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我を受け入れ、我を超えよ

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我を受け入れ、我を超えよ

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 教導団の自分の部屋は殺伐としていて身支度ひとつの簡単なものの空間にいる黒乃 音子(くろの・ねこ)
 起動音がして、その空間がベッドや棚、机に椅子にまで置かれたヌイグルミが置かれた女の子らしい部屋に変わる。
 暖色のカーテン、壁紙、ベッドカバーまできちんとそろっていた。

「え?」

 男装して、シャギーの美少年風とした出で立ちで周囲に溶け込み、多くの大人を指揮してた彼女には似合わないその空間。
 そんな空間に、襟元にレースがあしらわれた全体的にふんわりとした雰囲気のワンピースを着たもう一人の音子がちょこんと椅子に座っていた。

『こんな所に立っていないでこっちで一緒に紅茶でも飲まない?』

 全く自分と正反対の見るからに女の子と言った音子が、可愛らしいテーブルに誘う。
 あまりにも正反対でこれがもう一人の自分出る事が受け入れられない音子。

『紅茶は好きだったよね? 冷めないうちにどーぞ』
「あ、ありがと」

 こくりと紅茶を飲む。
 きちんと味がして、これが装置で作りられた精神世界だとは思えないなと内心思っていると、爆発する音や戦車が行きかう音、様々な人たちの叫び声が聴こえてくる。

「なんの音?」
『なんでもいいじゃん。これ、この紅茶に合うんだ、食べてみてよ』

 少女音子は綺麗にデコレーションされたクッキーを勧めてくる。

「う、うん……」
「−−−−−−−−−−!!」
『おいしい?」

 聴こえてくる叫び声には過去の戦友の声も混じっている。
 それを聞きたくないのか、はたまた聴こえていないのかどんどんお菓子や紅茶を飲ませていく。

 その間も途切れることなく騒音は響いてくる。

『あ、もうなくなっちゃったみたいだね』
「ねぇ、もう一度聞くけどあの音は何? あの音には、あの声には……」
『そうだ! こっちに可愛いぬいぐるみがあるんだ』

 ぐいっと手を引く少女音子の手を振り払う音子。

「ボクはこんな女の子した遊びはしたくない!」
『……………だから、男の恰好をしているの?』
「それがボク自身であるから」
『可愛いものに囲まれたい・女の子らしい服だって着たいでしょ?』
「それは……」

 このカリキュラムが自分自身の内に秘めた想いや、考え、過去が現れるのであるから、この世界もこの少女の姿も自分であるのは分かっている。
 しかし、それを受け入れられない自分がいる。

『死へ誘われる恐怖、戦場の怖さ、戦友との別れなんて、もう体験したくない、大尉の位置にいるのに男である必要なんてない!』

 徐々に成長しつつ、泣きながら話す少女から女性になった音子。
 この世界ではなにが起きてもおかしくない。 急激に成長することもあるだろう。
 成長したことに意味があるのだから。

「(あぁ、ボクにもこんな子供っぽい部分や女らしい部分もあるんだ)」

 決して無理はしていないが、必要以上に男らしく、男装に勤めていたなと素直に認められる音子。

「そうだね。確かにボクは必要以上に男らしくなることで、キミのような女性の心を深くに仕舞っていたみたい。キミはボクだもん、もう深くには仕舞わないよ」

 そう音子が言うと、女性音子は消えもとの殺風景な部屋に戻っていく。

「すぐには男装は止められないし、手始めに雑貨屋でも行こうかな?」

 男らしく生きると言っても、女性らしさを消す必要がないことを知った音子はそんなことを呟いた。