First Previous |
8 |
9 |
10 |
11 |
12 |
13 |
14 |
15 |
16 |
17 |
18 |
Next Last
リアクション
風馬 弾(ふうま・だん)と
パートナーノエル・ニムラヴス(のえる・にむらゔす)は、
クリスマス前からお正月まで、ずっとバイトに明け暮れる日々であった。
そのため、2人ともグロッキーだったが、
2022年の新入生である弾にとっては、
今年はパラミタでの初めての年越しである。
眠い目をこすりながら、なんとかパーティー会場へとやってきた。
ちなみに、ノエルは、コタツで爆睡中である。
ペットのミニキメラ・たむたむを連れて会場入りした時には、
弾の眠気も吹き飛んでいた。
「アゾートさん!」
友人のアゾート・ワルプルギス(あぞーと・わるぷるぎす)に声をかける。
「こんばんは。誘ってくれてありがとう」
「いえいえ、こちらこそだよ」
パラミタではまだまだ数少ない友人のアゾートとともに年越しできて、
弾はとてもうれしかった。
のんびりお話できればと、会場隅の落ち着ける場所をみつけて、
みかんをむきながら、
2人はゆっくりと今年を振り返る。
「そういえば、
アゾートさんは家族と離れてパラミタにやって来て、寂しくはないかなあ」
(僕は家族がないのでその辺りの感覚が分からなくて……)
ふと気になっていたことを、弾はアゾートに問う。
「ううん、大丈夫。
ボクには目的があるから。
それに、万博の時とか、父に会うことができたし」
スイス医師会会長であるアゾートの父は、空京万博のゲストとしてやってきたのだ。
「そっか。
アゾートさんには、
『賢者の石』を創るっていうしっかりした目的があってすごいなあ。
僕も見習って大きな目的を持ちたいなあ。
来年は『賢者の石』創りに近づけるといいね」
「うん。パラミタで学ぶことはこれからも、たくさんあると思う」
みかんを頬張りながら、アゾートは淡々とつぶやくが、
その瞳は、目標をしっかりと見据えているようだった。
「そうだね。僕は魔術や錬金術とか詳しくないので、
これからそういうことも勉強しなきゃなぁ……」
もうひとつ、みかんをむいてあげながら、弾はうなずく。
年上の女性には緊張する弾だが、
アゾートには、なぜか話しやすいのだった。
ふと、そのことに気づいた弾は、そうだ、と膝を打つ。
「僕もパートナーも知り合いがいなくて心細かったけど、
いろいろお話してもらって嬉しかったです。ありがとうございました。
新年もよろしくお願いします」
アゾートは先輩なのだから、と、たむたむともども、改めてきちんと挨拶をする。
「こちらこそよろしく」
アゾートはおだやかに微笑した。
First Previous |
8 |
9 |
10 |
11 |
12 |
13 |
14 |
15 |
16 |
17 |
18 |
Next Last