空京

校長室

選択の絆 第一回

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選択の絆 第一回
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静香とラズィーヤ、ヴァイシャリーの防衛 1

ヴァイシャリーの街にて。
百合園女学院校長の桜井 静香(さくらい・しずか)を追ってくる、
謎の空飛ぶ女騎士たち。
静香とラズィーヤ・ヴァイシャリー(らずぃーや・う゛ぁいしゃりー)を安全な場所に送り届け、
ヴァイシャリーの街の外のイコン部隊で迎撃するため、
そして、ヴァイシャリーの街と一般市民を守るため、
契約者たちは奮戦していた。

「マスターハウンドからティンダロスAへ、
避難所の議事堂が襲撃を受けている、増援を頼む」
瓜生 コウ(うりゅう・こう)が、
ドッグズ・オブ・ウォーの傭兵団を率いて、
ヴァイシャリーの住民の避難を行う。
【シャンバラ古王国の騎士・美しき】マリザ・システルース(まりざ・しすてるーす)は、
ヴァイシャリーの守護騎士として、
ヴァイシャリーを襲う、上空の女騎士たちを睨みつけた。
「けして、誰も傷つけさせはしないわ!」

「ここはオレたちに任せて、マリザはラズィーヤたちを!」
コウは、傭兵部隊とともに、前線を作り、女騎士たちを足止めする。

「わかったわ!」
コウに答えると、
マリザは、女騎士たちの前に姿を現し、正々堂々と名乗りを上げる。
ラズィーヤと静香は仲間たちに任せ、
自分は時間稼ぎをするつもりだった。
「騎士マリザ・システルース、参る!」

マリザが、自らも飛翔し、上空の女騎士たちを迎えうつ。
急降下して剣を叩きつけると、
地面に落下した女騎士の一人は、光になって消えてしまった。
同様に、倒されていく女騎士たちは、光になって消滅してしまうようだった。

「きりがないわ、頭を取らないと!」
リーダー格らしい光のオーラを纏った女を探し出そうと、
マリザは空を駆ける。

「校長! 校長! こっちこっち!」
ミルディア・ディスティン(みるでぃあ・でぃすてぃん)が、
静香たちを誘導して、ヴァイシャリーの路地裏をかけていく。
「ありがとう、ミルディアさん」
「気にしないで!
まがりなりにもあたしも百合園生だし、
ここは三年近く過ごした場所なんだから、
少なくとも地の利はあたしたちにあるんだよっ!」
そして、ミルディアが、大きな庭のある家のフェンスを乗り越える。
「え?」
「ちょっとお願いして通らせてもらおうよ、校長!」
そこを突っ切れば、別の通りへと近道になるはずだった。
「う、うん、わかった」
静香を引っ張り上げて、
ミルディアはひたすらに走る。

さらに、ミルディアは、
静香とともに逃げつつも、和泉 真奈(いずみ・まな)が、
街中に用意した罠の方へと、女騎士を誘導する。
「さあ、こちらですわ」
「こっから先は、あたしを倒してから行ってよね!」
ミルディアが、静香が十分に離れたのを確認してから、
女騎士たちを見据える。
地上へと迫った女騎士たちを、真奈の設置したネットががんじがらめにする。
「熱血と冷徹、併せて一人前ですわよ♪」
真奈が、にっこりと微笑む。

「おやおや、随分と騒々しい」
アルファ・アンヴィル(あるふぁ・あんう゛ぃる)が、
落ち着いた口調で言った。
「さて、空を飛ばれるのは何かと厄介。
奈落の鉄鎖でその動きを止めさせていただきましょうか」
アルファが、重力で地面に引き寄せた女騎士を、
ドラゴニュートの骨弓で撃ち落とす。

「アルファ、背中は守ってみせるのです!」
ハルミア・グラフトン(はるみあ・ぐらふとん)が、
ガードラインでアルファを護衛する。
アルファが女騎士と戦っている間に、隙を突かれないよう、
傍で警戒しているのだった。
「たよりにしていますよ、ハルミア。
静香様が逃げられるまで、わたくしたちがお相手しましょう」
「はい、アルファ!
とにかく今は静香さまに逃げてもらいますのです!」
ハルミアは、自身の経験不足を思ったが、
それでも、足止めくらいはしたいと考えた。
「ハルミアは、今のハルミアでお役にたてることをするのです!」

静香が走ってくるのを認めると、
ヴァーナー・ヴォネガット(う゛ぁーなー・う゛ぉねがっと)は、
路地裏に引っ張り込んで、道の方に煙幕ファンデーションを投げつけた。
「静香せんせー、ここはボクに任せてくださいです!」
ヴァーナーは、静香のドレスやティアラなどのグッズで変装している。
スカートがめくれた場合に備えて、いちごパンティーをはいている念の入れようであった。
マリカ・ヘーシンク(まりか・へーしんく)も、
静香に百合園女学院新制服を手渡す。
「静香さん……っと桜井校長、
逃げるにしてもその衣装じゃ見つけてくださいと言ってるようなものだよ。
木を隠すには森の中と言うじゃない、着替たほうが良いよ!」
「そうです。ここは身代わり作戦なんです!」
ヴァーナーもうなずいて、
煙の向こう、路地へとかけていった。
空中から、女騎士たちが、静香の衣装を着たヴァーナーを追いかける。

「わぁ〜、こないでです〜」
静香のフリをして、悲鳴をあげつつ、ヴァーナーが逃げていく。

「静香校長には逃げてもらわないといけませんわ」
セツカ・グラフトン(せつか・ぐらふとん)が、
本物の静香を守っているかのように、
召喚獣:サンダーバードを召喚したり、
天の炎で目くらまししたりと攪乱する。
なるべくなら、敵を傷つけたくないのが、ヴァーナーの意志であるので、
セツカも同様に行動しているのだ。

一方、静香は、マリカに渡された百合園の制服に着替えていた。
静香が脱いだ衣装は、
テレサ・カーライル(てれさ・かーらいる)が着替えて、
静香へと変装する。
「わたくしたちが囮になりますから、
静香様はお逃げください」
「テレ……、じゃなかった、桜井校長、こっちへ!」
マリカが、軍用バイクの後部座席に変装したテレサを乗せ、
静香を逃がすかのように、
ヴァーナーとはまた別の方向へと走っていく。

「ありがとう、みんな!」
静香は礼を言って、
ロザリンド・セリナ(ろざりんど・せりな)に連れられて逃げていく。
ロザリンドも、また、普段からヴァイシャリーの街には親しんでいる。
(人気の無くて、多少の被害があっても軽微か
ラズィーヤさんの手配ですぐ直せるものばかりの所。
飛行する相手の視界を遮りやすいルート。
なるべくそこを通りましょう!)
ロザリンドは、頭をフル回転させ、そうした場所を想いだし、静香の手を引いて走った。
息を切らしている静香に、ふと、ロザリンドが言う。
「ところで、静香さん」
「何、ロザリンドさん?」
「あの人達は昔付き合っていた彼女の一団とか、そういうことはありませんか?」
恋人からの予想外の質問に、静香は慌てて叫んだ。
「そんなことあるはずないでしょ!」
「冗談です。
もしそんなことがあったら、静香さんと愛の逃避行をと思っていたのですが」
「もう、ロザリンドさんたら……」
しかし、そんな風に冗談を言ってもらえたおかげで、
静香は、いくぶん落ち着いたようだった。
「こうして、守ってもらってるんだし、
皆のためにも、僕がしっかりしなきゃ」
静香が、そう決意する。

「はいはーい。
ロザリー、校長が昔の女たちに詰め寄られてると聞いて見物に来たでー」
テレサ・エーメンス(てれさ・えーめんす)が携帯で電話をかけてくる。
そう言いつつ、テレサの目的は、
小型飛空艇で静香を見守りつつ、仲間たちに連絡をしたり、
女騎士たちを妨害することであった。

「このまま、街の外まで駆け落ち……もとい、駆けていきたいと思います」
「ロザリンドさんたら」
テレサに連絡するロザリンドに、静香が苦笑する。
でも、静香は、ロザリンドの気遣いをありがたく受け止めていた。
「ありがとう、ロザリンドさん。
おかげで落ち着いてきたよ。
怪我しないように、気をつけて逃げよう!」
「はい!」
ロザリンドは微笑を浮かべ、うなずいた。