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乙女達の収穫祭

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乙女達の収穫祭

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第19章 終わりよければ


 偽メアリから後輩を守る必要がなくなった歩は、収穫祭の乙女の衣装を着て葡萄踏みに参加する予定だったのだが、あの桶の近くにだけは、いたいけな子達を近づけまいとするのに忙しかった。そんな歩に、社と寺美が声を掛ける。
「歩さん、とても可愛らしいですぅ〜」
 寺美のほめ言葉に、歩が笑顔を向ける。
「ありがとう!」
(むっちゃかわえぇ〜っ!!!)
 社は歩に見とれすぎて、気のきいた言葉が思い浮かばず、また言葉に詰まる。
「あ、そうだ! 社、写真撮って下さい!」
 寺美が社に携帯を押しつける。本当ならば自分が一緒に写りたいのにと、画面の中のパートナーに嫉妬を燃やしながら、写真を撮る。仕上がりに満足した寺美は、社の携帯を奪うと、社を歩のそばに押しやった。
「今度はボクが撮ってあげますね〜」
 あっけにとられている社に携帯を返した寺美は、今度は歩の携帯を預かり、歩を撮ってあげている。
 歩は寺美に写真の礼をいい、2人を残して行ってしまった。
「はぅ? 社、どうかしましたかぁ?」
 社は寺美の肩をがつっと掴むと、ぎゅうっと力いっぱい抱きしめた。
「俺は今、お前のパートナーでほんまに良かったって心から底から初めて思ったわ! あとで、腹が破れるほどハチミツ飲ましたるからなっ!!」
「は……はぅ〜……」
 社の本気の抱擁は、危うく寺美の息の根を止めてしまうほど強烈だった。

「こんなことするはずじゃなかったのにー!」
 と、先ほどの事を思い出して恥ずかしさにゴロゴロとのたうちまわっていた円に、いつも通りアルコリアが声を掛ける。
「ん? まどかちゃん、どうしたの?」
「………………あ、あれ?」
 円は、あまりにもいつも通りのアルコリアの態度に、あれが本当に起こった事なのか、だんだん自信がなくなってきた。
「夢……だったのかな?」
 そんな円のつぶやきに、どこかでなにかが笑った気がした。

 村では、酒場兼食堂兼宿屋の店主づてに村長からの報酬を受け取った鳳明が、天樹に好きなものを買ってあげると約束して収穫祭へ向かい、朔は空いている土産物屋でパートナーたちへのお土産をじっくりと選んでいた。
 店の中では、収穫祭立ち入り禁止令を出されたルカルカが落ち込んでおり、その近くには、店があって収穫祭に顔を出せない店主の為の葡萄ジュースが置かれていた。

 立ち止り、悩む様子のステンノーラに、翔が声を掛ける。
「何か問題でもございましたか?」
「いえ、何か忘れているような気がしただけですわ。思い出せないなら、大した事ではないでしょう」
 ステンノーラはそう言って、翔とともに、給仕の仕事に戻った。

 その頃、井戸の底では、忘れられたまま一泊したブルタが地上に向かって呼びかけを続けていた。
「おーい、誰かー、さすがにそろそろ引き上げてほしいんだよねー。………おーい」
 しかし、その声は賑やかな収穫祭の音にかき消されて聞くものはおらず、ルカルカの『わたげうさぎ』だけが、井戸の傍で美味しそうに草を食べていた。



END.   



担当マスターより

▼担当マスター

玉野 晴

▼マスターコメント

 
 こんにちは、玉野です。この度は、リアクションの公開が遅くなりまして申し訳ありません。

 作中、何人かの方が、館の門を通る時に緊張したり変装していますが、これはアクションによるもので、アクション投稿時のデータは、ガイドで示した条件内で問題ありませんでした。
 葡萄踏みの衣装についてですが、葡萄踏み時の衣装を指定されなかった方は基本的に準備編で着替えています。指定された方は、当日、卸したての衣装で収穫祭に参加したと思って下さい。ちなみに衣装や村のイメージは、アルザス地方をモデルにしています。

 本文での名前の誤字などありましたら、玉野からの修正申告で直せますので、リアクション公開後、3営業日以内にシナリオ掲示板に書き込んでいただければ対応します。それ以降は、申し訳ありませんが運営経由での修正となります。よろしくお願いします。

 お待たせして、本当に申し訳ありませんでした。