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三船 敬一(みふね・けいいち) レギーナ・エアハルト(れぎーな・えあはると) 



シャンバラ教導団歩兵科に所属している三船敬一は、たまに趣味的に犯罪調査をしたりもしており、一部では軍人探偵と呼ばれている。
これまで何度か犯罪事件の調査のために訪れた空京のテーマパーク、マジェスティックでの一連の事件に、三船が興味を持ったのは、三船のパートナーで、職業の一つとして探偵業も営んでいる、常に全身に包帯を巻いている獣人の女性、レギーナ・エアハルトからの報告をきいてからだった。

「失踪人探しを依頼されて、最近、マジェスティックに週7ペースで、ほぼ毎日、行っているのですが、あの街で、また、なにか奇妙なことが起こりはじめている気がします」

「奇妙なこととは。
マジェはテーマパークとはいっても実質、あの地区に代々住むネイティブたちの独立自治領だ。
空京の他の場所とは、風習も文化も違うし、それに、観光客も多いかわりに、犯罪の発生件数もかなりのものだろ。
19世紀のロンドンを再現した独特の雰囲気が、アウトサイダーたちを引き寄せるのかもしれないが、パラミタの中でも屈指の犯罪都市だよな。
いまさら、行方不明者ぐらいで」

「私のところに、最初の依頼があったのは、約2週間前です。
それから今日までの間に、毎日のように別の人から依頼があって、いま現在、私は、10件以上の失踪人探しを抱えています。
これらはすべて、マジェに行った人物がそのまま消息をたったという内容です」

「エアハルトの仕事に口をはさむつもりはないが、それは本来、マジェのスコットランド・ヤードがすべき捜査なんじゃないのか」

「私も依頼人にもそのように伝えましたし、ヤードにも連絡して意見をききました。
行方不明者の捜索においては、ヤードも全力をつくしているが、ここ最近、件数が急激に増加していて、外部の探偵の介入もヤードの邪魔さえしなければ、歓迎、協力したい、との返事です」

「ほう。ヤードが匙を投げているのか。しかし、エアハルト。普段、マジェの外に住んでいる私立探偵が解決するには、土地勘や所有している情報量からしても、楽な仕事じゃないだろ」

「仕事は仕事です。
楽も苦しいもありません。結果をだすまで誠意をもって取り組むのみですね。
で、敬一。余裕があるのなら、私とマジェにきてくれませんか」

スケジュールに余裕のあった三船は、レギーナの願いを2つ返事で快諾して、マジェスティックを再訪したのだった。

マジェはけっこう広い。俺の故郷、日本の首都、東京ほどではないけれど、実際のロンドンとだいたい同じ1500平方キロメートルの広さだ。
日本人なら東京ドーム約320個ぶんとでも表現するだろう。ちなみにTDLなら約19個分だ。
この広さの中で行方不明者を探すのは、あてになる情報でもなければ、ひたすらに徒労を繰り返すだけになる。エアハルトに付き合って、来てしまったが、さて、どうしようか。

心配する三船にレギーナは、作戦を提案した。

「実はすでにだいたいの目星はついているのです。
どこへ行って、なにをすべきか」

「それは助かるな。さすが、エアハルトだ」

「問題はここからです。
私が、わけもなく敬一を呼んだと思いますか」

となると、ドンパチでもやらなきゃならない展開でもありそうなのか。
まったく、マジェは本当に物騒だな。
複数の犯罪組織があって、外部の犯罪者もひんぱんに出入りしている。
かなりやばいやつらがいつの間にか入り込んで、自分のシロをつくってたりするし。

これまでのマジェでの経験を思い出して、三船は自然と黙ってしまった。

「今度の相手は怪獣かもしれません。
覚悟してください」

「怪獣。怪人でなく、ケダモノか。
そんなものまでいるのか。だったら、相応の武器を用意していかないとマズイな」

「はい。伝説の人喰い怪獣です。対人用の兵器はきかないかと思います」

冷静にこたえたレギーナが三船を連れていったのは、ロンドン動物園だ。

「悪い噂の多い場所です。
私の調査の結果では、多発している行方不明者の何割かは、ここで姿を消したのだと思われます。
今日は私のこれまでの調査の詰めですから、敬一以外にも助っ人を呼んでいます」

「じゃぁ、その助っ人さんがくるまで、事件についてのくわしい説明をしてもらおうか。
俺には、なにがなんだか、まだ、さっぱりだ」