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リアクション
光の少女との邂逅 3
皆がカケラを巡って色々と議論する中で一人、せっせとティータイムの準備をしている皆川 陽(みなかわ・よう)。テディ・アルタヴィスタ(てでぃ・あるたう゛ぃすた)もその手伝いをしている。
「よし、出来たー。さあカケラさん、お茶でもいかが?」
「まずはこの緊迫した空気で疲れた体をリラックスさせるのが先決さ」
陽とテディがお茶を一杯差し出す。それを受け取ったカケラが音も立てず、ゆっくりとお茶を飲み込んでいく。
『ぷはっ』
「ぷはっ、じゃねぇ! 俺の質問に答えやがれ!」
「まあまあ。ここは紳士的に行きましょうよ。じゃないと聞けることも聞けないですよ?」
この何とも言えない空気に耐えかねた竜造が質問の答えを急かすが、陽がそれを落ち着かせる。
一方テディは他の契約者にお茶を提供していた。
「……茶請けに、どうだ」
お茶をちびちびと飲むカケラの前に呀 雷號(が・らいごう)が立つと、持っていたショコラティエのチョコを差し出す。
『あ、ありがとうございます。……この感じ、とても懐かしい』
淹れてもらったお茶を飲み、チョコを食べ、皆と過ごす時。それを彼女は「懐かしい」と呟いた。
「リラックスしているところ悪いのだけど、尋ねさせて欲しい。……君の本当の役割は、なに?」
少女が落ち着いたのを見た鬼院 尋人(きいん・ひろと)がカケラにそう尋ねる。
『私の役割は……“終焉を防ぐための方法を女王へ伝えること”』
「女王、というのは?」
『シャンバラの女王……ネフェルティティ様』
カケラははっきりとそう答えた。
「ウゲンについては、何か知ってる?」
『ウゲン――……ウゲンは、“ここ”に』
カケラがそう答えるが、契約者たちは半信半疑だった。
軽く周囲を確認する面々の中で、尋人は、カケラをじっと見つめていた。
(……ウゲンの気配を感じる。ひどく、脆くて危うい感じだけど、確かに、俺はウゲンがここにいるように感じている)
と――。
「……カケラのやりたいことは、ネフェルティティ様に会いたい、ってことでいいのよね?」
今まで黙して話を聞くことに徹していた綾原 さゆみ(あやはら・さゆみ)がカケラにそう尋ねる。
その問いにカケラは頷いた。
「ですがどうやってこの世界へ?」
さゆみに続いてアデリーヌ・シャントルイユ(あでりーぬ・しゃんとるいゆ)が問いかけ、更に続ける。
「もしかして、あなたは光条世界から、ここに来た……?」
『分からない……でも、確かに誰かが手伝ってくれたはず。世界の行く末に、“創造主”とは違う方向を見る誰かが』
「誰かって―――」
アデリーヌが詳細を聞こうとした時、坑道内が大きく振動した。
耳を澄ませば遠くの方で爆発音が聞こえる。
恐らく外で戦っているイコン部隊と敵イコンとの交戦が激化しているのだろう。
これ以上ここで話し続けるのは得策ではない。何せここは廃坑道なのだ、いつ落盤してもおかしくはない。
「続きは後にしましょう。今はここから脱出することを考えましょう」
さゆみの言葉にここに契約者たちのほとんどがそれに同意する。
と。
「ヘイ、そこの少女! 脚、速そうね!」
茅ヶ崎 清音(ちがさき・きよね)のパートナーであるキャンディス・ブルーバーグ(きゃんでぃす・ぶるーばーぐ)がひょこひょこ歩きながらカケラに近づいていく。
そして高圧縮フードバー・カロリーフレンドを手渡し、おまけに空飛ぶ箒も貸し与えようとする。
「これでアトラスの傷跡へ行って、聖火を灯してきてヨ」
『え、あの……』
「それじゃよろしくネ!」
強引にそう言い残してキャンディスはまたひょこひょこと歩き去っていってしまった。
『えっと、私は、どうすれば……』
「気にしなくていいと思うわよ。それに空を飛んでも坑道内じゃ移動が抑制されるし、使わない方が賢明ね」
さゆみの言葉にほっと胸を撫で下ろしつつ、そっと箒を床に置くカケラ。
そこへ他の契約者たち、更に校長たちが合流する。
事の経緯を聞き、今は脱出が先決ということに同意した校長たちは、契約者たちのスキルを活用して複数のルートに別れて脱出することに決めた。
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