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リアクション
4.空大の有名人
空大と言えば、現状4名の人物が名をはせている。
学長で天才数学者のアクリト・シーカーを筆頭に。
謎の魔道書でアクリトのパートナーたる、パルメーラ・アガスティア。
空大福祉学科で見学会委員長の王大鋸。
そのパートナーで、知的なドラゴニュートのシー・イー。
見学会ではもちろん、彼ら目当てに来たもの達も少なくはない。
■
その1人――桐生 円(きりゅう・まどか)は構内中を巡り歩いて、パルメーラを探しあてた。
円はパルメーラのゲーム友達だが、前回は遊べなかった。
なので、今回は是非とも「変なゲーム」で一緒に遊びたいと思っていた。
「パルメーラ、ゲームで遊ばせてよ!」
1人になったところを狙い、円は飴をパルメーラに渡して関心を買う。
「そうだよね、前回あたし寝ちゃったんだよね……ね、そこの木陰でいい?」
2人は木陰で、パルメーラのスマートフォンで遊ぶこととなった。
何で? って……もちろん、ゲームです!
スマートフォンの中をのぞいていく。
「『天才数学者の為の難しい日本語』?」
「ああ、アクリトお気に入りのサイトなんだけどね? ……て、あれれ? どーして見つかっちゃったんだろ?」
(そりゃ、開けたとたんに出てくれば、誰でも分かるよね? ふつー)
でも、何だか気になる。
あの、天才で高慢そうな学長が好きなサイトって、一体なんだろう?
(まあ、出会い系ではなさそうだけど……らしいというか、残念というか……)
そうして円は興味本位から、開けてはならないパンドラの箱を開けて行くのだった。
「『偽広島弁』? 何このサイト?」
問題1 お好み焼きがある。答えてみろ。
「モダン焼きがあるんじゃ」
パルメーラが答えると、ピンポンっ! と正解の音。
「ていうか、料理名も違ってるんじゃ???」
円が疑問の声を上げる間もなく、第2問目が始まる。
問題2 ナンパでツーショットの短縮系を広島弁で。
「ナンパしょっとじゃ!」
ピンポンっ!
またまた正解のベルが。
「ええーっ! パルメーラ! これ絶対壊れているよ!」
「そうかな? 面白いからいいと思うんだけどな」
「……て、そーゆーこと? 別のやろーよ!」
かくして2人はアクリトのお気に入りサイトで「怪しげな日本語」を果てしなく吸収して行き、「変な訛つながり」友人と化して行くのであった。
しかしこの後、パルメーラを史上最大のピンチが襲うこととなる。
■
そのケダモノは円が離れるのを待って、パルメーラに近づいた。
ケダモノの名は「南 鮪(みなみ・まぐろ)」。
「パラ実伝統文化『拉致愛』犬鬼愉兎火威を実行するには、今しかないぜぇ!」
という、パラ実的な発想(?)の下に、パルメーラに近づいたのであった。
「キミ、だあーれ?」
大鋸やシーを見慣れているパルメーラからすれば、鮪もれっきとした学生に見えるらしい。
屈託のない表情で近づくと、鮪は。
「俺? 俺、南鮪」
「鮪くん?」
「そーだぜ、パルメーラ、鮪くんだぜぇ」
下品な(本人からしてみれば愛想の良い)笑いを浮かべる。
「あのな、俺は、催し『『拉致愛』犬鬼愉兎火威』の協力者なんだが、参加者がいないんだな」
「うん」
「パルメーラはいい子だろ? 参加者になってくんないかな? これも空大を盛り上げるための『催し』には、ちげぇねぇんだしよぉ……」
「『催し』? どんな『催し』なの」
「それは、な……」
鮪はいきなりパルメーラを小脇に抱えて走り出す。
「こーいうのさぁ! さあ! 今度こそパルメーラをお持ち帰りだぜぇ! ヒャッハァ〜!」
鮪はラグビーよろしく、ひたすら正門の外目指して奪取する。
だが、正門まではまだまだ距離がありそうだ。
(ならよぉ、少しくらい役得があってもいいよな!)
パルメーラの発展途上な体を眺めて、じゅるっと涎が。
人はそれを「ロリコン」と呼ぶらしいが、鮪の頭の中では女は一律「オンナ」だ。
と、その時、本能が押さえきれずに、片手がずれて行き……。
「ひゃわわっ! 鮪くん! 手ぇ、触ってるって! お尻お尻!」
「うーん、いい声。もっと鳴けぇ〜」
「て、確信犯なの!? 誰か助けてえええええええええええぇ〜!」
パルメーラの声は、天まで届く。
その声はもちろん、パルメーラと定時連絡を取って「警備」をしていた空飛ぶ箒に乗った少女――宇都宮 祥子(うつのみや・さちこ)の耳にも。
「パルメーラに、何て汚らわしいことを! 許せない!」
祥子はパルメーラの元へ急降下。
と同時に、サンダーブラストを鮪目掛けて放つ。
「ぐわあああああああああ! おまえ、なんつーことを!」
「問答無用! 悪人退散だわ!」
鮪、撃沈。
パルメーラは魔の手から逃れることに成功したのだった。
福祉学科の「監視役」達に連行されゆく鮪の背を見送って、祥子は震えるパルメーラの手を取り立たせる。
「パルメーラ、こんな時だからこそ色々な人がいるのよ。気をつけなくっちゃ!」
「うん、ありがとう! でも祥子ちゃんがいるから、大丈夫だね!」
ぺろっと舌を出して、感謝する。
そんなパルメーラはやはり、無邪気でかわいいと祥子は素直に思うのだった。
(この笑顔を守るためにも、もうひと頑張りね!)
■
林田 樹(はやしだ・いつき)は、「催し開催予定パンフ」を見ながら構内見学中、旧知の茜、エイミー、詩穂、佐野 亮司(さの・りょうじ)の4名と会っていた。
「あ、えみみーねーたんと、あかねねーたんだ!」
樹におぶさった格好のまま林田 コタロー(はやしだ・こたろう)が呑気に手を振る。
「ひしゃしぶりらお、げんきらったお?」
だが、当2人は必死の形相で立ち去った。
「優梨子」や「さくらんぼ」を連呼している。
「何かの宣伝なのか? ま、忙しいならいいだろう」
樹は残念そうに溜め息をついたが、残りの2名に向き直った。
「久しぶりだな、メガネ娘! ライブ活動はどうなった?」
「うん! アイドルは健在だよ! でも今日は見学の案内人だからね」
「闇商人は?」
亮司の方を見る。
「あの時は……その、無理言ってすまなかったな。おかげで、コタローも良い時間を過ごせたようだ」
「そうか……それは良かったぜ」
「……て、今日は『闇商人』ではないのか?」
「ああ、運営側の『裏方』してる。『協力者』って奴だ、俺はこれでも一応空大生だからな」
詩穂は一礼して去っていく。仕事があるようだ。
その時、亮司のスマートフォンに連絡が入った。
「ああ、大鋸……」
コンパ、本校舎の、という単語が聞こえる。進行状況の打ち合わせらしい。
「分かった、無事に進んでいるんだな……あ、あとシーに! 何かな困ったことはないか、聞いてくれないか?」
いまのところはなイ、知的な声が流れてくる。
気遣いすまないナ、とも。
「催しのリストの件だけど……そうそう今のうち打ち合わせしといた方が……。
ん? コンパの参加者が少ないんだな?
じゃ、そっちの方の呼び掛けを優先するか!」
方針は決まったらしい。
スマートフォンの電源を切る。
「色々な奴から頼りにされているのだな、闇商人」
「そうでもないさ、まだまだこれからだろ?」
樹の言葉に亮司は冷静に分析して答え直す。
けれど、スマートフォンを切る間際の大鋸の声は、もう信頼しているぞ、といわんばかりに力がこもっていたのだった。
■
かくして、かれらはあるものは計画的に、あるものは偶然にパルメーラや大鋸達と会い、様々な出会いを経験したのだった。
これを機会に、交流と信頼関係を深めて下さいね。
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