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七不思議 憧憬、昔日降り積む霧の森(ゴチメイ隊が行く)

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七不思議 憧憬、昔日降り積む霧の森(ゴチメイ隊が行く)

リアクション

 
 イコンによる攻撃は、当然目立つため、他のイコンを呼び込むきっかけとなった。
「ここが会場か、暴れるぜ!」
 ノウェム・グラントの指示で湖に到着したジガン・シールダーズが、晃龍オーバーカスタムにアサルトライフルを乱射させた。
 まだ湖面に残っていた黒蓮が、激しい水飛沫を上げて粉砕されていく。
「ああ、せっかく育てたのにぃ!」
 エメラルドが、キーキー騒ぐ。そこへ、またアクアマリンから携帯がかかってきた。
「また支援攻撃? だから今忙しいって言ってるでしょ。えっ、もう帰る? もう、みんな勝手なんだから!」
 怒りつつも、エメラルドが今一度アイシクルランサーを発射した。
 その一瞬を逃さず、レイチェル・ロートランドの操縦する小型飛空艇オイレが突っ込んできた。
 体当たりしかねない勢いでエメラルドに迫ったが、今度は小型機晶姫がその前に立ちはだかった。もろに衝突して、小型飛空艇が墜落する。だが、直前で、大久保泰輔が小型飛空艇から飛び出していた。
「せめて、何か手がかりでも……」
 レイチェル・ロートランドは、一緒に墜落する小型機晶姫の破片をつかみ取ったが、それは手の中で霧となって消えてしまった。
我求めるは、天翔る翼!
 そのまま墜落するかと思えるレイチェル・ロートランドを、ソア・ウェンボリスの空飛ぶ魔法↑↑が救う。
 一方、エメラルドの上をとった大久保泰輔は、ラスターダッシャーを構えて躍りかかった。光るハタキを持つ間の抜けた姿にエメラルドが呆れた瞬間に、その背後に讃岐院顕仁を召喚して挟み撃ちにする。フランツ・シューベルトが奈落の鉄鎖でサポートしようとしたが、こちらは距離がありすぎ、また巨大な水球が邪魔で効果を発しなかった。
「水の上で、私に触れようなんて」
 クスッと笑ったエメラルドの身体を、足許から噴きあがた激しい水流が守るようにつつみ込んだ。次の瞬間、回転する水の渦が一気に遠心力で広がり、大久保泰輔と讃岐院顕仁を弾き飛ばした。
「もう一歩のところやったのに……」
 落ちてくる大久保泰輔を、小型飛空艇オイレに乗ったトマス・ファーニナルが空中で拾う。讃岐院顕仁の方は、バーストダッシュで飛び出したミカエラ・ウォーレンシュタットが、なんとかキャッチしてくれた。そのまま大きく翼を広げて、滑空しながら戻ってくる。
「まったく、何をやっているんですか! スライムのないオプシディアンの仲間など恐れるにたらずです! これで幕引きとしましょう
 噴きあがる水流でイコンの頭部へと運ばれたエメラルドに、クロセル・ラインツァートがロケットパンチを放った。それを、カエル型イコンが長い舌をのばして弾き返す。その間に、エメラルドはイコンの中に姿を消した。
 そのとたん、水球が弾けて、膨大な水とイコンが落下する。
「よっしゃあ、さあ、戦え、相手をしろ!」
 突っ込んでいった晃龍オーバーカスタムが盾となって、押し寄せる水を弾いて他の者たちが避難する時間を作りだした。もっとも、ジガン・シールダーズにその気などまったくなく、結果的にそうなっただけではあるが。
 間断なくばらまかれるアサルトライフルの銃弾を、アトラウアがピョンピョンと、予想以上の機動性で避けていった。
「この、ちょこまかと……」
 ジガン・シールダーズが晃龍オーバーカスタムを回頭させたところを、アトラウアが口からチェーンを発射して絡めとった。腕が動きを制限されて、あらぬところを銃撃で削った。
 舌でつついて、アトラウアが晃龍オーバーカスタムを転倒させる。
「あーん、ますたー♪ 動けないよお」
 反応しなくなったコントロールレバーをガチャガチャいわせながら、エメト・アキシオンが泣きそうな声をあげた。
『無理、待、救助』
 達観したように、ザムド・ヒュッケバインが言った。
「踏んじゃおうかなあ」
「隙あり!」
 晃龍オーバーカスタムを見下ろしてどうしようか考えあぐねているエメラルドの隙を突いて、クロセル・ラインツァートがレーザーガトリングを浴びせかけた。装甲の表面塗装に、ぼつぼつと浅く銃痕が刻まれる。
 そのとき、残っていた霧が一気に集まりだし、湖の一部の色が紫色に変わった。急降下してくるクロセル・ラインツァートのワイルドペガサスめがけて、紫色の偽足が槍のようにのびてくる。
「マジックスライム!?」
 トラウマスイッチが入って、クロセル・ラインツァートが一目散に上空へと逃げた。
「スライム、スライム言ってるから、霧が本当にスライムに変化しちゃったじゃない!」
 バカヤローっとナナ・ノルデンが叫ぶ。その横で、うんうんとソア・ウェンボリスがうなずいた。
 だが、変化してしまった霧のマジックスライムは強敵だ。それに、すべての黒蓮を取り込んでいるようなので、これさえ倒してしまえば、霧の増殖だけは抑えられる。
 マジックスライムがクロセル・ラインツァートだけを執拗に追いかけ回しているのを利用して、他の者たちは全力で攻撃を仕掛けた。
 さすがに、霧でできているだけあって、本物よりもさらに脆い。
「あーあー、これじゃもうだめね。でなおしてきましょ」
 そうつぶやくと、エメラルドはわずかに残っている湖の水でゲートを開くと、その中にアトラウアで飛び込んで姿を消した。
「くそ、逃がすか!」
 狙いもつけずにジガン・シールダーズがトリガーを引いたが、すでに残弾はなくなっていた。
 
    ★    ★    ★
 
 湖の黒蓮は、その後一切発見されなかった。
 もしかすると、大半の黒蓮自体が霧の産物だったのかもしれない。まるで鶏が先か卵が先かという問答のようだが。
 行方不明となったアルディミアク・ミトゥナの行方は杳としてしれず、ゴチメイたちはイルミンスールの森で捜索を続けている。
 霧は、オプシディアンたちの許に去ったストゥ伯爵を別として、完全にイルミンスールの森からは消えてしまったようだ。ただ、未だ知られていない霧の特性として、極端に強固な意志に取り込まれた霧は、実体化した形のままに定着するか、その形だけを取る個別の存在に変化してしまったようである。ストゥ伯爵が、個別の形態を五千年に亘って維持してきたことを考えても、それは珍しいことではないのだろう。
 特に、オベリスクを守るメイちゃんたちは、霧から生まれたマスターたちは消えてしまったようだが、自身の人間体は確保したままではないかという噂もある。
 そして、茨の結界の奧では、遥か太古の眠りから目覚めつつある物たちがあった……。

担当マスターより

▼担当マスター

篠崎砂美

▼マスターコメント

 
 ゴチメイキャンペーン、前半のトリです。
 しかし、今回は参りました。HDD吹っ飛んで、復旧に5日ほどロスしましたんで、スケジュールが鬼になってます。
 
 今回、かなりの複線は回収したつもりですが、まだいくつも残ってますねえ。そのへんは、後半で解明されると思います……多分。
 しかし、長さがいつもとあまり変わりない、いやむしろ多いんじゃないかというのはいったい……。
 意外とアクションは偏ったので、どうしても人の少ない所はストーリー展開の都合上ちょっとと多めになっています。また、過去の幻影と関わりつつエメラルドと戦う場合は、過去の方を優先しています。御了承ください。
 
 さて、というわけで、とりあえず、思いっきり<続く>です。
 
 P.S.5月25日に名称・口調等の修正を行っています。また、わかりにくい伏線の部分を若干加筆してあります。主に、NPCがらみのシーンのみです。