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創世の絆第二部 最終回

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創世の絆第二部 最終回
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 在ったのは暗闇だった。

 暗闇の中を光が飛び交っている。
『あれは……』
『あれは古い命の光だよ』
 大世界樹マンダーラは、そう言った。
『命の光? “王”って、結局なんなんだい?』
 瑠樹達は上も下も無い暗闇を、ただ「落ちている」という良くわからない状況の中で、相変わらずのんびりとしていた。
 マンダーラは、この空間でもセラフィムギフトの姿を取っており、その姿を契約者たちは認識することが出来ていたが、では自分たちがどんな姿なのかというのは分からなかった。
 仲間たちの姿も見えない。ただ、その存在は常に感じることが出来ていた。
『気がかりなのは、サラさん……ファーストクイーン。
 “王”を制圧したところで、彼女に重篤な被害が出ないのか知りたいねぇ。
 今、ファーストクイーンとシャクティ因子はインテグラルの制御のために使われてるのだとして、
 あのわんこ(ゲルバッキー)がインテグラルを統率していることを考えると、ファーストクイーンは今、わんこの支配下にある……。
 ……何とか助ける術はないのかねぇ?』
『それは、状況次第だろうね。
 しかし、ニビルの支配から引き剥がすという点については比較的容易だと言っておこう。
 彼女と“王”、この2つはニビルにとって、“滅びを望むもの”に次ぐ大きなトラウマと言えるものだろうからね。
 ニビルは、これを重要と捉えながらも、無意識に、なるべく深く触れないようにしてしまっている』
『ファーストクイーンさんを助けるチャンスはあるってことですか?』
 マティエが心配そうに問いかける。
『さっきも言ったけれど、それは、状況次第だ。
 ――大陸の滅びは免れないが、世界が大きな歪みを抱えたまま滅びを迎えるわけにはいかない。
 そのためには……』

 マンダーラはそこで言い改めるように言葉を切って、少しの間を挟んでから言った。

『……彼女の元へたどり着くには時間が掛かりそうだ。
 暇つぶしに、少し話をしておこうか。
 君たちがそれぞれ抱える疑問への答えにもなると良いのだけど』

 そして、マンダーラは誰の同意を得る間もなく、とうとうと語り出した。
 周囲の暗闇には相変わらず、不思議な光が幾つも流れていた。

『“王”は元々インテグラルを操作する事を目的に造られたわけじゃない。
 その原点は古代ニルヴァーナまで遡る。

 気が遠くなるほどの昔にあった古代ニルヴァーナ文明……
 それは機晶技術による文明が起こる前の文明だ。
 彼らは自らの体に秘められた結晶の力によって、様々な術を用いていた。

 その秘術は限定された条件であれば、時と場所をも超越するに至っていた。
 その技は、僕――大世界樹と繋がることをも可能とし始める。

 やがて、彼らはナラカに浮かぶ大陸の滅びと創世の運命を知る。

 大陸を支える“原初の力”の寿命が迫り、彼らは、“原初の力”の研究を進めた。
 その際、“原初の力”とアクセスするために造られたのが、この王の原型だった。

 その内、彼らは、大陸の滅びと創世のサイクルが何者かに意図されたものだと、感じ始める。
 そして、原初の力を構成していた『シャクティ因子』に辿り着いた。
 これで滅びは免れるかに思われた。

 しかし、当時、ニルヴァーナ大陸にはシャクティ因子に耐え得る存在は居なかった。
 そこで、彼らは大陸の外にその存在を求めた。

 そうして、探し出し、選ばれたのがパラミタ大陸に住まう巨人族、
 イアペトスとアトラスだった。

 イアペトスとアトラスはシャクティ因子によって、
 それぞれニルヴァーナ大陸とパラミタ大陸を支えるようになった。

 その時より、2つの大陸、ひいてはこのナラカの続く世界は、
 “創造主”たちが定めた滅びと創世の安定を離れ、導べの無い運命を歩むことになる。


 だけど……その事によって、この世界は歪み始めた。


 地球側の世界との繋がりが生じ始めたのもまた、歪みの一つ。
 なにより大きいのは歪みは“滅びを望むもの”を産み出したということだ』

 気づけば周囲を飛び交う光が見えなくなっていて、
 代わりに何か途方も無く巨大なものの気配に包まれていた。
 暗闇なのは変わりないが。

 その先に……

『やあ、また泣いているのかい?』

 造り物のファーストクイーンは居た。

『まあいい。さっさと接続を切らせてもらうよ。
 ゾディアック・ゼロ内部に張ったツルが突破される前に』

 マンダーラは言って、ファーストクイーンに絡みついていた無数の糸を切り裂いた。

『これで、“王”の制圧は完了だ』
『インテグラルの脅威は完全に去ったということなんだな?』

 エースが問いかける。

『少なくとも、ニビルの支配下に置かれていたインテグラルはね』
『全てじゃ、ないのか?』
『元々インテグラルを設計したニビルの癖なのかは分からないが、彼はいつも2つのパターンのものを造るみたいだね。
 自身の完全な制御下におく剣の花嫁と、完全な制御下におかず傾向のみを設定した自律型の剣の花嫁。
 完全制御のインテグラルと、自律性を備えたインテグラルクイーン。
 おそらく、僕らが今こうしているような事態や、何かのイレギュラーで自身が先に再起不能になった場合に備えてのことなのだろうけど』
『……ゲルバッキー(ニビル)に造られていた花音・アームルートが、ゲルバッキーに牙を剥いたように』
『そう――だから、話を戻すと、今回の制圧で全てのインテグラルやイレイザーが活動を止めたとは考えにくい。
 自律型のそれが、“滅びを望むもの”に与えられた「文明を破壊しろ」という命令を実行するために現れる可能性は十分にある、というわけだ』