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嘆きの邂逅~闇組織編~(第5回/全6回)

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嘆きの邂逅~闇組織編~(第5回/全6回)

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 ホールの方向から聞こえた怒鳴り声に、竹芝 千佳(たけしば・ちか)は心配になって喫茶店を飛び出した。
 でも、圭一が分校生を宥めている姿を見て、ほっとし自分は喫茶店の中に戻っていく。
 喫茶店の中にも、不機嫌そうな分校生の姿がちらほらとあり、何かきっかけがあれば喧嘩が起きてもおかしくはない状態だった。
 ストレスが溜まっているようなのだけれど、千佳にはどうすることもできなくて。
(出来ることなら皆仲良くしたいけれど、ここのところ、なんか刺々しい人もいて怖いな)
 千佳は不安になりながら、パックのジュースをグラスに注いでいく。
(せっかくバレンタインの時に百合園の人たちとも仲良くしたり、一緒に分校の校舎を作ってお勉強をしたりしていたのに)
 どうしてこんな状態になってしまったのだろうと、悲しく思いながら千佳はトレーにグラスを乗せて、客席の方に向う。
(皆、元のようにならないかな)
 そう思いながら、ジュースを配ると、分校生達はだるそうに受け取っていくのだった。

「しかし、本当にこの分校の立場は危ういな」
 見回りをしながら、フォルクスがそう呟いた。
「確かにな……」
 が周りを見回して、息をついた。
 一見のどかな田畑が広がっているだけの場所だけれど。
 今はその田畑に農家の人の姿はない。
 分校生達も様々な不平不満を漏らしており、揉め事も毎日のように起きているようだ。
 とはいえ、今のところ暴力的な喧嘩は比較的少ないようなのだが。
「性質の違う集団同士が交流しようというのだから、無理もないが……まぁ今の状況が良いとは言えないにしても、分校の存在自体は互いのことを考える場として有意義ではある」
「そうかなあ。良くわかんないけど、細かいことは気にしない。それでいいじゃない」
 フォルクスの言葉にそう答えたのは、農家の四女であるシアルだ。
 2人は彼女と一緒に、異変がないかどうか近隣の農地も含めて回っていた。
「ま、それがパラ実なんだろうな。……っと野菜泥棒!?」
 樹は野菜を引っこ抜いていこうとする見知らぬ少年を見つけて「こらー!」と声を上げて駆けていく。
 人数が少なくて管理しきれていないことから、泥棒も時々現れている。
 ただ、大きな犯罪行為は今のところなく、襲撃の気配もなかった。

 色々な思惑と、感情が渦巻く中。
「ここでごちゃごちゃ言ってたってらちがあかねえだろ。神楽崎分校の力見せてもらおうじゃねえか。ちょうどいい敵もいるし、キメラ倒そうぜ! 話はそれからでもいいだろ?」
 イリヤ分校から早河綾の見舞いに行く途中に立ち寄った泉 椿(いずみ・つばき)が、神楽崎分校生に活を入れる。
「けと総長いねぇしなー」
 ロザリィヌの話や、特にやりたくもない仕事の連続で、元気をなくしている者が多かった。
「誰かの所為にしてんじゃねぇよ、暴れればスカッとするぜ!」
「そうかもしんねーけどよ」
 こうやる気がないのは、率いる人物がいないからという理由がとても大きい。
 ロザリィヌが言うように、多くは神楽崎優子の名についてきたパラ実生なのだから。
「オレが今日から分校長代理だー!」
 そんな中。突如大きな声が響き渡る。
 声の主は――元番長の吉永 竜司(よしなが・りゅうじ)だった。
「ドコ行ってたんだよ!」
「帰り待ってたぜー!」
「今更おせぇよ!!」
 帰還を喜ぶ声と共に、不満の声も上がっていた。
 そんな分校生達の言葉を受け止めつつ、竜司は臨時に分校長代理を務めることになったことを分校生達に話して聞かせる。
「分校長からそう連絡が届いた。女に頼られたら男は応えてやるもんだからな!」
 届いたのは恋文だったのだが(竜司妄想)、皆の分校長に惚れられてしまったことなど(竜司妄想)、この場で言っては指揮が下がる可能性があるため、神楽崎優子に惚れられた(竜司妄想)ことと同様、男らしく口には出さないでおく。
「竜司!」
 生徒会長の魅世瑠も外へ飛び出してくる。
 そして、軽く現在の状況を聞いた竜司はこう吠えるのだった。
「てめぇらの就職先ぐらい、元番長で現臨時分校長代理の吉永竜司が全員分面倒見てやらぁ!」
 その言葉に、分校生達から歓声や、野次や、笑い声が響いてくる。
「で、キメラがヴァイシャリーに向ってるって話じゃねぇか! か弱い百合園生が討伐に向ってるらしいぜ」
 竜司の言葉に、分校生達が顔を見合わせる。
 分かってはいるが、積極的に討伐する気にはなれていなかった。
「ヴァイシャリーがキメラ野郎に潰されるって事は可愛い女どもがいなくなるって事だぞ」
 そう言い、竜司はバイクのエンジンをかけた。
「行くぞてめぇら! ヴァイシャリーの女どもがオレたちを待ってるぜ!」
「付き合うぜ、竜司さん!」
「おおー!」
「しゃーねーな」
「暇つぶしにやってやるぜ!」
「よし、後ろはあたしらに任せときな! あたしらの分まで戦ってきてくれよ!」
 次々に武器を手にする分校生達に、魅世瑠はそう声をかけて送り出していく。
 久しぶりに聞けた威勢のいい声に、魅世瑠の顔にも笑顔が浮かぶ。
 パートナーからの連絡によると、今のところ分校周辺に下りてくるキメラはいないようだ。
「あたしも仕事仕事!」
 討伐は竜司達に任せて、自分は雑務に戻っていく。

「パラ実生も付き合ってみれば気のいいやつらだし」
 アクィラ・グラッツィアーニ(あくぃら・ぐらっつぃあーに)がサンタのトナカイに乗り込んでいく。
「そうですね。パラ実生も戦場でまみえなければいい人たちなんですよねぇ……」
 キメラ討伐に意欲を出しだしたパラ実生を見ながら、クリスティーナ・カンパニーレ(くりすてぃーな・かんぱにーれ)もそう言うのだった。
「うん。で、ヴァイシャリーには百合園があるし、守ってやらなきゃな!」
 アクィラはカッコよく言い放つが、顔はにへらとにやけている。下心見え見えだ。
「美人三人に囲まれてるのになににやけてんだか」
 すちゃっとアカリ・ゴッテスキュステ(あかり・ごってすきゅすて)は、パワードレーザーを装備する。
「アカリさんが手を汚すことはないわ。私がこの場で……」
 パオラ・ロッタ(ぱおら・ろった)も最初の敵を撃つべく、機関銃を用意していく。
「ちょ、ちょっと待て。俺なんか変なこと言ったか!? 銃を向けるな銃をー!」
 アクィラは慌てながら飛び立つ。
「はわわわわっ」
 クリスティーナは突然の一触即発ムードに慌てだす。
「声には出していないわね。心の声は顔に表れてたけど」
「ふふ、ジョークだってば」
 アカリはため息をつきながら、パオラは微笑みを浮かべながらサンタのトナカイでアクィラの後を追っていく。
「同士討ちはダメですよ……」
 クリスティナはほっとしながら、皆の後に続いた。
 竜司を中心にあってないような作戦が組まれ、戦闘は始まろうとしていた。
「空中戦であーる!」
 空中に集まった分校生と協力者の指揮を任されたのは青 野武(せい・やぶ)だ。全員サンタのトナカイに乗っている。
「ここは鬨の声は「ヒャッハー!」がふさわしい場面ですか!」
 シラノ・ド・ベルジュラック(しらの・どべるじゅらっく)が迫り来るキメラを目に、そう言った。野武は「そうであーる」と答える。
「こんなにポッドつけて、トナカイさんもかわいそうですね」
 機晶姫の青 ノニ・十八号(せい・のにじゅうはちごう)は、六連ミサイルポッドいくつも体に装備している。
 完全にミサイルの土台と化していた。
「果たして闇黒ギロチンの畏怖の力、キメラに通ずるか……興味深いところではありますな」
 黒 金烏(こく・きんう)が体勢を整えていく。
「ジュスティーヌと湖畔は大声を上げて引きつけてくださいませ。アンドレとわたくしが後方から援護しますわ!」
 ジュリエット・デスリンク(じゅりえっと・ですりんく)もパートナー達に指示を出す。
「わかりました」
「行くよっ!」
 ジュスティーヌ・デスリンク(じゅすてぃーぬ・ですりんく)岸辺 湖畔(きしべ・こはん)がサンタのトナカイを前に走らせる。
「翼を狙うじゃん!」
 アンドレ・マッセナ(あんどれ・まっせな)はジュリエットの側で、キメラに狙いをつけていく。
「こちらですわよ!」
 ジュスティーヌが槍を振り回しながら、大声を上げてキメラの注意をひく。
「こっちじゃーん!」
 湖畔も手を大きく振りながら、キメラの前に飛んでいく。
 キメラは何かに導かれるように南へと向ってはいるが、生物としての自然な反応を見せ、ジュスティーヌとアンドレに気をとられる。
「撃ちますわよ、皆離れて!」
 ジュリエットがそう言い、キメラの正面からジュスティーヌ達が離れた瞬間に、機関銃を主にキメラの翼に撃ち込んでいく。
「止めは分校長代理達にお任せしましょう! とにかく数を減らすことと、撃ち落すことが大事ですわ!」
「了解じゃん!」
 アンドレもまた、機関銃でキメラの翼から狙っていく。
 負傷したキメラ達は分校より少し南の荒地へと落下していく。
「行きますよー!」
 十八号も野武の指示を受けてミサイルを発射していく。
「ぬぉわはひゃはははははは!」
 続いて、野武がパワードレーザーを放っていく。
 少し遅れて十八号もまたレーザー攻撃をし、弾幕援護。
 敵の姿が見えないほどの攻撃を加えたところで、金烏とシラノがキメラの横へ飛んでいく。
「なるほど、効果があるようですな」
 金烏が呼び出したギロチンにキメラの首が一つ切り落とされる。
 他の首や周辺のキメラにも影響を及ぼしていく。
「ヒャッハー!」
 サンタのトナカイから飛んで、シラノは盾で身を隠しつつ敵の動きを見た後に、攻撃に転ずる。
 軽身功でキメラの背に飛び乗って、槍を背に叩き込むと、サンタのトナカイへと戻る。
 キメラは奇声を上げながら落下していく。
「飛行系以外のキメラは見かけません。落として止めは下の部隊に任せた方がよさそうですな!」
 槍を振るいながらシラノが言う。
「捕獲した際には、なにやら引き渡す必要があるそうじゃ! 程よくダメージを与えた敵は確保をたのむぞい!」
 野武はそう言い、笑い声を上げながらまたレーザーを放っていく。
「後で回収しますよー」
 十八号は撃ちつくしたポッドを地上へと捨てていく。
「うきゃ? うきゃきゃきゃきゃきゃ?」
 身軽になり、パワードレーザーを放ちながら、効果に酔いしれてなにやら奇妙な声を上げていく。
「しっかりしろよ、十八号! 同士討ちはホント勘弁だからなっ!」
 言いながら、アクィラも後方から機関銃で弾幕を張っていく。
「銃身が焼けるまで撃ち続けるぜ!」
 アクィラが放った弾丸が、空中に散乱していく。
「まあ、ひたすうら撃ちまくるのみね」
 アカリもパワードレーザーで、キメラを狙っていく。
「少しでも数を減らせるといいのだけれど」
 遠くからキメラの群れが迫ってくる。少なくても、前列は撃ち落したいものだ。
「群れには、リーダーらしきキメラがいるわよね。撃ち落せれば一番なのだけれど……」
 パオラがそう言う。シャープシューターが使えれば、狙えたかもしれないが現在プリーストの修行中であり、他のキメラに囲まれているリーダー格を狙うのは難しかった。
「少しでも多く減らして、後方の方に託そう!」
 パオラは機関銃を撃ち鳴らしていく。
「はわわわわ、ほんとうにとろけそうですぅ」
 クリスティーナのチョコバルカンは食べごろだった。
 次々にキメラは現れる。
 銃身が焼けるというか、とろけるまで撃ち続けることになりそうだ。