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リアクション
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さて、カツアゲ隊のその後はどうなったのであろう?
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彼等の内、数名はフラフラと下宿前を徘徊していた。
そこへ、マレーナへ「ロンTワンピ」「カーディガン」をプレゼントしようと差しかかったナガン ウェルロッド(ながん・うぇるろっど)が現れる。
「あ、分かった!
姐さんはもう管理人室に向かっているんだな?」
クラウンからの連絡を切る。
その時闇を蠢く、無法者共を発見したのだった。
しかも! 奴らはよりによって、管理人室を目指しているではないかっ!
「おのれっ!
姐さんに何つーことすんだっ!」
ていっ!
体当たりして、カツアゲ隊共に制裁を入れる。
常人ならいざ知らず、契約者の上、相手は弱り切っている。
ナガンの一撃に、支部隊員達は粉砕した。
「ハッ! 姐さんに面通したかったら、プレゼントの1つでも持ってくるんだな!」
姐さぁん!
るんるんとスキップしつつ、管理人室に入っていくナガンなのであった。
「これ、お近づきの印ですぅ……て、え? まだ戻ってない?」
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鬼崎 朔(きざき・さく)は、風呂から戻ったマレーナも世話をかいがいしく見ていたところだった。
彼女は「住み込み用心棒」――それゆえ、襲われたマレーナの護衛を買って出た成り行きだ。
彼女の隣で落ち込んでいるのは、スカサハ・オイフェウス(すかさは・おいふぇうす)。
「はぁ、メイドデビューのはずでしたのにぃっ!」
メイド服も裂けんばかりに、きぃっとスカートの裾を歯で引っ張る。
「夜食も出来ないですよ!
本職のくせして、邦彦様やエクス様に勝てないであります!」
大きな瞳を潤ませる。
「スカサハ。
得意分野で勝負しなさいよ、私もそうですからね」
「得意分野……トラップとか?」
ブツブツとつぶやきつつ、スカサハは夜の中を出て行くのであった。
「なぜ、私を雇ったのだ? マレーナ」
「…………」
「私は、お前や、ドージェをつけ狙ったものだぞ?」
「……それは……」
マレーナが口を開く。
カツアゲ隊が襲撃してきたのは、そんな時の事だ。
朔は逮捕術で捕縛し、則天去私で止めを刺した。
「私の第2の故郷に無断で足を踏み入れるとは!
命知らずだな……貴様!」
ズズーンと地鳴り。
「スカサハのトラップが成功したようだな」
仕上げに、アテフェフ・アル・カイユーム(あてふぇふ・あるかいゆーむ)が「毒薬」片手に飛び出して行った。
「『薬学』で作ったものよ。
朔のためだもの! ……生きて帰ってこれないかもね?」
ゾンビ共に、罠に引っ掛かり、動けなくなったカツアゲ隊の隊員達をひき立てさせる。
毒薬の入れ物を目の前に置いて。
「朔の貴重な時間を無駄にするんだから、これぐらいは当然よね?
さあ、生贄になりなさいな! ふふふ……」
朔は撃退に成功した。
「先程の答えですが……」
マレーナが口を開く。
穏やかに笑っている。
「こんなあなただから。それでいいかしら?
そして私は、あなた達とこのシャンバラ荒野の中で、ただ静かに過ごしたいだけ……」
「マレーナ……」
そうして、朔はマレーナには叶わない、そう考えるのであった。
(そう、だからせめて。
力だけでも、彼女の役に立てばいい……)
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そして残ったカツアゲ隊の面々は、伏見 明子によって、玄関前に引き立てられた。
彼等の受難は勉強ばかりではない。
宿の用意まで、自分で準備しなければならないのだ。
「バラックくらいなら、OKだってさ!」
明子は玄関先で、両手で大きく丸を作った。
「マレーナさんのお墨付きよー!
……あ、何? 負けた上に駄々こねるっていうの?」
恨めしげな目つきの隊員達を睨みつける。
拳をゴキゴキ鳴らして。
「何ならもう一発ぐらいイっとく?」
「と、とんでもないっす! 姐さん!
ただ俺達、さすがに、空大は……」
「だーいじょうぶ、大丈夫。
死ぬ気でやればこの通り何とかなるモンよ!」
バンッ。
明子は空京大学合格通知を広げて見せる。
「つーわけで、まずは寝床の確保ね!」
「ボロ家作ンのはパラ実の十八番だ。
工業科がいるか? いたら、手伝えよなァ!」
げっそりとした様子で、数名の隊員達が進み出る。
パートナーのレヴィはケケケッと笑って。
「ご愁傷様だ。
力に従うのは荒野の掟だろ?
負けたからにゃァ黙って勉強シナ」
かくして彼等は、まとめて受験地獄の中に放り込まれたのであった。
ああ、憐れカツアゲ隊東シャンバラ支部……合掌。