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【裂空の弾丸――ホーティ盗賊団サイド――】綺麗な花には何がある?

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【裂空の弾丸――ホーティ盗賊団サイド――】綺麗な花には何がある?

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「バルク……!」
 異変を察知した純白の幼鬼ことルニ。
 その予想通りバルクが暴走していたのを見て、すぐさま走る。
「盗賊団のルニ、だったか。今は危険だ。下がっていろ」
 ダリル・ガイザック(だりる・がいざっく)がルニを止める。だかルニは止まろうとはせず、バルクのもとへと向おうとする。
「それ以上、近づくな!」
「……」
 ルニの行動を見たティブルシーの住人が武器を使いルニを攻撃する。
 予想以上に早く鋭い攻撃だった。が、
「パラミタ、ニルヴァーナとも微妙に違う魔法や攻撃か。厄介だな」
 言いつつルニへ飛来した攻撃を打ち落とすダリル。
「……余計なお世話」
「なに、あの攻撃が邪魔だっただけだ。もう止めもしない。だが、あの三人に巻き込まれないように気をつけろ、それだけだ」
「三人?」
 ダリルが指差した方をルニが見ると、そこには三人の闘士たちが立っていた。
「なるほど。なら、思いっきり止めなきゃ」
「ちょっと不謹慎かもだけど、そのタフさに惚れ惚れだね!」
「手ぬるいのは嫌だから、殺しに行くよ」
 ルカルカ・ルー、鳴神 裁(なるかみ・さい)緋柱 透乃(ひばしら・とうの)が揃い踏み、バルクを見据える。
「一番手は譲っちゃったけど、もう遅れは取らないもんね!」
 最初にスタートしたのは裁。風の如き速さで見る見るうちにバルクとの間合いを詰める。
 その身には魔鎧であるドール・ゴールド(どーる・ごーるど)、ギフトである黒子アヴァターラ マーシャルアーツ(くろこあう゛ぁたーら・まーしゃるあーつ)を装着。
 更にはアリス・セカンドカラー(ありす・せかんどからー)とユニオンリングで合体し、
 その身からでる速度、威力はもはや常人のそれとは比較にはならない。
「さてはて、身体強化系スキル盛りだくさんのボクを捕らえられるかな?」
 全員分の身体強化スキルを自身一人にあてることにより、飛躍的な速さ・攻撃力を手にしている裁。
 だがその分、体に掛かる負担は計り知れない。それでも、
「わたしは風、風は常に姿を変える、時に嵐のように荒々しく、時に静かに凪ぐ、変幻自在の風(わたし)の姿をあなたに捉えきれて?」
 裁(かぜ)は止まることをしない。
 辛うじてその姿を視認したティブルシーの住人が攻撃をする。
 が、『グラビティコントロール』を使って急停止・急発進をしつつ、悪魔的な身体能力で攻撃に身を晒さない裁。
 今の状態で攻撃を喰らえば、それだけで体が瓦解する恐れもある。
「だけど、強い奴が前にいるならそんな恐怖、あってないようものだよ!」
 そして敵の攻撃が収まったのを見計らい、バルクへ一直線。
 加速分も拳に乗せて、バルクへ右のストレートを叩き込む。

ドンッ!!

 人が人を殴った音、というにはあまりにも重い打撃音。
 だがこれで終わるはずもない。
「ルニちゃんのためにも、さっさと正気に戻りなって、ばあ!」
「ガアア、アッ!」
「……男ならつべこべ言わず! 己を取り戻せって、言ってんだー!!」
「ウ、ル、ニ……!」
 うわごとに、ルニと聞こえた気がした。同時に裁とバルクの拳がぶつかり合う。
「その調子、だ! 」
 雨のように拳打を打ち込んでいく。この猛勢にバルクは反撃しない。
 否、機会を伺っていた。先ほどの美羽の時のように。
 拳打を浴びせ続けることは、不可能。ほどなくして裁の猛勢も徐々になりをひそめる。
 その時を待っていたかのようにバルクの眼光が裁を捕らえる。
「ガアアアアッ!!」
「カウンター!? やるねっ! って言ってる場合じゃなっ」
 絶妙に合わせられたカウンター攻撃を体を無理やりねじってかわす。
 その勢いのまま一度後退。裁の体からは各所からアラートがなっていた。
「無理しすぎたかな。あとの体へのダメージが、ちょっとだけ心配だね」
「お疲れ様。……次の相手は私よ、バルク!」

 裁の次に躍り出たのはルカルカ。不敵にもその場から動かない。
「さーて、どうしたのかな? もしかして動かない相手も倒せないひよっこさんだったかな?」
 『2023年モテ期』を使用しつつ挑発。果たして、未知数の敵であるティブルシーの住人たちへの効果はいかに。
「あいつよ! あいつから狙うのよ!」
「なんだかわからないけど、私達よりモテそうなのが腹立つわ!」
 効果絶大だった。
 過半数の敵の標的がルカルカに向かい、一斉に攻撃が行われる。
 しかし、それもルカルカの中では予想していた通りのこと。
「残念でした」
 攻撃されるタイミングに合わせてルカルカがサっと手を上げる。
「右翼、行くぞ」
「左翼! 一気に蹴散らすぞ!」
 ダリルと夏侯 淵(かこう・えん)が総勢116名の空賊からなる「獅子の旅団」を率いて、敵両側面から奇襲をかける。
 突然の出来事に混乱を強いられる敵一団、対し統率の取れたルカルカの「獅子の旅団」。敵一団が瓦解するのは言うまでもない。
「上々ね。そして、あなたも来てくれたっ!」
「ウグアッ!!」
 挑発はバルクにも効いていたのだ。
 バルクの攻撃を受けたルカルカはまともに受けるのは危険と判断し、
 受け流しつつ手数で勝負することを決める。
「パワーだけじゃないのよ、戦いはねっ!」
 バルクの大振りな攻撃をかわしつつ、急所を的確に攻撃していく。
 だが、バルクの勢いが衰えることはない。
「精神が肉体を凌駕しているの? これも機晶石の力……?」
「ガアアアアアアアアッ!」
「危ない!」
 両腕を振り、挟み込むようにルカルカを攻撃するバルク。
 右手をルカルカが、左手を助けに来た淵がギリギリで止める。
「これは、予想以上ねっ……!」
「こ、これほどの力、俺の時代でもそうそういなかったぜ……!」
「二人とも伏せろっ!」
 飛んできた声に反応し息ピッタリでしゃがむ二人。バルクの腕は空だけを切った。
 そしてその刹那、バルクの頭部に銃弾が撃ち込まれる。
 『スナイプ』、【機晶アシストデバイス】の併用により狙撃力を高めたダリルの一撃。
 一旦「獅子の旅団」で敵を翻弄した後、すぐに空中静止させていた飛空艇から、戦っている敵・味方の間を縫って頭部に埋め込まれた機晶石を撃ち抜く。
 この離れ技を見事にやってみせた。しかし、離れ技をやったのはダリルだけではない。
「……倒れない?」
 ダリルがそう考えると同じように、淵とルカルカもバルクが倒れないの訝しがる。
「あいつが撃った弾は頭部に吸い込まれるように当たったはず、なのになぜ!」
 淵の叫びに答えるか如くバルクがゆっくりと動く。
 それまで仰け反っていて見えなかった顔も見えてくる。
 バルクは、ダリルが撃った弾を。
 歯で受け止めていた。
「……あの機晶石、本当にまずいわね」
 並の反射神経では及びもつかない荒技を披露したバルク。