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第三章 試練を超えて

 翌日の早朝。
 その時間帯が一番安全であろうと踏んだ者たちが森を訪れた。

「どうやら私の読みは正しかったようですね」
久我 輝義(くが・てるよし)はルドルフの話を聞き、吸血鬼が一晩たっぷり餌食を弄ぶのならば、逆に情事に耽って疲労していると思われる早朝に森を探索のがいいだろうと思っていた。
 デリンジャーを持って入りはしたが、森で出会うのは吸血鬼にいろいろなことをされて、眠りにつく同級生などだった。
「パートナーの吸血鬼のことを考えると、昼に活動は出来るだろうし、夜は活性化だろうと思ったのですが、正しかったようですね」
 一晩中やることをやりつくして、吸血鬼たちも眠っているのだろう。
 無駄に戦闘する気はないので、できるだけ静かに森を通り、輝義は薔薇を手に入れた。

 もっとも早朝でも、好んで戦闘をする者もいた。
 波羅蜜多の学生、柳生 信夫(やぎゅう・のぶお)である。
 身長232cmのアフロの巨漢は自分自身を見つめ直すため、吸血鬼と生死をかけた過酷なバトルを望んでいた。
「柳生家など関係ない……信夫の力を見せてやるわ!
 夜から数えていくつ目だろうか。
 信夫は現れた敵を潰したものの、かなり息が上がって来ていた。
「吸血鬼……は……どこだ……」
 凶悪な吸血鬼を倒すことで自分自身が成長できると考えて、この森に戦いに来た信夫だったが、美しいものを愛する吸血鬼から避けられたのか、会うことはできなかった。
 そして、傷だらけの体を見つめ、信夫はあることを思っていた。
「皆、植物にはどうするか、触手的なものにはどうするかなど、考えて行動をしていた。信夫は今までとにかくただかたっぱしから戦いを挑むだけだったが……戦いというのはそれだけではないのかもしれぬのかもしれぬのう」
 いつの間にか戦いに夢中になるばかりで、そう言ったことを考えていなかった自分に気づいていた。
「もう、いいから行こう」
 信夫のツナギを柳生 雛菊(やぎゅう・ひなぎく)が引っ張る。
 彼女はパートナーのディオのために漆黒の薔薇が欲しいと思っていた。
 そのため、信夫と共に吸血鬼達が寝ぼけていそうな早朝に来たのだ。
 雛菊は森から戻ってきた者たちに話を聞き、信夫と共に進んだ。
 出会う生徒から順番に情報収集をしていったので、間違いがなく、進むことができた。
 そして、彼らは薔薇と巡り合い、漆黒の薔薇を手にした。


 それぞれ自ら手に入れた者も、手に入れられずに戻り分け与えられた者も、少なくとも一輪の黒薔薇を手に学舎を訪れた。
 試練として受けて意味があるのは薔薇の学舎の生徒だけではあったが、他校からの参加者の一部も、なぜか共にそこにいた。

「どうやら黒薔薇を手に入れてきたようだね……」
 校門から校舎へ向かうまでの間にある通路の少し開けた場所に。
 いつの間にか、生徒たちを出迎えるかのようにルドルフが姿を現していた。
「君たちなら無事乗り越えるだろうと思っていたよ。協力し、惜しみなく分け合う……美しい姿だ」
 どこで見ていたのか、報告もしていないのにルドルフはある程度の事情を知っているようだ。

「今回の試練でのできごとも、すべて君たちがより美しくあるための糧となるだろう。より一層の鍛錬を期待している」
 ルドルフの言葉に個々の生徒の評価がなく、また成績の証となるものも提示されないため、生徒の一人がそれを問うと。
「君たちの行動は常に誰かに見られていると思うんだね。美しくあるためには気を抜いてはいけない……今回の行動も漏れなく評価へと繋がるだろう」
 その質問を投げかけた生徒に対し、急に冷めたような目を向けてルドルフは静かにそう言った。
「形ある評価だけを当てにしてはいけない。真に超えるべき試練は、自らの中にあるものだ」
 そしてさらに、他校の制服を着た生徒たちにふと視線を走らせる。
「君たちは面白いね。薔薇は持ち帰ってくれて構わないよ」
 そう告げて、ルドルフは校舎の方へと去っていった。

担当マスターより

▼担当マスター

鷹守真咲

▼マスターコメント

 はじめまして。この度はリアクションが遅れてしまい、大変申し訳ございませんでした。黒薔薇の森のリアクションをお届けいたします。代筆で第二章以降を井上かおるが書かせていただきました。

 なお、アクションの成否や基本構成については、元の物を踏襲して書いております。
 成否や行動、称号については、鷹守真咲マスターのコメントを載せておきます。

【アクションでは「何を一番の目的としているか」によって成否が決まったりもしてしまいますが、今回の場合は「手に入れられなかった他の生徒にも薔薇を採っていってあげる」という行動もあったため(そして数は十分足りていたため)、「黒薔薇の入手」を望んだ方(主に薔薇の学舎の生徒)は全員手に入れたことになっています。
 アイテムデータとしての入手はありませんが、入手した証は称号「黒薔薇の勇士」として付与されています】

 この度は誠に申し訳ございませんでした。