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ホワイトバレンタイン

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「きゃっ」
 いきなりイルミネーションが消え、リース・アルフィン(りーす・あるふぃん)が小さな悲鳴を上げた。
 しかし、肩を持っていた九条 風天(くじょう・ふうてん)が少し強めに支えてくれたので、すぐに恐怖は消えた。
「……風天さん」
 そうだった、この人はずっとそばにいて、こうやって自分をフォローしたりしてくれていた。
 だから……。
 リースは心を奮い立たせて、唇を開く。
「私は、ずっと風天さんのことが好きでした。告白してくれて、本当にすごいうれしかったです。これからずっとずっと貴方のそばにいたいです。……本当に私でいいのかなって不安に思ったりもしますけど……。それでも……私は……風天さんが世界で一番大好きです。これからもよろしくお願いします」
 想いのすべてを言い切ったリースは緊張が解け、涙があふれた。
 そのリースを、風天が抱きしめた。
「ボクはボクを想ってくれるリースさんが大好きですから、ずっとずっと一緒にいましょう」
 風天のその言葉に、あふれた涙が、ぽろぽろと零れる。
「泣いてしまうと、綺麗な星空が見えなくなってしまいますよ。ほら、こんなに綺麗……」
 少し力を緩め、風天がリースに空を見せる。
 イルミネーションが消えて、真っ暗になった公園からは、星空が良く見えた。
「本当……綺麗…」
 リースは星空を見上げ、微笑を浮かべる。
「笑っている方が……やっぱり素敵です」
 思わず風天の口からそんな言葉が漏れる。
「え……」
 恥ずかしくなりながら、それでもリースは暗闇に勇気をもらい、風天にチョコレートを手渡した。
「風天さん、これ……」
 バレンタインチョコを渡し、そして……リースは想いを込めたキスを贈った。
「…………」
 驚きながらも、風天はそれを受け止め、瞳を閉じる。
(このまま時間が止まっちゃえばいいのにな……)
 口付けを交わしながら、リースはずっと帰る時間が来なければいいのに……と思っていた。
 それでも、時間は無慈悲に流れてしまう。
 風天はリースを送り、寂しがるリースに優しく言った。
「また明日、二人で歩く道は始まったばかりなのですから」


「えっ……」
 急に真っ暗になった公園に驚き、白波 理沙(しらなみ・りさ)はふらっとした。
「おっと……」
 リュース・ティアーレ(りゅーす・てぃあーれ)がそれを後ろから抱き支える。
「……リュース」
「大丈夫、そばにいるよ」
 突然のハプニングで抱きしめる形になったリュースだが、そのまま暗い公園で理沙に想いを伝えることにした。
「理沙を独りにしないし、もう泣かせたくないよ。愛しているから、大切にしたい、誰よりも近くにいたい」
「……リュース」
「オレ、理沙のこと愛してる。独占欲ある方だし、余裕ないけど、大切にする。今日も明日も理沙の隣を歩く男はオレでありたい」
「うん……」
 最初に公園に遊びに行く前から、実はリュースのことが気になっていた。
 気になってはいたのだけど、他にも知り合いがいそうだし……と遠慮していて、結局、理沙は動けなかった。
 だけど、リュースの方から声をかけてくれて、理沙はとてもうれしかった。
 あの頃からまだ1年も過ぎてないのに、こうして付き合うようになるなんて……と不思議な気持ちに包まれながら、理沙はリュースにお礼を言った。
「ありがとう……私を選んでくれて。好きだよ、リュース」
 これからもリュースが嫌だと思ってない限りは彼を愛し、ずっと傍にいたい。
 理沙はそう思っていたのだ。
「そうだ、作ってきたんだけど……」
 渡すタイミングがなかなか無かったチョコレートを理沙がリュースに渡す。
 思わず開けて食べたい衝動を抑え、リュースはまずお礼を言った。
 うれしそうなリュースを見て、理沙の口から思わず想いが零れた。
「リュースが……大好き」
「え……?」
「チョコもだけど……私ごと受け取ってください」
 自分の愛を受け止めてもらえますようにと言う願いを込めて、理沙は好きという気持ちを伝えたのだった。