騒な事を漏らし、にやりと、笑みを浮かべる。
 【ツインファング】を両手に持ち、【スナイプ】で正確にゾンビの頭部を撃抜き続ける。さらに【魔弾の射手】で後の事など考えずに、狂ったように、愉しそうに、撃ち続ける。
 そんなリオナを見て、瀬乃は思わず
「お前……、そんな性格だったのか……?」
 と呟いた。セドナも、
「ふふん。頼もしいヤツだ。我も負けてられないな」
 と、【A.E.F】を全面展開する。リモートで自在に動く射撃兵器は、次々とゾンビを蹴散らして行く。
 そして自身も、【光条兵器】の蛇腹剣を取り出し、近づいてくる『シックル』に斬撃を与える。
「あー……。2人してやりたい放題だな」
 瀬乃はリオナとセドナを見て、なるようになれと、呆れる。そして2人のフォローにまわることにする。
「とりあえず……【アブソリュート・ゼロ】! で壁作って……と。ゾンビが分断されたから幾分狩りやすくなったろ」
 そうしていると、2人が討ち漏らしたゾンビも多数でてきて、それぞれリオナとセドナを狙い始める。
「世話のやけるな……。【ショックウェーブ】!」
 衝撃波がゾンビを襲う。ドッ! とどこかへ飛ばされて行った。
「そろそろ本気だすころだぞ。2人共。今回はサポートしてやるから、存分に暴れろ!」



 魔鎧であるリーゼロッテ・リュストゥング(りーぜろって・りゅすとぅんぐ)を装備した桐ヶ谷 煉(きりがや・れん)は、最後の戦闘準備を始める。
「【潜在開放】!」
 自身の能力を最大限まであげる。同時に、【刻印眼】で右目を紅く染め、戦闘態勢に入る。
「よし、行くぞ」
 呟き、刀身全てが真っ黒に染まった【黒焔刀『業火』】を抜く。軽く、居合いの構えをとり、
 弾ッッ!!! と、地面を弾く。
 走り、駆け抜け、その速度は【ゴッドスピード】により、どんどん加速していく。
 やがてゾンビの群れが見えてくる。
 駆け抜ける。ゾンビとすれ違う。すれ違ったゾンビは、頭部だけを、見事な太刀筋で真っ二つにされていく。
 彼の走った後には、頭部を綺麗に割られたゾンビの亡骸が続いて行く。
「【アナイアレーション】!!」
 ゾンビのたまり場を、派手に吹っ飛ばす。
「【なぎ払い】!」
 周囲のゾンビをまとめて切り倒す。
 斬る、伐る、切る、キル、KILL。
 とにかく、斬りまくる。
 目に入ったゾンビは全て、斬り刻んでいく。
 やがて、『シックル』が彼に襲いかかる。計10体程。一斉に。
「一発でも喰らえばマズいな」
 呟き、襲い来る鎌を【スウェー】で受け流す。
「……受け流し続けても駄目だ。ここは一気にでかい攻撃をするのが吉か?」
 彼は少し後退し、自分の背後にそびえ立つビルを見据え――
「【ヒロイックアサルト『雲耀之太刀』】――」
 重い一撃を、躊躇無くビルに叩き込む。
 ドッゴォオオオオ!! と、鈍い轟音が響いた後で、ボギバギメギメギィ、と、ビルが崩壊していく音がする。やがてビルは、『シックル』含め、大量のゾンビがいた所へ倒れ込んだ。
「よし、もう一踏ん張りだ。最後の一体まで狩り続けるぞ」
 彼はそれだけ呟くと、次の獲物目掛けて駆け出していった。