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「大至急くれあを探すのですぅ!」

 ここイルミンスールでは、エリザベート・ワルプルギス(えりざべーと・わるぷるぎす)の緊急招集により、動ける人員が集められていた。

「探すったって……いったいどうやって……」
 御剣 紫音(みつるぎ・しおん)がつぶやく……当然の疑問だ。
 急遽集められた為、人数は少なく、さすがに空京中をしらみつぶしにするには厳しいものがあった。
「そんなことは空京に着いてから考えれば良いのですぅ! 今は急ぐのですぅ!」
 ばんばん、と机を叩くエリザベート。
 彼女が焦るのも無理はない、野犬狩り部隊には現場での殺処分の権限が与えられているのだ。

「くれあ……殺されちゃうの?」
 エリザベートのそんな姿はミーミル・ワルプルギス(みーみる・わるぷるぎす)の不安を煽ってしまっていた。
「だ、大丈夫ですぅ! ミーミルは何も心配しなくて良いのですぅ!」
 ミーミルを安心させようとするエリザベートだが、内心の不安がどうしても出てしまう。
「お母さん……」
「うぅ……」
 今にも泣き出しそうなミーミルに、しどろもどろになってしまうエリザベート。

「落ち着いてエリザベートちゃん、ここは深呼吸ですぅ」
「明日香、今はそんな場合じゃ……」
「いいから、深呼吸ですっ! すー、はー」
 神代 明日香(かみしろ・あすか)がエリザベートの手を取り、ラジオ体操的な深呼吸のポーズをとらせる。
「すー、はー」
 つられて深呼吸してしまうエリザベート。
「どう? 落ち着いた?」
「ん……おちついたですぅ……」
「エリザベートちゃんは校長先生なんだから、こういう時は私達を信じて、どっしりと構えているべきですぅ」
「そ、そんなことわかってるですぅ……もう手を離すですぅ」
 ……まだ深呼吸のポーズのままだった、赤くなりながら明日香の手を振り払うエリザベート。

「ふぅ……やっと話を聞いていただけそうだ、校長、よろしいか?」
 エリザベートが落ち着いたのを確認し、アルツール・ライヘンベルガー(あるつーる・らいへんべるがー)が前に出る。
「? どうしたですぅ?」
「ここは、探知の魔術を使えばよろしいかと……ミーミル」
 そう言って、ミーミルの上着に付着していた毛を手に取る。
 ミーミルのものとは異なるそれが、ミーミルがずっと抱いていたくれあの毛であろうことは想像に固かった。
「これを媒介にすれば、ある程度位置を特定出来るでしょう」
 オオ! と歓声が上がる、これで捜索範囲がかなり狭まるだろう。

「まずはくれあを見失った空京のペットショップに向かうですぅ! みんな着いてくるですぅ!」
 手掛かりが得られたことで、エリザベートは元気を取り戻したようだ。
 さっきまでの不安はすっかり消えさリ、皆を引きつれ意気揚々と行進する。

「やっぱりエリザベートちゃんはこうでなくっちゃ」
 微笑を浮かべ、その傍らに付き従う明日香だった。