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太古の昔に埋没した魔列車…エリザベート&静香 前編

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太古の昔に埋没した魔列車…エリザベート&静香 前編

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第5章 侵入者たちよ・・・倒さねば先へ進めぬぞ ステージ4

「金属を含んだ鉱石って・・・・・・、魔法的なモンが含まれていることだよねぇ?」
 “数百年に1度かぁ、まあせっかくだしちょいっといってみるかねぇ?”と、佐々良 縁(ささら・よすが)はガーディアンを排除しようと水中銃の銃口を向ける。
「それに関係するらしいからって、校長から依頼がありましたけど。成分を分析してみないと、何とも言えませんね」
 フロア内に入った司が、キョロキョロと見回しながら言う。
「遺跡に入ってから、2時間くらい経ったのかな?」
 ポータラカマスクをつけてノーン・クリスタリア(のーん・くりすたりあ)エリシア・ボック(えりしあ・ぼっく)と一緒にパラミタイルカの背に乗っている。
「ただ銃を撃つだけじゃ、鈍器で弾かれちゃいそうだよ、エリシアおねーちゃん」
「えぇ、水の中ですし地上と同じようにはいきませんわ。皆の酸素の残りが気になりますし、早く進まなくては・・・」
「ココハ・・・、眠リニツイテイタ、ガーディアンガ・・・・・・。我々ノ気配ヲ感ジ・・・、収納場ノ仕掛ケガ可動シテイルヨウダ・・・」
 この中の様子を調査し観察していたタァウ・マオ・アバター(たぁう・まおあばたー)が、襲撃に気をつけるように言う。
「―・・・巻キ込マレ体質ノ契約者、一番的ニサレソウダナ」
「不吉なことを言わないでください・・・、タァウくん。(まさか足元とかから出てきたりしませんよね)」
 さらっと予言のように言う彼女の言葉が気になり、周りにライトを向けて警戒する。
「シュウと私はまだ平気だけど。タンクを交換しないと危ない人がいるんじゃないの?」
「ふむ・・・つぐむ、そろそろ酸素が無くなるのでは?」
 酸素タンクを交換した方がいいんじゃと言うティアンの声に、ガランがパートナーたちに渡す。
「あぁ、そうだな。2人も変えて少なくなったやつを、ガランに渡してくれ」
 真珠とついでにミゼも交換しておくように言う。
「無くなってからじゃ慌てちゃいそうね」
「では私も・・・」
 3人は空っぽになりかけた方をガランに渡すと、満タンのタンクをセットする。
「かりんちゃん、めいたちも補充してもらおう」
「そうですね。では交換が必要な方も、一緒に行きましょう」
 酸素の残量がヤバイからと、かりんたちはいったん地上へ戻り、タンクを交換してもらいに行く。
「(酸素がきれてしまうかもしれないので。そろそろ持ってきてください)」
 司も補充しようと創世ノススメ ~出逢イ儚ク~(そうせいのすすめ・であいはかなく)にテレパシーを送る。
「(はいー、タルタルを連れて行きますね)」
「ん、お呼び出しか?」
「えぇ、補充用のタンクを持っていきましょう。ふぅ、暑いところで待機してましたから。水の中が冷たくて気持ちいですね」
 スイスイと泳ぎ炎天下の暑さを忘れるほどの、ひんやりとした水中で身体を冷やす。
「(縁さ〜ん、様子はどうですかぁ?)」
 縁から連絡がまったく来ない天達 優雨(あまたつ・ゆう)が精神感応で話しかける。
「(優雨さん、タンク持ってきてくれないかなぁ?重いと動きづらいから、予備なんて持ってきてないんだよねぇ)」
「(はぁ〜い、分かりましたぁ〜!)」
 タンクを抱えて優雨はドボンッと湖の中に飛び込む。
「(ガーディアンが結構いるから、進むのにかなり時間かかっちゃってさ。それも鋼鉄でめちゃくちゃ硬いくせに、メジャーヒールまでつかってくんだよねぇ)」
「(たくさんいるならおもち帰りってできませんかねぇ?調べたいんです〜)」
「(まあやれるだけやってみますよぅ)」
 パートナーのお願いに、重くて無理なんじゃないかなということは黙っておいた。
「先手必勝ですわ!」
 エリシアが殺気看破で起動したガーディアンの気配を察知し、そこへ漆黒の魔弾を装填した魔銃を向ける。
「こっちに気づかれる前に、目晦まししてやらなきゃねぇ」
 彼女が狙われないように縁は弾幕援護でサポートする。
「(暗闇の中では確認しづらいですわね・・・)」
 殺気の気配を頼りにエリシアはシャープシューターで狙いを定め、曙光銃のスプレーショットを鋼鉄のボティーへ放つ。
 ドガガガガンッ。
 銃声が響き貫通しきれなかった銃弾が兆弾してしまう。
「くっ、わたくしの攻撃を弾くとは!」
「それでもかなり損傷させているようだが・・・。ただ、相手は機械だからな。めり込むか貫通しないと兆弾してしまうぞ」
 カタクリズムの念力でダリルがガードし、弾丸の方向を操作してガーディアンを頭部を砕く。
「破壊しきれなかったのは、こっちで処理してあげるよ」
 縁が水中銃でガーディアンの四肢を破壊すると、断面に露出した線からビリビリと漏電する。
「昔の技術って凄いね。こんなになっても、まだ動くなんて!」
 かなり損傷しているのにも関わらず、メジャーヒールで修復しようとしている者たちを、ノーンが崩落する空の光のレーザーでバラバラにする。
「うわぁああ!?何かが僕の足を引っ張っているんですけどっ」
 千切れ飛んだ手が司の足を掴み、水の底へ引っ張る。
「手だけでも動くなんて、どんだけ命令遂行に必死なんですかー!」
「―・・・コイツノ、頭ガマダドコカデ、停止セズ動イテイルノデハ?」
 ノクトビジョンで沈んでいく彼をタァウが冷静に見つめて言う。
「大丈夫・・・?」
 彼の足を掴むガーディアンの手を、ぺいっとルカルカが金剛力で引き剥がす。
「いたた・・・っ、足首を思いっきり引っ張るなんて・・・。あっ、ありがとうございます」
「ありゃりゃ。敵が寄って来ちゃったわね」
「えっと、僕が騒いじゃったからですね」
 司の会話用の光波でトイフェル・グレーテルたちに気づかれてしまった。
「結構いるな、ルカ発進するんだ」
 ダリルは念力でウォータブリージングリングを引っ張りルカルカを発進させる。
「僕もフィンをサイコキネシスで押してお手伝いします!」
「―・・・・・・操縦者ガ2人・・・カ」
 格闘少女ルカルカゲームを眺め、タァウはぽつりと呟く。
「きゃぁああ、スピード早いすぎよ〜〜っ」
 ルカルカは鉄拳でロボドールをドッカンドッカン破壊しつつ絶叫する。
「うわっ、大変そう。ばっりち援護はしてあげるから、何とか耐えてねぇ」
 対岸の火事のように言うと縁は、弾幕援護で彼女の姿を隠す。
「あー・・・何か、こっちにとっても危険な鈍器が・・・・・・っ。ぶべらっ!」
 ボコンッとフライパンが司の頭に直撃する。
「―・・・・・・ダイイングメッセージ?イヤ、マダ天ニハ召サレテイナイカラ、ダイビングメッセージダロウカ」
 水の底に沈んだ彼が残した“鈍器少女”という謎のメッセージをタァウが発見した。



「エース、この壁変だよ?」
「なっ!?」
 大声で呼ぶクマラの方へ行ってみると、にゅっにゅっと壁にめり込ませているように見える。
「ねぇ、行き止まりじゃないみたいなんだけど。通れるかなって手を入れると、オイラの手が出てきちゃうんだよ!」
 めり込ませているわけじゃなく、遺跡の創造主が仕掛けたものだ。
「もしかしてアダマンタイトが向こう側にあるのかもな。飛び込んでみろ、クマラ」
「うん!とぉおおっ」
 勢い良く飛び込んでみるが、エースがいる側へ戻ってきてしまう。
「無理みたい・・・」
「やっぱりガーディアンを全部倒さなきゃ、通れないってことか」
「―・・・ホウ、興味深イナ。ドノヨウナ構造ダ?」
 空間を捻じ曲げたような壁に、珍しそうにタァウも顔を入れてみる。
「ム・・・・・・、エースタチガ見エルナ・・・。通リ抜ケラレナイドコロカ、妙ナ感ジダ」
 向こうにあるはずの部分が2人の側へ戻され、まるで壁から顔を出しているように見える。
「生きてるー?」
 彼女が不思議体験している頃、命のうねりで菫がぶっ倒れている司を治してやる。
「えぇ、なんとかまだ生きています・・・」
「広いフロアに大量のガーディアンがいますわ!」
「―・・・契約者ヨ、戦エノ号令ダ」
「ガンガンいこうってことですか・・・」
 エリシアの呼び声に司は殺気の渦の中に特攻する。
「わたくしがヤツらに回復の間を与えない隙に破壊しなさい!」
 手元をライトで照らして銃弾を補充したエリシアは、スプレーショットの銃声を響かせノーンに援護させる。
「うん、分かった、おねーちゃん。―・・・わたしのイカくんたちが〜!!」
 スクィードパピーに援護させようとするが、ヒットエリアの広いフライパンで叩きのめされ、巨体がズゥウウゥンと水の底へ沈む
「これで終わりじゃないもん、皆〜おいで〜おいで〜っ」
 野性の蹂躙で呼び出した魔獣たちはグァアアァアッと雄叫びを上げ、グレーテルに向かって突進する。
 “肉料理モ得意ナノ。サァ、召シ上ガレ。”
 ドゴンッ、バッカーンッ。
 あっけなく鈍器で背や頭部をぶっ叩かれ、ぶくぶくと沈んでいく。
「うわぁ〜ん、魔獣くんたちもやられちゃったよぉお」
「よくもノーンを泣かしましたわね、許しませんわ!」
 ブチンと怒りボルテージを上げたエリシアは敵を蜂の巣にしてやろうと撃ち鳴らす。
「とてつもなく、おっかない雰囲気ですね・・・。うわ、足元がっ」
 怒り狂う彼女の姿を呆然と見上げていた司の足元から、タルタロス・ソフィアーネ(たるたろす・そふぃあーね)がボコンッと現れた。
 ステージ4に到着した彼女は、ゴツゴツとした岩場ばかりの地面に、僅かなのエリア土を発見した。
 向こうの現場は暇だからと、こっちの方にやってきたのだ。
「あ、どうも・・・」
 無言で“持ってきてやったぞ”とタンクを渡される。
「司さん、戦場とはこんなに恐ろしいものなんですか!?」
 発砲しまくっている魔女や、念力で水中移動させられている乙女を見上げ、マリーは顔面を蒼白させる。
「そういえばタルタルさんはどこに・・・?あまり戦場の近くにいると危ないですよー」
 さっきまでウロウロしていたタルタロスの姿が消え、巻き込まれないように呼びかける。
「―・・・2人共、ソコニイルト危ナイ、避難シロ・・・」
「へっ?きゃわぁああ!?」
「ひぎゃぁああ!!」
 ビリビリビビビバババッ。
 ロボドールに放ったタァウのサンダーブラストが、マリーと司にまで巻き込む。
「フゥ・・・、モウ襲イカ」
 岩場に突っ伏している2人を見下ろし嘆息する。
「(ありゃ?何で2人共倒れているんだ)」
 ボコンッと土の中から顔を出したタルタロスが、つんつんと2人を指で突っつき起こそうとする。
「うわぁ〜もう、少年少女の可愛いボディーがめちゃくちゃだねぇ。向こうは向こうで、別の鋼鉄の人が操作されているし」
 弾幕援護でエリシアたちをサポートしている縁がぼそっと呟き、補助をもらいながら猛スピードで水中しているルカルカを見上げた。
「ひぃ〜ん、手が痛くて力が出ないよ〜」
「2人で回復のサポートしているんだから、まだイケルわ」
「アタッカーとして操作するなら、ルカが一番よさそうだから仕方ないな」
「えぇえ〜〜んっ」
 菫とエースに治してもらえるものの、武器のように扱われめそめそと無く。
「念力が十字キーで回復魔法はAボタンで選択しているみたいですね・・・」
 命のうねりの術がかかる範囲にいた司はゆっくりと立ち上がる。
「じゃあ司はBボタンの役割だな」
「えぇ、僕っていつの間にそんなポジションになったんですか、ダリルさん。しかも、ボタン1つでバーストダッシュもどきが出来ちゃうみたいな・・・」
「まぁ、ここだけでしか出来ないことだけどな」
「―・・・巻キ込マレルドコロカ、コントローラーノ一部ノヨウダナ。人ヲ使ッテ、楽ヲシテイルノニハ変ワリナイガ」
「人聞きの悪いこと言わないでくださいよ〜っ」
「鈍器の攻撃がきたぞ、司。キックでガードさせろ」
「あ、はい!」
 念力でルカルカが足につけているフィンを操作し、スティックキャンディーの攻撃を防がせる。
「ダリルさん、下の方から数体きますよ。パンチ連打でやっつけましょう!あー、右からも来ました!」
「おっと、こっちからも・・・。ほら、いけっルカ。なんだか楽しくなってきたな」
「ちょっと、ルカで遊んでない!?」
「ん?気のせいだ」
 2人に遊ばれてるんじゃないかと抗議の声を上げる、ルカルカにダリルがしれっと言い放つ。
「やりますわね、ルカルカさん。何体倒しましたの?」
「倒してるっていうか、倒させられているのよね・・・エリシアさん」
「げっ、徹底的に破壊しないと、止まらない系なわけ!?」
 縁がクロスファイアーでヘンゼルの四肢を断裂させるものの、機能が停止せず漏電したまま修復しようとする。
「甘いですわよ、ちゃんと壊さなくては止まりませんわ。ふぅ、これで全部ですわね!」
 驚きのあまり目を丸くする彼女の代わりにエリシアが留めを刺す。
「一本道みたいだから進んでいけば、あだまんたいと見つかるかな?おねーちゃん」
「えぇ、行ってみましょうノーン」
 イルカの背に乗ったままエリシアとノーンは先に進む。
「遙遠、タンクを持ってきましたよ!」
 彼のために大急ぎで運んだ遥遠がセットしてあげる。
「ありがとうございます、遥遠。ガーディアンは全て片付きましたから、採掘を始めましょう」
「はいっ!」
 先に行ってしまったエリシアたちの後をイルカの背に乗り追いかける。



「それにしてもこのガーディアンって、どういう構造なんでしょうね?」
 機能停止したロボドールに軽く手を触れた司はサイコメトリーで調べる。
「あわわ、何ですかこの情報量は・・・。わぁああ、脳内メモリーをパンクさせられてしまいそうです・・・っ」
 頭をポォオンと割りそうなほどの情報量に思わず手を離した。
「何カ分カッタノカ?」
「あまりに情報がありすぎて、何がなんだかもう・・・」
「―・・・トドノツマリ、見タモノマデ記憶カラ飛ブホドノモノトイウコトカ」
「おそらく途方も無い時間を費やして、製造されたわけでしょうからね。ん〜っ、持ち上げられませんね」
 分析しようにも重すぎてパーツすら持ち上がらない。
「緑さん、ガーディアンをお持ち帰り出来そうですか〜?」
「んーーっ、無理・・・持ち上がらないよ。重いくせに、どうやって水中を泳げるんだか」
「たぶん重さでパワーを強化したんでしょうねぇ、武器が鈍器ですし〜」
 構造が気になるもののパーツすらも持って帰れず、優雨はしょぼんと項垂れる。