First Previous |
4 |
5 |
6 |
7 |
8 |
9 |
10 |
11 |
12 |
13 |
14 |
Next Last
リアクション
「お前は、なんでこの街が欲しいんだ?」
最上階で明人がアウィスに訊ねる。
アウィスはすぐには答えず、馬鹿にしたように喉を鳴らして笑い出した。
「欲しい? 欲しいだって? てめえは名前が書いてないとそれが誰の物かも理解できないのか?
欲しいっていうのは、自分の物じゃない物に使う言葉だろ?
俺様が欲した時点で、この街は俺様の物になってんだよ。だから、それを邪魔するゴミを掃除している。それだけの話だ」
単純な答えだった。それを聞いて、明人はどこかすっきりと目を細めた。
(……そんな理由か)
アウィスが手に力を込めると同時に、明人もポケットの中の携帯電話。そのメール送信スイッチに手を触れた。
(そんなどうでもいい自己満足に――)
好きな人は苦しめられて。
大切な人は奪われて。
たくさんの人は傷ついて。
(ああ、くそっ、頭に来る。こいつなんかに、仲間を踏みにじられたのだからっ!)
少年の中で、徐々に怒りが込み上げてくる。
言わずにはいられない。今のこの気持ちを、言ってやらなければ気が済まない。
「くっだんねぇ」
明人は笑った。
思いきり、馬鹿にするように。
「たいしたことないな、アウィス・オルトゥスも。家柄だけが自慢の、ただの小物じゃないか」
「……あ゛?」
おそらく、今までこんな台詞を言われた事が無かったのだろう。
アウィスの笑みはたちまち凍りつき、見下すように明人を見た。
「おい、お前。今、なんつったよ?」
「小物、と言った」
「それは、俺様が誰か知った上での言葉だろうな?」
「さあ? あいにくと猿山の大将に知り合いはいないんでね」
飄々と答える明人にアウィスは奥歯を噛みしめて、額に青筋を浮かべる。
「なんの力も持たねえ雑魚が粋がってんじゃねえぞ! ああ!?」
「それがどうした! 自分に力が無くたって、出来ることはある!」
「はっ! 結局人任せかよ! てめえ一人じゃ尻も拭けねえようなゴミが俺様に説教垂れてんじゃねえぞ!」
「自分一人で何でもやれてると思ってるお前の方こそ俺には滑稽に見えるぞ。
他人に支えられている自覚が無いから、お前は俺が誰に支えられているかに気付けないんだ!」
「あ゛あ!? 目に見えねえもんに頼ってんじゃねえよ! てめえが誰に支えられてるって? そこまで言うなら、見せてみやがれ!」
「分かった」
明人は口八丁で自分に意識を集中させると、目線を少し動かして壁時計を見る。
そして――自分たちの計画が成功した事を確認すると、ニヤリと笑みを浮かべた。
「それじゃあ……見せてやるよ」
携帯のスイッチを押す。
そのメールは奇襲部隊の者たちに届き、反撃の合図となる。
文面はただ一言、こう書かれていた。
『反撃』と。
First Previous |
4 |
5 |
6 |
7 |
8 |
9 |
10 |
11 |
12 |
13 |
14 |
Next Last