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リアクション
「すごいすごい。お見事お見事。……それで? もう終わり?」
それまで沈黙を守っていた透乃がついに動く。
「前に出てきてくれて助かった。これで思いっきりぶん殴れるよ」
あくまでゆっくりと、悠然とバルクに歩いていく。対してバルクもその場から一歩も動かない。
両者必殺の間合いまでたどり着く。
「操られてるのかしらないけどさ、見てる限りおまえは私達を殺しに来てる。なら、殺されても文句はなしだよね」
「ゴアッ!!」
話も聞かずバルクがありったけの力を込めた拳をぶち込む。
だが、透乃はよけない。あえてその攻撃に身を晒す。攻撃をしたバルク、攻撃をされた透乃。共に動じず。
「これが答えだね。よく、わかった。……逝ね」
バルクと同じような大振りの一撃。風を切り裂く音は、拳を振るうそれではない。
ぶちぶちと細胞が引きちぎれるような、風の悲鳴。
だが、バルクもよけない。真っ向から受け止める。
攻撃をした透乃、攻撃をされたバルク。共に動じ、いや。
「ガ、ア」
攻撃されたバルクが少しだけ呻く。それまでの攻撃の中で、何よりも重い一撃。
「真正面から受けようだなんて、死ぬよ? そのつもりなら助かるけど」
続けてもう一撃。それを見たバルクも負けじと一振るい。
メゴオッ!!
鈍い、この世のどんな音よりも鈍い音が響く。
「……さあ、まだまだいくよ」
「ガアアアッ!」
ほぼ零距離での両者の打ち合い。
透乃の攻撃はバルクの足や腹などを穿ち、ダメージを蓄積させていく。
恐ろしい撃ち合いを見つつ、密かに透乃を攻撃しようとするティブルシーの住人。
しかしそれは緋柱 陽子(ひばしら・ようこ)、月美 芽美(つきみ・めいみ)が阻む。
「そこ、させません」
【ブラックフェネクス】をけしかけ、攻撃を妨害する。その他の敵にも【訃刃の煉鎖】を打ち付けて迎撃。
「あちらの大男さんは今のところ透乃ちゃんに任せて平気でしょ」
「近づくのよ、近づけばどうということはないわ!」
遠距離からしか攻撃してこない陽子を見て、近づけばよいと判断した住人。
それは的外れにも程があった。
「……浅はかですね」
近づいてきた住人たちを見据えて構える。彼女は、魔王。
武器などなくとも一撃必殺を繰り出せるのだ。『魔闘撃』によって。
「カ、ッハ……」
「その身に刻みなさい。あなたの甘さを」
予想だにしなかった攻撃を受け、苦痛に顔を歪ませて倒れこむ住人。
「あらあら、陽子ちゃんたらはりきってるわね。私も負けないんだから」
それを遠めで見つつ、敵を翻弄していた芽美も反撃に映る。
「は、はやい!」
「あら、こんなのまだまだ序の口よ?」
『神速』、『軽身功』による単純な機動力で困惑していた相手に絶望の言葉を手向ける芽美。
途端、急に動きを止めたと思えば目も奪われるようなセクシーポーズを。
と思っていれば既にそこに姿はなく、別のとこに目をやればまたセクシーポーズをとっていた。
あげにあげた機動力の合間合間に『セクシーフラッシュ』を盛り込み、敵全体に混乱を波及させていく。
「はい、チェックメイト」
「ぐあっ!!」
間を詰められていたことにすら気付かず住人が蹴り倒される。
彼女達の整った顔が慣れない痛みと、してやらたという屈辱から歪みに歪む。
「ああ、いいわ。その表情。切り取って飾りたいくらい」
嘘でも冗談でもなく、そう言ってのける芽美。
そんな芽美を前に、敵対した住人は後悔を覚えた。
「それじゃまずはあなたから……」
相手の息の根を止めようとした。しかし、それは成功しない。
どこからともなく多数のミサイル攻撃がやってきたからだ。
「あら、邪魔が入ったわね?」
ミサイルを蹴り上げて後退。
「まあいいわ。あなたはもう飽きちゃったから、他の人にするわね。それじゃ」
そう言って芽美は笑顔でその場を後にした。
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