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【2022クリスマス】聖なる時に

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【2022クリスマス】聖なる時に
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リアクション

 ロイヤルガードの度会 鈴鹿(わたらい・すずか)は、隊長の神楽崎優子の指揮の下、宮殿の警備についていた。
「お疲れ様です」
 休憩時間。
 鈴鹿は、保冷バッグを持って仲間である王 大鋸(わん・だーじゅ)のもとに駆け寄った。
 彼の休憩時間も今からのはずだ。
「お弁当を作ってきたのですけれど、一緒に如何ですか?」
「それは、俺様の分もあるってことか?」
「はい、たくさん作ってきましたので」
「そっか、じゃ食わせてもらうぜ! 足りないだろーけどな!」
「ふふ、大丈夫です」
(大鋸さんと一緒に食べようと思って、たくさん作ってきましたから)
 鈴鹿は微笑んで、大鋸と共に休憩室に向かう。
 彼は今日、しぶしぶロイヤルガードの制服を纏っている。
 相変わらずモヒカン、不良顔の彼に合うとは言えないけれど。
 鈴鹿の目には、逞しく素敵な青年に、映っていた。

「どうぞ」
「うわ……」
 テーブルの上に広げられた弁当を見て、大鋸は驚きの声を上げた。
 肉巻きおにぎり、ローストチキン風の、鶏の照り焼き。
 ゆで卵入りミートローフ。
 クリスマスカラーの、ミニグラタン。
 温野菜サラダといった料理が、所狭しと並べられたのだから。
「大鋸さんのお好きなお肉多めのメニューです」
 言いながら、鈴鹿は茶を入れて、大鋸にカップを渡した。
「すげぇな、すげぇぞこれ! 女の子の手作り弁当って、こんなにすげぇのか!? これなんか、クリスマスっぽいよな」
 大鋸がグラタンを指差す。
 ホワイトソースの白、カボチャの皮とグリンピースの緑、そしてパプリカの赤で、クリスマスっぽさを出したグラタンだ。
「沢山食べてくださいね」
「おう!」
 返事と同時に、大鋸は食べ始めた。
 最初に手を付けたのは、肉巻きおにぎり。
 片手で食べながら、フォークは鶏の照り焼きに伸ばしていて。
 パーティ会場の雰囲気と真逆な勢いで、ガツガツ食べていく。
「なんだこれ、肉の中に卵が入ってるぜ」
「ミートローフです。ソースをつけてどうぞ」
「おお、美味い! 料理上手だな、お前」
「ありがとうございます」
 褒められたことも、美味しそうに食べている大鋸の姿にも鈴鹿は喜びを感じる。
 つい、食べるのを忘れて彼を眺めてしまう。
「今日はパーティーが終わったら、孤児院の子供達と過ごされるんですか?」
「そうだな、クリスマスだしな!」
「そうですか……」
 鈴鹿は、孤児院の可愛い子供達や、自分を慕ってくれた子のことを思い出す。
 彼らはどれくらい成長しただろうか……。
 また会いたいなと思いながら、鈴鹿はグラタンを口に運んだ。
「まあ、恋人と過ごすなんて言ってるマセガキもいるけどな」
「恋人と、ですか……。日本では恋人達の日というイメージが強いみたいですから、空京も自然とそうなりますよね」
 コンサート会場にも、カップルの姿が多かった。
「大鋸さんは、こういう時に一緒に過ごしたいと思われる女の子って、いらっしゃらないんですか?」
「そりゃいるぜ、アイドルのあの子とか、百合女のあの子とか、大学にもいい女いるし、パーティ会場にも可愛い子沢山いるってのに! 近づくと逃げやがる。まー、俺様と釣り合う女はいねーってことだな。
 ……ああそうだよ、相手がいねぇんだよ、はははは」
 笑う彼を見ながら。
「私だったら嬉しいのに……」
 鈴鹿は思わずそう呟いてしまった。
「ん?」
「な、なんでもないですよ。あっ、味付け、どうでしょうか」
 鈴鹿は赤くなって、ごまかすようにおにぎりに手を伸ばした。
「サイコーに美味かったぜ! もう1個食っていいか?」
「勿論です。食べていただけましたら、嬉しいです」
 鈴鹿が嬉しそうに微笑むと。
「そ、そっか」
 鈴鹿のほんのり赤く染まった顔を見てか、大鋸も僅かに照れ笑いのような笑みを浮かべた。