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【ザナドゥ魔戦記】盛衰決着、戦記最後の1ページ

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【ザナドゥ魔戦記】盛衰決着、戦記最後の1ページ
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リアクション

 シャムスたちはついに玉座の間の前までたどり着く。
 が――
「バルバトス様の……御心のままに」
 そう言って、王を守る騎士のごとく立ちはだかったのは複数の契約者たちだった。
 その先頭に立つ筆頭は、金髪のロールヘアをなびかせるセシリア・ナート――いや、伊吹 藤乃(いぶき・ふじの)。その他にも、彼女のパートナーである耶麻古 かたり(やまこ・かたり)白津 竜造(しらつ・りゅうぞう)松岡 徹雄(まつおか・てつお)秋葉 つかさ(あきば・つかさ)蝕装帯 バイアセート(しょくそうたい・ばいあせーと)天貴 彩羽(あまむち・あやは)アルハズラット著 『アル・アジフ』(あるはずらっとちょ・あるあじふ)の姿もあった。
 そこには、風祭 優斗(かざまつり・ゆうと)の双子の弟である風祭 隼人(かざまつり・はやと)の姿もある。
 優斗とうり二つの顔をしている青年は、まるでなにかに心を奪われた人形のように、藤乃たちとともに優斗たちの前に立ちふさがっていた。
 とっさに、剣帯に手が伸びるシャムス。
 だが、それを思いとどまらせる声が挟まれた。
「シャムスさん……ここは、僕たちに任せてもらえませんか」
「優斗……!?」
「弟の……隼人のためにも、僕は彼らと戦わないといけないんです。それが、魂を奪われたあいつの兄としての、僕の役目だと、思いますから」
 優斗はそう言って、自らの剣を抜き、構える。
 そこには、彼なりの覚悟が見て取れた。兄弟を救い出そうとする、決意だ。シャムスは、その背中をよく知っている。
「その代わり……絶対にバルバトスを討ってください。そして、隼人の魂を……」
「……ああ、分かった」
 そっと、剣帯に触れていた手が離れる。
 優斗と、亜璃珠と、そして、これまでともに戦ってきた部下の兵士たちが、藤乃らと対峙した。
 そして、
「無事にまた、会おう」
 シャムスたちは、藤乃たちの相手をする優斗たちが空けてくれた道の奥――。
 玉座に王のごとく座るバルバトスのもとへと、向かった。



 エンヘドゥの欠片が封印された壺を手に入れた契約者たちは、バルバトスのもとに向かっていた。
 そして、その先頭に立って彼らを案内するのは土御門 雲雀(つちみかど・ひばり)である。彼女は、エンヘドゥの世話係としてメイシュロットで過ごしていた利点を生かし、契約者たちをバルバトスのもとに導いているのだった。
 が――その行く手の床に、血のように赤き魔方陣が描かれた。その魔力の波動に、思わず足を止める雲雀たち。
 そして。
 魔方陣から生まれた雷のもと、姿を現したのは、一人の魔導書だった。
「やっぱり……来たね、カグラ」
「……どこに向かおうと言うの? 雲雀」
 はぐれ魔導書 『不滅の雷』(はぐれまどうしょ・ふめつのいかずち)――カグラ。
 雲雀のパートナーであり、今はバルバトスに魂を奪われてその意思を従順に従わせている魔導書は、自分の契約者を厳しく見据えた。
「ここから先には行かせはしないわ」
 カグラがここに来ることは、雲雀たちも予想していたことであった。
 彼女が構えをとったのをきっかけに、仲間たちも戦闘態勢を取る。
 果たして、これで良いのか。雲雀は自分の心に問いかけても分からない。最悪、雲雀が裏切ったことにバルバトスが怒りを覚えれば、彼女はカグラさえも消滅させてしまうかもしれない。
 だが、それでも――。
 それでも、雲雀はその足を止めることは出来なかった。
 今ここで、エンヘドゥのために、仲間のためになにか出来なければ、きっと後悔する。
「あたしは……エンヘドゥさんと約束したんだ、絶対一緒に帰ろうって」
 これまで、さんざん悩んできたのだ。
 いま、約束を果たすために、カグラと戦うことを――迷いはしない。
「だから……力尽くでも通らせてもらう! そしてあたしは……カグラ……あんたも、取り戻すんだ!」
「私はバルバトス様に魂を捧げた魔の雷――これが私の本来の姿。あなたのカグラは消えたのよ」
「それでも、カグラはカグラだ。あたしのパートナーだ! ……だから、今度こそ責任持って止めてやる。そんで、一緒に連れて帰る!!」
 雲雀が言い放ったのを見て、カグラはもはや彼女に言葉は通用しないと感じた。
 と――雲雀の前に、彼女の無二の友でもあるルディ・バークレオ(るでぃ・ばーくれお)が進み出た。
「まあ、話は存分にしてもらって結構なんですが、一つよろしいですか? ぶっちゃけると、私、雲雀さんを連れ帰りたいだけなんですの。で、そこのあなた」
 ルディはビシッと視線をカグラに向ける。
「若作りも大概になさいませ。厚化粧してるのは見え見えですわ。おばさま」
「おばっ……!?」
「あら、偉そうなのは口だけ? 事実を言われてかんしゃくを起こすのは老害の証拠。女なら魔力ではなく、素手で勝負しなきゃお話になりませんわ?」
 思わず癇癪を発しそうになるカグラに、偉そうに言うルディ。
「私は魔導書……魔法の化身なのよ。わざわざ不利な条件で戦おうなんて、馬鹿な真似はしないわ」
「あらあら、イヤだというんですの? ワガママですわね。やっぱりおばさまだから、更年期障害か何か?」
 ピシッ――と、カグラのこめかみに筋がついたのは言うまでもない。
 それを見て、ルディは笑った。
「やだ、事実でしたの? 私、若いからついつい口が出てしまうんですのよ。若さを認めてくださりありがとうございますね。ほーっほっほっほ」
 高笑いしながら、カグラをあざける。
 いっそ、見ただけで言うならルディのほうが十分に悪役だった。それにしてもこの契約者、楽しそうである。
「えーと……そこの……おばさん?」
 と――ルディの影響を受けてか、ルディ・スティーヴ(るでぃ・すてぃーぶ)がその呼び名が正解なのかと勘違いして彼女を呼んだ。
「誰がおばさんよっ!」
「ひっ」
 スティーヴは、クワッと顔つきを変えたカグラに軽い悲鳴をあげる。
 だが逆に、次の瞬間には、カグラの目が彼女の後ろにある光景を見て大きく見開いた。
 そこにあったのは、宙に魔方陣を描く契約者と仲間たちの姿だった。
「い、一斉放射っ!」
 スティーヴの合図を待って、仲間たちは一斉にカグラへと攻撃を開始した。
 無数の球のような魔法弾が飛び交い、彼女を撃つ。不意を突いたのが幸いして、カグラは激しいダメージを受けた。
 だが――むろん、それだけでやられるのであれば、彼女も一人でこんな場所にはいるまい。
 最初の一斉攻撃はまともに受けてしまったものの、すぐに魔法の防御障壁を生み出すと、彼女は体勢を立て直した。むしろ、今度は逆にカグラから反撃が始まる。
「ふざけた真似を……ッ! 食らいなさいっ! 大いなる……破滅の雷ッ!!」
 だが。
 闇より生まれし雷撃は、一人の契約者が展開したドーム状の《ファイアストーム》に相殺される。炎のドームのなかで、雲雀がカグラを見据えていた。
「雲雀…………あなたは…………」
「負けられないのよ、カグラ。絶対に」
「…………そう。なら……せめて苦しむことなくつぶしてあげるわ。この私の手で」
 カグラは、まるで死神が告げる最後の宣告のように、宙に浮かぶ魔方陣を雲雀に向けて言った。
「やれる、ものならね」
 そして。
「術式展開――魔弾、掃射ぁッ!!」
 雲雀は迷いを越えた瞳で、カグラとの戦いの火ぶたを切って落とした。