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太古の昔に埋没した魔列車…エリザベート&静香 前編

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太古の昔に埋没した魔列車…エリザベート&静香 前編

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第7章 ドリルも通さないアダマンタイト採掘Part2

「ここで行き止まりですけど、皆さんどこへ行ったんでしょうか?」
 タンクを交換してもらったクリスと綺人は、ライトを照らしてアダマンタイト採掘のメンバーを探す。
「ほぼ一本道だから、この先・・・なのかな」
「でも、岩の壁をどうやって通ったんですか?」
 ペタペタと天井や両サイドの壁、地面に触れて調べる。
「ステージを移動する陣もありませんし・・・」
「もしかしてこの正面の壁かな。―・・・うわっ!?」
 触れたとたん・・・にゅっと手が入り、何者かに手を引っ張られる。
「おかえりーっ!」
 彼を引っ張ったクマラが手招きをする。
「ガーディアンを倒して通れるようになったのかな?」
「うん、皆で協力してなんとかね。囮になってくれる人もいたし、思ったより早く倒せたと思うよ」
「へー、そうなんだ!通れるみたいだよ、クリスもおいで」
「ここも結構、広そうですね・・・」
「もう採掘が始まっているみたいだよ。ガーディアンがいた場所よりも、かなり水の底が深そう・・・」
 採掘現場に入った綺人はフロアの中を観察する。
「クマラ、袋を広げておいてくれ」
「落としちゃったら、広いに行くのが大変だからね」
 エースが採掘した鉱石をコロンッと袋の中に入れる。
「必要なのは金属だけだから、いっぱい含まれていそうなのを選ぼう!」
「ブルーダイヤみたいな感じだな」
 カンッカツンッ。
 岩の中にある鉱石をピックで取り出し、ぽんっとクマラに手渡す。
「キレイだね・・・」
「加工したらどんな感じになるんだろうな」
「このままの透明度・・・ってことはないかもね」
「それももったいない気がするけどさ。金属として熱加工された感じも見てみたいよな」
「さ、掘るよ掘るよ♪」
「もう少し中を見てみたいんだが・・・」
 やる気満々のルカルカにダリルはせっかくだから中の様子を見てきたいと言う。
「だって今日しか開かないのよ?もたもたしてたら閉まっちゃうじゃないの」
「まぁそれもそうけどな・・・」
 遺跡の謎にも興味があるが、彼女にメッと言われて断念する。
「ねぇねぇ、ダリル。競争しない?」
「競争って・・・子供じゃあるまいし・・・」
「いいじゃないっ。こういうのは、気分で作業ペースが速くなったりするんだから。・・・・・・ねっ?」
「はぁ〜・・・仕方ないな・・・」
「じゃあ、始めるよー。よーい・・・ど〜ん♪」
 どっちが多く取るか勝負しようとスタートしたルカルカは、ガッツンガッツン音を響かせてピックで掘り採掘する。
「ふっふっふ、このペースならルカの勝ちかな?」
「何・・・?」
「ちゃんとぱっと見ただけで、金属がどれくらいあるかも判定に入れちゃおうか♪」
「加工して量を見ないと、どっちが勝ったか分からないだろ。そんな見ただけでの判定は認めないぞ」
「え〜〜?でもいっぱい採っているのはルカだもん。見て見て〜、これなんてアダマンタイトがたくさん採れそう!キラキラしててキレイだわ♪」
「いつまでも優勢ではいられないからな」
 採掘を楽しむ余裕な態度を見せつけられ、彼も負けるものかと岩に足をかけて鉱石を掘る。
「ありゃ、リュック4個分詰めちゃった。箒にくくりつけてっと」
「甘いな・・・、こっちは6個分だ」
「でもいったん地上に運ばないと、箒が進むスピードが遅くなっちゃうよ?金属が含まれている鉱石だから、結構重いからね。ルカはまだ余裕で乗せられるけど」
「こっちはスピードがあるからな、すぐに戻ってこれるはずだ。運搬スピードなら負けないからな」
 勝ち誇ったように言うルカルカに、ムッした顔をして空飛ぶ箒スパロウに乗って地上へ運ぶ。
「何かちょっと怒ったっぽい顔してたけど、まぁいっか♪」
 4人分の量を箒に乗せられる彼女の方は採掘を続ける。
「このまま負けるのは少し悔しい気が・・・。いや、勝ち負けに拘るより、なるべく多く採って運ぶことが重要だ。だが、一応勝負だからな、勝敗くらいははっきりさせておくべきか」
 ニヤニヤ顔をして言う彼女の言葉に、せっかくだから勝ち負けは判定しようと独り言を呟いた。
「やっと地上に戻ってこれたな」
 ほぼ一本道を通り数十分後、諒たちの屋台のところへ戻ってきた。
「はーい、タオルどうぞー。スポーツドリンクもあるよ」
「すぐ戻るからタオルはいい。飲み物だけもらおうか」
 蒼からレモンと蜂蜜、ちょっとの塩を入れたドリンクをもらう。
「まりずしはー?おさかな、おさしみなんだよ!あっついから、早く食べないといたんじゃう」
「あまり休憩している暇はないんだが・・・、少しもらおうか」
 痛まないうちに早く食べて!という顔をするわんこに負けたダリルは、鮭の毬寿司をもらい1口で食べる。
「ごちそうさま」
「リュックの中に、何が入っているの?」
「採掘したアダマンタイトだ。時間もないから遺跡に戻るとしよう」
「いってらっしゃーい。わぁ〜、ほうせきみたいにかがやいて見える〜」
 しっぽを振りながら蒼はごそごそとリュックの中を覗き、目をまんまるくさせて輝かせた。
「ここに預けていいのか」
「うん、ふっかふかのタオルでふきふきして」
 酸素タンクの交換と鉱石を置きにきたアキュートにタオルを渡す。
「ふぅ・・・ずっと泳ぎっぱなしもキツイな」
「ドリンクコーナーはこっちで、おむすびとおすしはおばけにーちゃんのとこ」
「この炎天下じゃ、あまり長持ちしないよな。もらっていくか」
「さっさと食え、俺の苦労が無駄になる」
「諒〜っ、その言い方はないじゃないか!」
「昔ながらの店みたいだな・・・」
 味は保証するが店主はぶっきらぼう、みたいな屋台だとぽつりと言う。
「今、真にーちゃんに、おばけにーちゃんがついちゃってるんだよぉお」
「そういうことなら、気にないでおこう」
 涙を浮かべるわんこの頭をぽんぽんっと撫でる。



「結構、袋に詰めたわね。酸素も残り少ないし、いったん戻ろうシュウ」
「えぇ。急がないとタンクが空っぽになってしまいそうです」
 玄秀とティアンは袋を背負い、急いで地上へ戻る。
「隠し通路が通れるようになったのか?」
「ガーティアンを倒してない時は、ただの壁だったのかな」
「それも気になりますけど、作業を始めましょうめいさん」
 壁にしか見えないところから出てきた2人を見たエヴァルトとめいたちが入れ替わりに採掘現場へ入る。
「んーこの辺はもう、採っちゃったの?」
「もう少し、近くにライトを当てるとわかりやすいですわよ、ノーン」
「ブルーダイヤみたいな感じのやつだよね・・・これかな?ちょこっとだけど、鉱石の表面が透明な感じがするよ」
 いらない部分まで採らないように、ちまちまとピックの先でガリガリと削り採る。
「モセダロァはまだ塵のままなのか」
 ガランに担がれている彼女をちらりと見て、つぐむは採掘しながら呆れたようにため息をつく。
「その分、ワタシが働くから安心して、つぐむちゃん」
 空鍋に詰めた鉱石を真珠が空飛ぶ魔法で水上へ持ち上げようとするが・・・。
「うわ、沈んでいるぞ竹野夜!」
「あらら、大変っ」
 沈んでいく鍋を慌てて取りに行く。
「こういう物には、空飛ぶ魔法がかからないみたいよ」
「運ぶしかないか・・・。誰かモセダロァを治してくれないか?」
「ん・・・?塵のままなのか・・・」
 あれだけ電撃をくらえば当然かとエースはため息をつき、命のうねりでミゼを治してやる。
「作業中なのに呼んですまないな」
「いや、これくらい別に構わないけど」
 よく生きているよな・・・、という言葉は言わず作業に戻る。
「おい、起きろモセダロァ」
「―・・・つぐむ様?あれ、もうガーディアンは倒したんですか?」
「あぁ、とっくにな」
「そうですかー・・・」
 ミゼは残念そうに小さな声音で言い俯く。
「ほら、これを持って地上においてこい」
「はい、分かりました」
「運ぶのはモセダロァに任せて、俺たちは採掘に集中しよう。ガランはあまり沈まないように、浅そうなところで頼む」
「了解した」
「結構、力がいるわね・・・」
 ピックを握る手がしびれてきた真珠は、疲労した自分の手をマッサージする。
「疲れたなら鍋だけ持っていてくれ」
「ごめんね、そうするわ」
「落とさないようにな」
「いっぱい採れたように見えても、この中に含まれている金属はちょっとだけなのよね」
 鉱石を落とさないようにぎゅっと鍋を抱える。
「魔列車を修理してパラミタに鉄道網ねぇ・・・」
 面白そうだし将来の夢のためにと、菫も発掘作業を手伝う。
「集まったら地上に運んできてあげようか?」
「この辺りにありそうだな」
 ドリルでも通らない箇所を見つけようとエヴァルトは、ギュガガガガァアッと鉱石を削る音を響かせる。
「不要な部分は落としておくか」
 ゴリゴリと掘り進め削り採った鉱石を袋の中に詰める。
「いや、これくらいは平気だ」
「ん・・・でも。あまり荷物に詰めると、予想以上に大変そうだけど」
 彼が背負っているずっしりと重そうな袋を見る。
「ねぇ、あたしが女だからって妙な遠慮はしないでよね。それくらい手伝えるんだからさ」
「そういうわけでは・・・。あ、向こうで何か呼んでいるぞ」
「エリシアたちが集めたみたいね。じゃあついでにそれも運んであげる」
「重いからいいって。あっ」
 自分で運ぼうとしたん、背から奪うように袋を取られてしまう。
「集まったのこっちにちょうだい!」
「たくさんあるけど大丈夫なんですの?」
「まぁ、それくらいならね。じゃあちょっと地上に運んでくるわ」
「蒼たちの屋台があるから、そこに置いていくといい」
「へぇ〜、とりあえず預けておけばいいのかしら?ついでに酸素のタンクをもらってこよっと」
 戻ってきたダリルに教えてもらい、蒼たちのところへ預けに行く。
 アキュートが採掘現場へ戻った頃、菫はザブンッと湖から上がる。
「満タンのタンクは・・・これね」
「おねーちゃんものんでいってー。おいしぃーよ」
 背にタンクをセットする彼女に屋台の小さな店員がドリンクを差し出す。
「気が利くじゃないの。ん・・・まぁまぁね」
「これでふきふきして」
「ありがとう、タオルはどこにおけないいの?」
「こっちにちょうだい」
 びしょびしょのタオルをぽふっと受け取る。
「ふくろの中はこうせきが入っているのかな」
「えぇ、そうよ。採掘が終わったら皆と運ぶの。じゃあ戻るわ」
 無遠慮に諒が作った塩むずびと寿司を口の中に放り込むと、ドボンッと湖に飛び込み採掘現場へ急ぐ。



「アダマンタイトか・・・。どんな物質なんだろうな」
 賢者の石に関わりがあるものだろうか?と、アキュートは鉱石にライトを当てて考える。
「錬金術は物質の成分を理解することから始めるんだが・・・。科学的に考えればいいのか?」
「溶かすことが出来れば、少し変わった感じになるかもしれませんね。それよりも遺跡の存在が、謎な気がしますけど」
「天然の物を本来の姿でとっておきたい、という考えもあるんじゃないか、司」
「まぁわからないでもないですね。この中の水の色も、けっこう澄んでいてキレイですし。荒らされたくない、っていうことでしょうか」
「それに盗掘した物を個人の私欲で利用しようとか、そう考える者もいるだろう?」
「えぇ確かに・・・。扉を閉めて管理者が見にくる程度の年数に、設定していたのかもしれませんね」
 心無い侵入者がいるせいで、この遺跡が出来たのでは・・・と考え込む。
「でも、それらしい人は見当たりませんね」
「―・・・モウ、亡クナッテイルンジャナイカ?数百年ニ、1度開ク構造ダゾ」
「そうかもしれませんね・・・」
 横から口を挟むタァウに、なるほど・・・と頷く。
「―・・・ソレト。・・・鉱石ヲ、ケッコウ運ンデイルヨウダガ。金属ダケ抽出スルトナルト、マダ僅カシカ採レテイナイカモシレナイ」
「遺跡に入ってから、かなり時間が経っていますから急ぎましょう」
「簡単に削れるわけじゃないが、出来るだけ多く採っておくか」
 ピックの先で殴るようにぶつけ、刃の通らない鉱石を探す。
「見つけたぞ!」
 カァアアンッと澄んだ音が響き、水の底へ落とさないようにその周りを慎重に掘る。
「この重さなら、かなり含まれていそうだな」
「皆、見つけるの早いですねー・・・」
「―・・・・・・契約者ヨ、我モ見ツケタ」
「タァウくんまで・・・。あ・・・見つけました!でも小さいですね・・・」
「地道ニ掘ルシカナイゾ、契約者」
 そう言うと彼女はそれっきり彼を放置し黙々と採掘する。
「かりんちゃん、どれくらい採れた?」
「まだこれだけしか見つけてませんね・・・」
「んー・・・ちまっとしか感じのしかないんだよね」
 めいとかりんは鉱石をピックでカリカリと削り荷物に詰めていく。
「下の方にも行ってみよう!」
「ありましたよ、めいさん」
「わぁ〜、金属が粒みたいに細かく入っているね。こっちから掘るから、かりんちゃんはそっちお願いね」
「えーいっ、えいっ。はふぅ〜・・・ちょっと疲れてきました」
「じゃあ後はめいがやるから、キャッチして!やぁ、てぇえいっ」
「ん〜っ。(かなり重いですよ、めいさん!)」
 ガコッと岩場から削れた鉱石が落ち、かりんはピックの柄を口に咥え両手でキャッチする。
「一緒に持って行こう。皆〜、適度に休憩してね。お寿司とか、飲み物を用意してくれた人がいたよー」
 2人で抱え屋台の傍へ置きに向かう。
「えぇ〜いいなぁ。ルカも食べたい」
「俺は置きにいったときにもらったけどな」
「ダリルだけずるいっ」
「―・・・行ってくればいいだろう」
「うーん・・・今日しか採れないから頑張るもんっ」
 めそっと涙を浮かべてルカルカはお腹ぺこぺこでも耐えて作業を続ける。
「遙遠、手が傷だらけですよ」
「この軍手もボロボロなんで仕方ないですよ。戻っている暇もありませんからね、遥遠」
 慈悲のフラワシの美しい手に傷口を撫でられ癒してもらう。
「あっ、もうすぐ酸素が切れてしまいそうです!」
 イルカの背に乗せているタンクを遙遠に渡し、彼が交換している間・・・酸素と一緒に彼女の愛も注入する。
「頑張ってくださいね、遙遠」
「―・・・ありがとうございます、遥遠」
 美しく微笑む彼女に思わず見惚れてしまい、いつもの冷静な態度を保てず顔を真っ赤にする。
「―・・・・・・暑イ、向コウダケ暑イナ」
「見てしまいましたよ、ウフフ」
「さて、早く採らないと扉が閉まってしまいますね」
 じーっと見つめるタァウとクリスから目を逸らし、遙遠はピックで鉱石を掘る。
「ダリルのカメラで撮ったわ♪」
「な、何撮ってるんですかルカルカさん。パパラッチですかまったく・・・」
 追いかけるのも時間の無駄だと思い作業に戻る。