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劇場版 月神のヒュムーン ~裁きの星光~

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劇場版 月神のヒュムーン ~裁きの星光~

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・Chapter18


「閉鎖区画への道か。かつて存在していたというのなら、その痕跡は必ずあるはずだ」
 軍事施設地下一階で、ダリル・ガイザック(だりる・がいざっく)が地下二階へ通じる道を捜索していた。
「完全に発射装置とはシステムが別系統になってるみたいね」
「ああ。せいぜいハックできたのは、今も使われているこの施設のシステムだけだ」
 ルカルカ・ルー(るかるか・るー)は施設の見取り図を見ながら、ダリルが洗い出したポイントへと向かった。
 ここまで、必ずしも順調に来れたわけではない。高い戦闘力を持っている彼女たちでさえ、地下一階にいる特撮ヒーローの着ぐるみたちとまともに戦うことは避けている。一体や二体ならまだしも、五人組と真正面からぶつかりあって時間を食うのは、一刻を争うこの場においては致命的だからだ。
 ダリルが隔壁を操作し、敵を足止めして時間を稼ぐ。もちろん、それだけでは味方が混乱する可能性がある。そのため、操作後はすぐに制圧班に連絡を行い、自分たちの進行ルートを伝える。
「何とか、足止めはできたようだ」
「だが、どちらにしても急がんとマズイな。あの五色の連中、合体技みたいなの使おうとしてたからな」
 カルキノス・シュトロエンデ(かるきのす・しゅとろえんで)夏侯 淵(かこう・えん)が、後方を確認しながら前の二人に続く。
「……しかし、あちらが破壊した分はどういう扱いになるのだ?」
「隔壁については、最小限の範囲よ。大事なのは、『何があっても素材サンプルは傷つけない』ことだから」
 屋内で戦闘が起こる以上、擦り傷一つ付けずに施設を奪還するというのは無茶な話だ。こちらに落ち度がなくとも、敵が破壊工作に出る可能性だってあるのだから。
 もっとも、それを防いでこそ契約者の有用性を示せるのかもしれないが。それでもこのフロアの敵の強さを考慮するなら、背に腹は代えられない。
「それにしても……妙だ」
「どうしたの、ダリル?」
「あまりにも、簡単過ぎた。敵は通信網を一切使用していない。外にいたものを含めれば、相当な数がいるにも関わらず、だ」
 不自然な点は多い。着ぐるみ軍団が施設内を徘徊しており、裏口を固めて正面から入らざるを得ない状態にしていた。にも関わらず、電子・通信系統には何の対策もしていない。そして消えてしまった、この施設にいたはずの者たち。死体発見の報告は一件もない。
「この先に罠があるかもしれない……ってことね」
「そうだ。……見えた、あれだ」
 地下二階への階段を彼女たちは見つけた。すでに、誰かが通った形跡がある。元々塞いであったことが見て取れるが、先に行った仲間がいるのか、それとも敵が誘っているのか……。
(ルカたちが先頭だから、前者ではなさそうね)
 だが、どちらにしても進むしかない。
「ルカ、上だ!」
 天井から落下してくる緑色を、ルカルカは回避した。
 身の丈がルカルカの倍以上はあるであろう、巨人だ。それが、階段を塞ぐようにして彼女たちの前に立つ。
 緑色の巨人が、後方へ跳躍した。彼のいた場所に立っているのは、榊 朝斗(さかき・あさと)である。
「ここは僕たちが食い止める。みんなは早く、下へ!」
 おそらく、今いるメンバー――ルカルカたち四人だけでなく、一緒にここまで来た七枷 陣(ななかせ・じん)月谷 要(つきたに・かなめ)と彼らのパートナーたちが一斉にかかれば倒せる相手ではあるだろう。だが、一瞬で終わるような相手ではない。
「分かった……ここは任せたわよ」
 ここで足止めを食らうわけにはいかない。
「……邪魔は、させないよ」
 敵に向かっていく朝斗の背中を確認し、ルカルカたちは地下二階へと降りて行った。