リアクション
「こちらで封印を解くのはこれが最後になるんだろうな」 〇 〇 〇 雑草が生い茂った広場のような場所に、その遺跡は存在していた。 地上部分は随分と崩れてしまっており、荒らされた形跡もある。 周囲に警戒をしながら、一行は敷地に足を踏み入れて、カルロの指示の下、奥へと進んでいく。 「そこから、地下に進んでください。足元には十分注意してくださいね」 カルロの言葉に返事をして、明日香、野々の順で階段を下りる。 清掃などはされていないこともあり、地下には水が溜まっており害虫も沢山見受けられた。 (そ、掃除してしまいたい……) つい、そんなことを思う野々だったが、情報を得るために今は汚れも害虫も見えなかったこととし、明日香の後に続いていく。 明日香は超感覚、殺気看破で警戒をしながら、ゆっくりと足を進めて、カルロが指示をする部屋へと入る。 重いドアを開けた先は――特に何もない部屋だ。 「この真下あたりですね……」 「もっと下の階に続く階段がどこかにあるのでしょうか」 カルロ、鈴子、そしてマリル、芳樹達も部屋へと入って来る。 アユナと日奈々達は地上で残りのメンバー達と待っているはずだ。 「いえ、壁を通過できる魔術だと思います」 言いながら、マリルは芳樹と探して、ぼろぼろの絨毯の下にいつもの魔法陣を見つけ出す。 「盟約の時来たれり――解」 キーワードを発っすると、魔法陣が一瞬光を放つ。 「取ってくるわね」 羽根を持っているマリルが、そのまま下へと降りていく。 「来たみたいねぇ〜。正当防衛だもの、仕方ないわよねぇ」 リナリエッタが黒薔薇の銃を構える。 バイクがこちらに走りこんでくる。……パラ実生の暴走族に見える。 「お宝こっちに渡してもらうぜ、ヒャッハー!」 「帰り道、開けてもらわなきゃね!」 トレジャーセンスで辺りを探っていたレキが飛び出し、突っ込んできた男にシャープシューターで狙いを定め、タイヤを打ち抜く。 「威勢のいい女だ、ヒャッハー!」 次々に武器を持った男達が遺跡の中に突入する。 組織の者……というより、この仕事の為に組織に雇われた者達のようだった。 「降参じゃ、お宝はこっちじゃ」 遺跡の影から帽子が覗いている。 「ヒャッハー! 大人しく出しやがれ〜!」 バイクを降りて男が近づいたことを確認すると、帽子の主、ミアは氷術を放って男の足を凍らせる。 「捕まえる必要はないかもね」 皆が付近にいないことを確認し、レキはクロスファイアを放つ。 男達が「ぎゃっ」と声を上げた後、体の火を消していく。 「可愛い顔して、恐ろしい術使うじゃねぇか!」 形相を変えて、男達はバイクを捨て武器を手に襲ってきた。 「何が目当てだ!」 剣を手に、芳樹が地下から飛び出す。 「すげぇお宝が眠ってるんだろ? さっさと出しな!」 男が大剣を芳樹に叩きつけてくる。芳樹は翼の剣で応戦し、爆炎波を放つ。 「ぐぎゃっ」 男は再び体を焼かれて仲間の下へ敗走する。 「手加減はしないわよっ!」 アメリアも轟雷閃を放ち、迫り来る男を退けた。 「大した数ではないですじゃ!」 敵の数を確認した後、玉兎は地下に向って大声を上げる。 地下入り口付近に待機していたアユナと日奈々、千百合が玉兎の後ろから外へ顔を出す。 「……渡しま、せん……っ」 日奈々は奈落の鉄鎖を迫り来る者に放った。 「キミ達には必要のないものだよ!」 千百合は動きの鈍った敵にランスバレストを打ち込む。 それから、ディフェンスシフトで皆を守っていく。 鈴子、封印の玉を手にしたマリル達も地上へと戻ってくる。 「大丈夫、これくらいの人数、全然大したことないよ」 「そうね〜」 ミルミとアルコリアは少し離れた柱の影に一緒に隠れていた。 「どうする!?」 シーマが応戦しながら鈴子に問いかける。 「いせきのかべもパシャ。ちかもパシャ。ゴツゴツのおじさんたちもパシャ」 眞綾はこんな時でもマイペースで写真を撮っていた。 初めて取った写真の中の、とっておきの一枚を、メッセージを添えてミルミに贈るつもりだった。 「離れるでないぞ。……しかし、毎度このようなことになるとは、嘆かわしいことじゃのう」 そんな眞綾を背に庇いながら、ランゴバルトはバニッシュを敵に放った。 「ヴァイシャリー軍に連絡をしました。バイクを狙って移動手段を無くして下さい。攻撃は最小限としてあまり大きな怪我を与えないようにしてください」 甘いなーと思うも、シーマや一行は従うことにする。 神楽崎優子なら死なない程度に打ちのめせくらいのことは言いそうだ。 「これを見ろ」 シーマはメモリープロジェクターで、人物を投影し、敵を軽く惑わせる。 「白百合団員と協力者の方々は退路を確保してください。撤収します。百合園生はこちらに集まってください」 「はい」 その間にアユナや日奈々達は鈴子の方へと集まる。 続いてレキが銃を撃って道を作ると、出来た道に向って走っていく。 「眠らせるために撃ってるのよぉ」 そう言いながら、リナリエッタは鈴子の傍につけて、黒薔薇の銃で敵を撃っていく。 「マスター、轟雷閃、打ちます……」 「お願いねぇ」 そして、こちと共に壁を破壊して敵の足を止める。鈴子の指示通り敵をなるべく傷つけない方法をとる。 「あ……っ」 千百合が小さく悲鳴を上げた。 腕から血を流している。……狙撃されたらしい。 「千百合ちゃん……っ」 即座に日奈々がヒールをかけて癒す。 「パラ実生は陽動!?」 言いながら、狙撃のあった方向にレキが銃を撃ち込んでいく。 「通さねぇぜ! 宝はおいていきな!」 足が止まった一行の前をパラ実生達がふさいでいく。 「突破しますぅ」 「のわ!?」 闇術で敵の視界を閉ざした後、明日香は幻槍モノケロスで足を突いた。 先陣を切って、道を開いていく。 「眠っていて下さいねー」 野々は子守歌を歌い、敵を眠りへと誘っていく。 「早く、お2人の後に続いてください」 鈴子が百合園生達に指示を出す。 「あっ」 「人質でもとるかー。ヒャッハー!」 柱の影から現れた男がアユナの方に迫った。 ……と、その時。 「アユナさん伏せて……!」 聞きなれた声に、アユナは振り向きながら、指示通りに伏せた。 炎が通過をして、前を塞ぐ男の服を燃やしていく。 「怪盗マジカルエミリー、かわいい女の子を守るため只今参上っ♪」 続いて、明るい声が響いたかと思うと、雷術が男達に飛んだ。 「繭ちゃん……エミリアちゃん……」 「アユナさん……ぁあはははは……わ、私は稲葉繭ではなく、ミラクルコクーンですっ!」 仮面を被った少女が、耳まで真っ赤に染めて言う。 声もその仮面もよく知っている。アユナの大切な友達だ。 「学院に、帰りましょう」 ミラクルコーンが手を伸ばす。 「うん」 アユナは今日始めてきちんと笑みを浮かべた。そしてその手をとって、皆の後に続き外へと駆け抜けていくのだった。 |
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