空京

校長室

【ろくりんピック】最終競技!

リアクション公開中!

【ろくりんピック】最終競技!
【ろくりんピック】最終競技! 【ろくりんピック】最終競技!

リアクション



障害物借り物競争1〜こんなトコまで出張ってすみません〜


『ろくりんピックもいよいよ大詰め! 最終競技を迎えましたー! 第1種目! 障害物借り物競争の実況をするのは魔法少女マジカル☆カナ でーす! みんな、よろしくねー!』
 小型飛空挺に乗って魔法少女のコスチュームを着た遠野 歌菜(とおの・かな)が、競技場を回りながら上空から手を振っている。飛空挺を操縦するのは月崎 羽純(つきざき・はすみ)だ。安全運転を心掛けつつ、今は、挨拶をするように観客席の前を周回していた。歌菜の明るい声に、応援席が盛り上がる。
《この競技は、1レース8人で行われます。メイン走者に、サポートは1人までですね。パートナーを付けるかどうかは自由。パートナーが1選手として参加することもできます。申し遅れました。解説の月詠 司(つくよみ・つかさ)です。本日はよろしくお願いいたします》
《解説のシオン・エヴァンジェリウス(しおん・えう゛ぁんじぇりうす)よ。皆が愉しめるように解説するわね♪》
 軽い調子で言うシオンに、司はちらりと目を遣った。気を取り直したように前を向き、マイクに向かう。
《借り物のカードには特に検閲はかけてないそうですよ。選手達がどんな事を書いてるのか楽しみですねぇ》
《ワタシなら、ちょっとエッチなものとか書いちゃうかもねぇ》
《か、開始早々に何言ってるんですか!》
『さーて! 第1レースの選手のスタンバイが出来たようです! では、選手の紹介、いってみましょうー!』
 歌菜の紹介と共に、オーロラビジョンに彼等の姿がクローズアップされていった。

 1コース (西)イレブン・オーヴィル(いれぶん・おーう゛ぃる)
 2コース (西)春夏秋冬 真菜華(ひととせ・まなか)エミール・キャステン(えみーる・きゃすてん)
 3コース (東)ヤジロ アイリ(やじろ・あいり)ネイジャス・ジャスティー(ねいじゃす・じゃすてぃー)
 4コース (西)ダイソウ トウ(だいそう・とう)
 5コース (西)オットー・ツェーンリック(おっとー・つぇーんりっく)ヘンリッタ・ツェーンリック(へんりった・つぇーんりっく)
 6コース (東)本郷 涼介(ほんごう・りょうすけ)クレア・ワイズマン(くれあ・わいずまん)
 7コース (東)赤羽 美央(あかばね・みお)
 8コース (西)夏野 夢見(なつの・ゆめみ)フォルテ・クロービス(ふぉるて・くろーびす)

 が並び、脇に立ったスターターが腕を上空に突きつける。直後、ピストルの音と共に選手達が走り出した。5メートル先に並べて置いてあるカードをそれぞれ拾う。カードには、ランダムに数字が振ってあった。
 カードを拾って迷いなく走り出したのは2組。イレブンと真菜華だ。エミールはやる気無さそうにマイペースに歩いている。観客席に特攻していく2人を、彼はトラックの上から見送った。
(何を借りてきても、まあいいですしね)
 借り物は真菜華に任せっぱなし、放ったらかしである。
「今こそ、パラミタミステリー調査班の推理能力を見せる時だ!」
 イレブンは、カードを握り締めて考える。スタジアムには20万人もいるのだ。1人1人に尋ねていては日が暮れてしまう。まずは誰が持っているのか推理する必要がある。
(借り物でグランドシナリオ、借り物とグラシナをつなげるとカリグラシナ……はっ!)
 そこで何かに気付き、彼は足を止めた。
「かりぐらしのアリエ……げふんげふん小人が持っているということか!」
 何と借り物の内容に関係しない推理か! しかも何て色々な意味で危ない推理か!
「早速小人探しだ!」
 きょろきょろとしながら小人を探す。
 まず、怪しいのはアシュレイ・ビジョルド(あしゅれい・びじょるど)だ。明らかにかりぐらし風の服装やポーズで葉っぱを背景にしているのを見たことがある。借り物を貸してもらえないかお願いしてみよう。
 さて、アシュレイは、どこにいるのか。
「そうだ、来る時に見かけたぞ。VIPルームの近くにいたな!」

「借り物競争……これなら安全そうね!」
「……どこが。『障害物』を忘れてないか? 障害物を……」
 機晶姫ファーシー・ラドレクト(ふぁーしー・らどれくと)の言葉に、ラス・リージュン(らす・りーじゅん)は呆れたような、それでいて関心の無さそうな声を返した。2人と、ラスのパートナーである10才程の外見をした少……幼女、ピノ・リージュンは西側応援席、チアガール達よりも10段程上に座っていた。右斜め下には、華やかなミニスカートが翻っている。
 障害物ではなく、むしろミニスカートに視線を送りつつ、ラスは呟く。
「このくそ暑いのによく観戦なんかする気になるよな……。おかげで朝っぱらから重労働させられるし……」
 普段車椅子で生活しているファーシーは、当日になって押しかけてきてこう言ったのだ。
『ろくりんピックの最終競技を観たいんだけど、ベンチだとこれ、他の人の迷惑になると思うのよね。運んでくれる?』
 と。いうことで、『これ』である車椅子を係員に預け、ここまでファーシーをおぶってきたわけである。
「あ! 真菜華ちゃんがこっちに来るよ!」
 ピノが下の方を指差した。その指先を辿ると、確かに西のユニフォーム姿の真菜華が登ってきていた。
(ブルマ……)
 ぼんやりとそれを眺めていると、目の前でブルマ――もとい、真菜華が立ち止まった。ピノの手を取る。
「ピノちゃん、借りるねっ!」
「え?」
 突然の申し出に驚くピノ。目をぱちくりとさせて、当然の質問をする。
「借り物に、あたしの名前が書いてあったの?」
「ううん? 知らないけど。そんなことどーでもいーじゃん! 一緒に行こうよ!」
 真菜華は、カードを開けてさえいなかった。
「またお前は……! 駄目だ駄目だ! あの障害物を見ろ! ローションだぞ!? ピノをローションまみれになんかさせられるか!」
 慌てて2人の手を引き離そうとするラス。周囲から、シスコン……? いやロリコンだなどという声が聞こえてくるが知ったこっちゃ無い。
「ちゃんと、普通に借り物探してゴールしろよ。失格になるぞ!」
「失格?」
 一瞬だけきょとんとすると、真菜華は言った。
「別にいいよー。ピノちゃんをカワイイカワイイできればそれで!」
 ピノを後ろから抱っこして密着する彼女に、ファーシーが聞く。
「ちなみにその中、何が入ってるの?」
「ん? えーとねー……」
「9」と書かれたカードを開ける。中から出てきたのは――

『環菜がデレてる写真』

「…………」
「…………」
「また、難易度高いねー」
「一応聞くけど、誰か持ってるー?」
 感想を漏らすピノに、何故か勝ち誇ったようにする真菜華。
「……持ってない……」
「んじゃ、ピノちゃん借りるねっ!」
「待て待て! どうしてそうなるんだ、それこそ関係ねー……! というか、何でお前西のユニフォーム着てるんだ? パラ実は東だろ?」
「ブルマの方が可愛いじゃん! 行くよ、ピノちゃん!」
「うん、面白そう!」
 しかし、ラスはぱしっ、とピノの腕を掴んで離さなかった。
「だ、め、だ!」
「ちょっ……離してよう!」

 ほぼ同時刻。
「アシュレイ! 借り物を貸してもらえないか?」
 イレブンが声を掛けると、アシュレイは振り返った。護衛としての警戒は解かずに問いかける。
「物は何なのです?」
「あ、そうだな、えーと……」
「11」と書かれたカードを開ける。中から出てきたのは――

『10才以下の幼女』

「…………」
「…………」
 先に口を開いたのは、アシュレイだった。
「私は10才以下ではありませんので……。もちろん、幼女でもありませんが。仮に幼女であってもここから離れる気はありません。申し訳ありませんが、他を当たってもらえますか?」
「な、なんと……! 借り暮らしが外れだったというのか……!」
 外見年齢的には3才ほど惜しい。
「しかし小人という点では外れとはいえない! 他に幼女は……」
 VIPルームから離れて観客席に戻る。そこで彼の目に入ったのは真菜華とピノの姿だった。
「あれは……!」
 早速方向転換して、イレブンはピノの所へ走った。
「な、何だ!?」
 近付いてくるイレブンに驚くラス。明らかにピノがターゲッティングされている。何故……
「正に『10才以下の幼女』!」
「…………!?」
 それを耳にした途端、ラスの意志は固まった。手を離す。
「真菜華、任せたぞ!」
「うん! 1位獲ろうね! ピノちゃん!」
「獲ろう獲ろう!」
 楽しそうに走り降りていく2人を見て、ファーシーが言う。
「……いいの?」
「……知らん男に連れられるよりは100倍マシだ」

「一歩遅かったか……! 他に10才以下の幼女は……!」
 イレブンは、東の応援席にいる飛鳥 豊美(あすかの・とよみ)を振り返る。だが惜しい。彼女も10才以下ではない。やはり外見年齢13歳だ。
「幼女……! 小人はどこだ!」
 そしてイレブンは、観客席の中から幼女を探して走り始めた。

 ダイソウ トウは急がず慌てず騒がず、冷静な顔で借り物のカードをひっくり返した。そこに書いてあったのは、

飛鳥 豊美(あすかの・とよみ)のパンツ』

 という一文だった。……て、おっと普通に話を進行してしまう所だった。悪の秘密結社ダークサイズの大総統、ダイソウ トウは西シャンバラチームに助っ人として呼ばれたのだ。しかし大して期待されていないような、扱いがどこかのメガネ並みなのは気のせいだろうか。
 西シャンバラユニフォームに軍帽のダイソウ トウ……ああいいやめんどくさい、ダイソウは、パンツという文字を見ても眉1つ動かさず観客席に歩いていった。適当な1人に声を掛ける。
「飛鳥豊美とは、誰だ?」
「あ、あそこの……東シャンバラチーム応援席でチアガールをやっている幼女の方です」
「幼女……ふむ、分かった」
 ダイソウは豊美ちゃんに近付いていった。歩いている。西シャンバラチームの応援席から東シャンバラチーム応援席までゆっくりと歩いている。
(走ろうよ…………!!!!!)
 観客の誰もが、一斉にツッコミを入れた。