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我を受け入れ、我を超えよ

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我を受け入れ、我を超えよ

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「精神面強化カリキュラム、たしかに、精神的にきつそうな内容だね……正直ちょっと怖いな……まぁ自分だけじゃないだろうけど」

 神崎 輝(かんざき・ひかる)は共に受けるパートナーたちに話を振る。

「私の思い出したくないところかぁ……大体察しはつくというか……見られたくないんですけどね、あんなの……特にマスターには……」
「自分の受け入れたくない所……まぁ瑞樹お姉ちゃんと大体同じですね……造られた時からずっと一緒なのでよくわかります。二人だけならまだしも、他の人に見られるのは……精神的にきつそうですね」
「でも……流石に今回はちょっと嫌な訓練だなぁ……(多分ボクの本性ばれちゃうよね……見られたくないから隠してたんだけどなぁ)」

 一瀬 瑞樹(いちのせ・みずき)一瀬 真鈴(いちのせ・まりん)はややげんなりとした様子。
 レナ・メタファンタジア(れな・めたふぁんたじあ)は知られたくない部分を見られてしまうことに不安を抱く。

「でも、せっかくのチャンスだよ、皆で協力して乗り越えて、もっと成長できたら……なんてボクは思うんだ」
「でもまぁ、それが訓練だからしょうがないのかな……お互い様かもですし。とにかく、皆で協力して自分を乗り越えます!」
「そうですね。ただ闘うだけじゃなくて、お互いの『自分』を受け入れて戦って勝つ……難しそうだけど、精一杯頑張ります!」
「(ま、ドン引きされそうだけどしょうがないか……)皆がボクを受け入れてくれるなら、ボクも皆を受け入れるよー。どっちにしても、いつも通りのボクの戦い方で、自分を乗り越えてみせるよっ!」

 それぞれの覚悟を決めて、部屋へ入っていく。

 装置が起動され、現れるもう一人の自分が出てくるのを待つ。



 そして現れたのは、瑞樹と真鈴は契約前、戦闘用兵器だった頃の暴走状態の自分たち。
 その隣には本来の姿の自分である対機晶姫用機晶姫の姿をしたレナ。
 少し離れた場所から機晶姫たちを見ている輝がいた。

「皆、行くよ!」
「はい! 全力でいきます」

 混沌の楯を前に出し、前に出ると守りの体勢に入った輝は、オートガードとオートバリアを全員にかける。
 瑞樹はさらにクライ・ハヴォックを全員にかけ、魔導剣【ブルー・ストラグラー】を手に輝の横に立つ。

「援護は任せて下さい!」
「回復はボクがするから、安心して。ボクも戦うけどねー」

 後ろで機晶妖精【ミストラル】βと機晶妖精【ミストラル】αを浮かばせ、真鈴は魔導砲【リトル・スター】の照準を合わせる。
 レナはいつでも攻撃が出来るよう、六連ミサイルポッドを構える。

『アアアアアアアアアア!』
『倒す倒すタオスタオス!』

 襲いかかって来る暴走状態の瑞樹と真鈴。

 瑞樹は魔導剣【ブルー・ストラグラー】で振り下ろされた剣を受け止め、輝は撃ちだされる銃弾を混沌の盾で受け、衝撃は竜鱗化とインビンシブルで軽減させる。
 鍔迫り合いを制したのはスタンクラッシュをかけた瑞樹。
 向こうのレナの方まで暴走瑞樹を吹き飛ばす。

『おいおい。なに吹っ飛んでだよ』
『別に吹き飛んでない。衝撃を少なくするために後ろに飛んだだけ』
『はっ負け惜しみだけは立派なもんだ』

 見下すように瑞樹を見る冷めた目をしたレナ。
 のんびり温和な性格のレナはそこにはいなかった。
 そのギャップに驚くメンバー。

「あれがレナさん……?」
「あーやっぱ驚くよねー。はは……今度はボクの番だよっ」

 サンダーブラストと凍てつく炎を六連ミサイルポッドに乗せて放つ。
 機晶姫たちはそれぞれそれを避けていく。

「どうしてボクは戦わないの?」

 輝は向かってくる者の中に自分がいないことに疑問を抱く。

「ボクは皆を守りたい。そうボクは思っていたけど、違うの?」

 プロボークで相手の攻撃を自分の方に引き付け、他のメンバーが攻撃しやすいようにする輝。
 アナイアレーションで瑞樹と真鈴を飛ばすと、瑞樹と真鈴が六連ミサイルポッドと魔導砲【リトル・スター】で追い打ちをかける。
 瑞樹のミサイルは避けるが、真鈴の機晶妖精【ミストラル】αによる追跡システムは彼女らを追い続ける。

『ボクは皆が怖い……信じる事ができない。こうして一緒にいても本性・過去に対する恐怖を消す事が出来ない』
「それは」

 言われるまで分からなかった、否忘れようとしていた感情。
 確かに輝の中では彼女たちに対して恐怖心が存在していた。
 感情のブレが輝の手にしていた楯を弾き飛ばす。

「「マスター!」」

 冷酷なレナが放つサンダーブラストが輝に向かってくる。
 瑞樹はブレイドガードで雷を弾き、真鈴の機晶妖精【ミストラル】βのカマイタチがレナを斬り裂く。

「輝、大丈夫?」
「は、はい。すみません」
「とりあえず回復させるからね」

 レナは命のうねりを輝にかける。

「ありがとうございます」
「いいって。まだ頑張れる?」
「はい。先ほどは動揺してしまいましたが、ボクには皆がいるんです。皆だって見たくない部分、知られたくない部分を見せてるんです。ボクだけがここで負ける訳にはいきません!」

 輝の覚悟を聞いて、瑞樹・真鈴・レナも気を引き締める。

「現れた自分も自分の一部。皆受け入れた上で勝ってみせるっいくよ、皆!」
「はい!」
「絶対に勝ちましょうね!」
「そうだね。乗り越えるべき相手は自分! みんなで乗り越えよー!」

 それぞれの武器を手に、一丸となる輝たち。
 相手もバラバラではなく協力体制に入る。輝を除いて……。

 スカーナの光を放ち、魔槍【プラーナ】のソードプレイで斬りかかる輝。
 瑞樹のアナイアレーションに機晶妖精【ミストラル】βのカマイタチと真空波を乗せる真鈴。
 空からはレナのアシッドミストが降り注ぐ。

『『『アアアアアアアア!!』』』

 4人の力・想いを乗せた攻撃は暴走した機晶姫たちを行動不能にさせた。
 残るは後ろで怖がっている輝だけである。

 そっと武器を降ろして近づく輝。
 瑞樹たちはそれを見守っている。

「ねぇ、確かにボクは瑞樹たちが怖い感情はあったよ。でも、それ以上にみんなをボクは守りたいんだ。キミにだって守りたいという気持ちがあるはずだよ」
『守りたい気持ち……』
「キミにも槍と楯がある。それはみんなを守り、みんなと戦うための証。不信感や恐怖があるのがいけない事じゃない。そう感じるのも自分、もう忘れたふりをしないでそれを受け入れるよ」

 そっと抱きしめる輝。
 抱きしめられた輝は、きゅっと輝の服を握ると溶けるようにして消えていった。

 立ち上がり、瑞樹たちの元へ行く輝。
 その場には絆を深めた4人がいるだけだった。

 それぞれがそれぞれ、感謝の気持ちを抱いて。