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戦乱の絆 第二部 第四回

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戦乱の絆 第二部 第四回
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■アイリスの到着

そのころ、出撃準備を進める
アイリス・ブルーエアリアル(あいりす・ぶるーえありある)
高原 瀬蓮(たかはら・せれん)の元に、
マッシュ・ザ・ペトリファイアー(まっしゅ・ざぺとりふぁいあー)が会いに来ていた。
第七龍騎士団団員の立場を利用して、
アイリスのイコンについての情報を得るのが目的だった。
「すごいイコンだね。
俺にも操縦できる?
欠点とかないの?
量産しないの?」
わざと子どもっぽさを装って、マッシュが矢継ぎ早に質問する。
「答える必要はない」
冷たく突き放すアイリスに、マッシュが食い下がるようにして、
さりげなくイコンにふれる。
「そう言わずにさ」

マッシュの目的は、サイコメトリで、イコンの情報を得ることだったが。

その瞬間、マッシュの頭の中に、
人智を超えた、獣の叫びのような、記憶の奔流が流れ込んできた。
「ウアアアアアアアアッ!?」
「マッシュ!」
魄喰 迫(はくはみの・はく)が、倒れたパートナーに駆け寄る。
マッシュは一撃で瀕死の状態となっていた。
「そんな……ウソだろ?」
マッシュの実力を知る迫が、さすがに顔面蒼白となる。
このようなことをして、並の契約者なら、即死だっただろう。

「生半可な気持ちでそれに近づかない方がいいよ。
さあ、早く行くんだ」
アイリスが冷たく言い、迫にマッシュを連れて行かせた。

そこに、
クリストファー・モーガン(くりすとふぁー・もーがん)
クリスティー・モーガン(くりすてぃー・もーがん)
仮面で顔を隠した
トライブ・ロックスター(とらいぶ・ろっくすたー)と、
覆面をした千石 朱鷺(せんごく・とき)が、
駆け寄ってくる。

「アイリス……」
クリストファーが何か言いかけるが、アイリスは、
「僕よりもセレンを」
そう言って、パートナーを気遣った。
「安心しな。俺たちがエスコートしてやる。
美少女を守るのは男の務めだからな!」
トライブが、努めて明るく言う。
「こんな調子の人ですが、腕は確かですから、安心してください」
朱鷺も、優しく語りかける。
瀬蓮は、こわばっていた表情に少し笑みを浮かべた。
「ありがとう。
……アイリスのこと、お願い」
そんな瀬蓮の瞳を、クリスティーがじっと見つめる。
「どうしたの?」
「……ボク達の剣は薔薇の学舎に捧げたものだ。
けど今このひとときは君達に捧げよう、友としてね」
「ありがとう」
瀬蓮は、集まった4人の顔を交互に見渡して、一人一人の手を取った。
アイリスも、少し緊張をほぐしたようだった。
クリストファーは安堵しつつ、
道中もリラックスしたムードで行けるように心がけようと思うのだった。



クリストファーやトライブの気遣いのおかげで、
瀬蓮と、ときおり笑いも交えつつ、
アイリスたちは東京湾へと到着する。

「来たな! ゾディアックを止めるまで、悪いが近づかせるわけにはいかない!」
柊 真司(ひいらぎ・しんじ)
ヴェルリア・アルカトル(う゛ぇるりあ・あるかとる)
イクスシュラウドが、
機晶ビームキャノンで牽制しつつ、接近し、
ビームサーベルで斬りかかろうとするが。

クリストファーとクリスティーの
アルバ
トライブと朱鷺の
ブラッドエッジが、それを遮る。
「邪魔をするな、どけ!」
「それはこっちの台詞だ!
女の子に攻撃するような野暮な奴に、アイリスたちは指一本触れさせねえよ!」
「ふざけるな、自分が何をしているかわかってるのか!?」
真司とトライブが押し問答する。
真司はエースパイロットと言ってよい実力だが、
2機のイコンを同時に相手するのはやはり分が悪い。

一方、
天司 御空(あまつかさ・みそら)
白滝 奏音(しらたき・かのん)の搭乗する
コームラント・カスタムが、
その隙に、アイリスのイコンの獣の頭部の部分に、大形ビームキャノンを発射した。
しかし、ビームは、何度、撃っても、
アイリスのイコンに傷ひとつつけることもできなかった。

アイリスのイコンが、ゾディアックに近づき、組みつこうとしたのを狙い、
御空は決意する。
「……ごめん、コームラント。
それでも俺は、あの子の居るこの世界が、大切なんだ」
「……脱出が1秒遅れたら死にますよ。分かってますね」
奏音が、御空の決意の内容を察して言う。

御空は、コームラントを全速前進させ、
上方からアイリスのイコンに向かって落下させた。
「来ちゃダメ!」
瀬蓮が悲鳴を上げるが。

御空のコームラントは、アイリス機に迫った瞬間、
撃墜され、大破して太平洋に落下した。

「自分の力を過信する者は足元をすくわれるよ」
自嘲気味にアイリスが言った。

「アイリスおねえちゃん!」
ヴァーナー・ヴォネガット(う゛ぁーなー・う゛ぉねがっと)
セツカ・グラフトン(せつか・ぐらふとん)
ヴァーナーロボが、
シャンバラの学生たちとアイリスたちの間に割って入った。
「ゾディアックとたたかわなくても、
みんなで祈ったら止まってくれるです!
それにゾディアックが世界をこわしちゃうのを止めにきてくれたなら、
今でもやっぱりやさしいせんぱいたちです!
いっしょに百合園に帰りましょうです!」
アイリスは、ゾディアックの動きが止まりつつあるのを確認して、
ヴァーナーに言う。
「なるほど、君が言っていることは確かなようだ」
「アイリスおねえちゃん、瀬蓮おねえちゃん!
戻ってきてくれるです!?」
「そうはいかないが……。
これから、僕はシャンバラの作戦に協力する。
まずは、僕と一緒に来た2機のイコンへの攻撃をやめてくれ。
そして、このままでは、ゾディアックは落下してしまうだろう。
空中ドックで一緒に支えてほしい」
「わかったです!
アイリスおねえちゃんのイコンと、空中ドックで、
ゾディアックをハグして支えるです!
みんなで、ゾディアックが世界をこわすのを止めて、
アイシャおねえちゃんたちを助けるです!」
ヴァーナーは、東シャンバラ・ロイヤルガードでもある。
そのヴァーナーがアイリスの説得に成功したこともあり、
アイリスとシャンバラは、一時的に協力することとなった。
「ありがとう、ヴァーナー。
ありがとう、みんな!」
瀬蓮は、被害を最小限にできたことに安堵し、
ヴァーナーや、クリストファー、トライブたち、
そして、協力してくれるシャンバラの学生たちに礼を言った。

すでに、想いの力により、ゾディアックは停止しつつある。
アイリスのイコンと、空中ドックが、
海に沈んでいこうとするゾディアックを支えたのだった。