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リアクション
桐生 理知(きりゅう・りち)は、普段より大人っぽいドレス姿で、
忘年会会場へと訪れた。
恋人の辻永 翔(つじなが・しょう)が、
理知の姿を見て、少し驚いたように言う。
「綺麗だな。……よく似合ってる」
「えへへ。どうもありがとう」
ドレスを褒められた理知は、華やかな笑顔を浮かべる。
「ほらほら、翔くん、おいしそうなものたくさんあるよ。
どれもおいしそうで迷うなあー」
大人っぽく振舞いつつも、やはりいつも通り、
ちょっと天然な様子を見せる理知を、翔が優しくエスコートする。
「ほら、理知。
キャビアやイクラが乗ってるオードブルがあったぞ」
「わあ、きれい!
ありがとう、翔くん!」
理知は瞳を輝かせ、翔も微笑んだ。
料理を楽しんだ後は、
2人きりになれるバルコニーに移動して、今年1年の思い出を振り返る。
「ねえ、今年、1年で一番、思い出に残ってることってある?」
「そうだな……」
「私は翔くんの恋人になれたことが一番思い出に残ってるし、一番嬉しかった事だよ」
理知が、そっと隣の翔を見上げる。
黒い瞳が、会場の光を反射して、きらきらと輝く。
鼓動が、いつもより早く感じられる。
世界中の音が止まったようになる。
あの時の出来事が、映写機のように、目の前に映し出される気がする。
「翔くんの事、あの時よりも好き、だから……」
聞こえるか、聞こえないかくらいの声でつぶやいた。
翔は、そんな理知を優しく抱き寄せた。
理知はそっと翔の胸に顔をうずめた。
暖かい温もりと、お互いの鼓動が、シンクロして聞こえた。
「……翔くんの思い出に残ってる事も教えて欲しいな」
(私の知ってることかな?)
そっと、顔を上げて、理知は恋人の瞳を見つめた。
翔は、優しく、理知の髪をなでると伝えた。
「ああ、いろいろなことがあったが
俺も、お前と恋人になれたのがとても大きな思い出だ」
「翔くん、ありがとう。
……大好きだよ」
気持ちが通じ合っているのを確認し、
2人は、再び、お互いを抱き寄せた。
夜空を、砂糖菓子を放り投げたように、星々がきらめいている。
空を見上げて、理知が言った。
「今年もいろんな所に行ったね。
来年は今年よりいっぱい色んなところに行こうね! もちろん一緒に!」
今日一番の笑顔を浮かべた理知に、
翔も、大切な人だけに見せる特別な表情で答える。
「ああ。もちろんだ」
2人は自然と手をつなぐと、
改めて、新たな年のことを思いながら、夜空を見つめた。
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