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太古の昔に埋没した魔列車…エリザベート&静香 前編

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太古の昔に埋没した魔列車…エリザベート&静香 前編

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第14章 地味な作業もあるさ

「舞香ちゃん、起きて!今日こそちゃんと現場に行くわよっ」
 日が昇り始めた頃、綾乃が騒ぎながらパートナーたちを起こす。
「って、まだ5時じゃないの。皆まだ寝ているんだし、あたしも眠いんだから静かにしてよ」
「むーっ、行くのよ!ねぇ、早くーっ」
「―・・・どうしたの?」
 彼女の騒ぎ声に目を覚ましたセレアナは、まだ眠たい目をこする。
「一緒に行かない?」
「うちの学校は、これくらい早い時もあるからいいけど・・・。じゃあセレンを起こすわね。作業開始よ、起きなさい」
「んー・・・・・・朝ごはん」
「ちょっと、どこ触っているのっ。私の胸は朝ごはんじゃないわよ」
「えっ?あ、夢か・・・。ふぁああ、おはよう・・・。仕度するわね・・・」
 外に洗って干しておいたダイビングスーツをとりに行き、テントの中で着替え始める。
「わっ、ちょっと何するのよ、綾乃!」
 寝袋をひっくり返されて無理やり起こされた舞香が怒鳴る。
「起きたらもう片付けなきゃね。私はもう着替え終わったし、さぁ行くわよ」
「仕方ないわね・・・皆、起き始めちゃったし」
「準備出来タ?ヨン。アキラを起こしにいくワヨ」
「まだこんな時間なのにいいんでしょうか・・・」
「起きてアキラァアア!!」
「うわっ、何だ!?」
 大声で呼ぶアリスの声に驚いたアキラが飛び起きる。
「なんでこんな早朝からっ」
「女子は皆もう、起きているワ。男子はまだナノ?遅いワネ」
「5時に作業ってどんだけだ・・・」
「甘いわ、現場の人はこれくらい当然なのよっ」
 ぼやく彼に綾乃が早起き作業は当たり前と言う。
「目が覚めたぁああっ。ありがとう、夏・・・大好きだーっ!!」
 舞香のセクシーなハイレグ水着姿にアキラは眠気を吹っ飛ばす。
「おはよう、皆。早いな」
 綾乃よりも早く起きて作業していた一輝が声をかける。
「もしかして私よりも早く目が覚めたの?」
「日中の伐採はキツイから、空が明るくなり始めた頃だな」
「お目覚めですねぇ、皆さん。ラズィーヤさんからのメッセージを受け取ったから聞いてください」
 そう言うとエリザベートはメッセージを再生する。
「皆さん、ご苦労様ですわ。列車を運び出せるようになりましたら、ロープなどを使ってイコンで運び出す工程にしましたの。しかし無理に引っ張ると車輌をつなぐ連結器が壊れかねませんわ。では、頑張ってくださいね」
「というわけですぅ〜」
「洞窟の出口まで引きずるわけにはいかないからな。そこまで仮の木造レールを敷けばいいか」
 ユリウス プッロ(ゆりうす・ぷっろ)は施工管理技士に計測してもらった図を見て言う。
「枕木を敷いたレールじゃ、効率が悪いんじゃないか?」
「ふむ・・・水圧のこともあるしな」
 使う分だけイルミンスールの森の木を、チェーンソーで伐採している施工管理技士の意見にユリウスは考え込む。
「後、物理的に考えても洞窟の出口までだからな。陸辺りまでに造るとしたら、かなりの月日が必要だ」
「陸に一般的な一軒屋を建てるよりも大変なんだぞ」
「レールを支えるための土台を含めると、かなりの重労働だな。やはり洞窟の出口までか」
「そうなると今日は出番なさそうね」
 しょんぼりとコレット・パームラズ(これっと・ぱーむらず)はルアーをつっつく。
「で、どうするの一輝」
「手っ取り早く作業を進めるなら、今切ってもらった木を使って造るしかないけど・・・」
「どうせならローラーコンベアーみたいな感じにするといいんじゃないか?ローラーの上に滑らせて引っ張ったほうがいいと思うんだが」
「無理に引っ張るより、それもアリなのか?」
 施工管理技士の説明に一輝はプランを練り直してみる。
「ローラー同士を数ミリ間隔をあけて、造ることも出来るが。まぁ、考えてみてくれ」
「引き上げるだけだし、普通のレールを設置する必要はないと思うわ」
「んー、そうだなコレット。それに引き上げたら、片付けて陸で処理しなきゃいけないしな」
「引きずるよりも滑らせる方が時間の短縮にもなると思うが」
「じゃあユリウス。イコンで少し浮かせて引っ張ってもらって、そこに乗せるっていう感じとかどうだ」
「ほう・・・なるほどな。連結部分を外して1両ずつ運んだほうがいいか?」
「それはそうだろう?連結したままヴァイシャリーの駅の予定地まで運ぶのは、大変だしその部分が傷む可能性だってある」
 一輝は工程予定を紙に書きながらユリウスと相談する。



「SLだわっ。何両あるのかしら!」
 鉄道娘の綾乃は宝物を発見したかのように、目をキラキラと輝かせて見る。
「黒じゃなくってメタリックブルーな色ね?機晶石を燃料にしようって時点で、石炭じゃないのよね」
「綾乃ー、タンクちょうだい。あれ、そこにいたはずなのに」
「そこに置いてあるから、勝手にとって」
「はぁ、夢中になっちゃってまったく・・・」
 大好きな鉄道を目の前にはしゃぐ彼女の姿に、舞香は怒りきれず放っておいてやる。
「爆薬と信管分けてくれない?」
「いいわよ、ビニールの袋にキューブ型のと信管があるから、勝手にとって」
「もらうわね」
 セレンフィリティに分けてもらい、威力の小さめのものを選び破壊工作する。
「量を間違えて傷でもつけたら、綾乃に怒られるものね」
「ワタシは連結部分の下にある岩を破壊するアル」
 手甲をはめた手で岩を殴り、鳳凰の拳で掘るように砕く。
「たまった破片を片付けるだけでも重労働だな」
「ティータイムの休憩をしないか?」
 背伸びをするグラキエスにベルテハイトが手招きをする。
「お茶はいい」
「じゃあ俺の膝の上に座って休まないか?」
「あなたでは重いだろう。ゴルガイスの方に座るからいい」
「(くっ、ゴルガイスめ〜っ)」
 座ってほしかったのにと、ゴルガイスを鬼のような形相で睨み、嫉妬の炎を燃やす。
「(睨んでいるようだが、我は何かしたか?)」
 身に覚えのない恨みをぶつけられた彼はハテナと首を傾げる。
「おぉお、この海には人魚がいるのか!」
「人魚?いえ、人ですね」
 アキラの発見の喜びをヨンが木っ端微塵に砕く。
「白ビキニに人魚のしっぽだと!?」
 ウォータブリージングリングをつけてマーメイドスタイルになった神皇 魅華星(しんおう・みかほ)をガン見する。
「わたくしを見て鼻血をふかないように気をつけなさい♪」
 彼の目の前を優雅に泳いで離れ、斬馬刀型光条兵器で邪魔な岩を壁へ斬り飛ばそうとする。
「あら、以外と硬いですわね。相手が物理で地道な作業だとしても、途中で逃げるわたしくじゃありませんのよっ」
 邪魔な岩など以外を傷つけないように出来る光条兵器で、隙間に詰まった石を削り出したりする細かい作業を気にせず、何度も刃をぶつけ斬り払う。
「真ん中の担当が少ないですわね?わたくしが引き受けてさしあげますわっ」
 運びやすくしてやろうと、平らに削ぐように徐々に斬り崩す。
「削り節のように上から少しずつ削って調節していきますわよ!そんなことを言うと、ニャ〜ンズが寄ってきそうですわね・・・」
「物理にはあまり効きませんのに、光条兵器を使うんですか?」
「えぇ、休憩をはさみながらになってしまいますが。単純作業を嫌がっては、いつまで経っても発掘出来ませんのよ」
 疑問符を浮かべるベアトリーチェ・アイブリンガー(べあとりーちぇ・あいぶりんがー)に、愚問ですわといふうに言う。
「楽をして解決出来る様なことは、この世にもあの世にもありませんわっ」
「それはそうですけど・・・」
「ベアトリーチェ、何やってるの。こっちよ!」
 蒼空学園水着を着てウォータブリージングリングをつけた方の手で、美羽が手招きをして呼ぶ。
「あ、はい美羽さん。では、これで失礼しますっ」
「そなたも頑張って作業するんですのよ」
 先頭車両へ向かうベアトリーチェにフリフリと手を振る。
「ここに燃料を入れるみたい」
「そのまま機晶石を入れるんですか?」
「よく分からないけどやってみよう」
 入れたのにも関わらず、列車はまったく動く気配がない。
「えぇー、どうして?」
「修理しないと無理なんじゃないんですか?」
「そんなぁ〜」
 熱変換されない機晶石を取り出した彼女は、がっくりと項垂れた。



「パラミタ横断鉄道が完成すれば、人の往来が便利になり生活が豊かになる。とても素晴らしい思いだ。張り切って協力させてもらうとしよう!」
 ラズィーヤにエレベーターの設置に使うような頑丈なロープで身体をつないでもらい、コア・ハーティオン(こあ・はーてぃおん)は発掘現場へ潜る。
「ちょっと取材させてもらっていいですか?」
 現場の人にもインタビューしようと刀真が声をかける。
「取材だとっ!?何だか緊張するな・・・。やぁ、私は蒼空学園の戦士ハーティオン」
 月夜にダイビング仕様のデジタルビデオカメラを向けられたとたん、カメラ目線で喋り始める。
「今回、魔列車の採掘を行うこととなり、今はパラミタ内海を“沈んで”いる所だ。むっ、音声は録音出来ているか?」
「あーっ、光波の骨伝導の会話って、受けたダイバーにしか聞こえないんでしたね」
「録音機能があるようだが。陸で音声データを渡す形になりそうだ」
「では、もう1度お願い出来ますか?」
「ふむ・・・分かった」
「月夜、テイクツーいきますよ」
「撮り直しね」
 カメラを操作して撮り直しの準備をする。
 刀真は指でカウントし撮影を再開し、同じところまで録画させる。
「細かい部分の発掘作業は地味に見えても必要なことだ。千里の道も一歩からというだろう?発掘を始めるとしよう」
「それでは行ってみましょう!」
「皆も大まかな部分は破壊工作やスキルで除去しているようだな」
「すでにもう発掘が始まっているというわけですね」
「後ろの車輌の方は、半分埋まっているな」
 光術で明りを灯したコアは列車を傷つけないように波の流れを確認し、破邪の刃で硬い岩場を破壊する。
「あらかた崩した部分の除去をしなきゃいけないわけだが・・・」
「なるほど、念力はこういう時にもつかるんですね!」
「そこ退いて。サイコキネシスで外に放り投げちまえっ」
 シュシュシュッとミューレリアが念力で飛ばし除去する。
「次は細かい作業の方でしょうか」
「そうではないが、スキルは使わないな。列車の真下から除去しようとすると、傷つけてしまうからな。もう少し下の位置からコヤスケで叩くんだ」
「トンカチっぽい感じですね?」
「石を割ったりする時に使う道具だな。細かいところは石ノミで削っていく感じだ」
「かなり地道な作業のようです・・・」
 刀真はカメラレンズの方に顔を向けて言う。
「列車の中でも何やら作業をしているみたいだぞ。いってきたらどうだ?」
 作業の手を止めたコアは窓枠の方へ視線を移して彼に教える。
「そうですね、行ってきます」
「わぁ〜ちっちゃい!」
 インタビューする相手を探しているのを忘れ、月夜は海のちいさなギャングにレンズを向ける。
「ニャ〜ンズが可愛い・・・可愛い、刀真!持って帰ろうよ!」
 みゃぁ、みゃんみゃん。
 猫のような声音で鳴くサメの虜になった彼女は家に連れて帰りたいと言う。
「耳もお口も可愛い〜、つんつんしたい!」
 可愛く見えるようにアップで映したり、いろんなアングルで撮影する。
「ねぇ、ぷにっと柔らかいよっ。背中に飛びついてきた!くすぐった〜い」
「何メートルにもなるんですよ、飼えませんって」
「背中に乗って泳いだら最高に違いないわ」
「そうかもしれませんけどね・・・」
「いいもん、まだ発掘作業は終わりそうにないから毎日あるし。終わってもきちゃうから。ねー」
 ちょいちょいと指で触れながらニャ〜ンズに話しかける。
「撮影中は連れて泳ぐから!」
 指を噛まれても気にせず抱きかかえたまま刀真についていく。
「まぁいいですけど。おや、こっちではフラワシが紙に何か描いてますね?月夜、撮ってください」
 詩穂が使役する描画のフラワシへカメラを向けるように言う。
「何を描いているんでしょう・・・」
「あれ、撮影しているんですか?」
「えぇ、インタビューをしにきたんです」
「今、詩穂のフラワシに列車の外観とか中の感じとかを描いてもらっているんです。原寸大で☆」
「原寸大ですか!?かなり大変な作業だと思いますが・・・」
「でも修理する時に必要だと思うので、頑張らせているんですよ☆」
「丁寧に描いているわね!」
 フラワシの手にしている紙を綾乃が興味津々に覗き込む。
「しかもそのままの大きさを表現するなんて・・・!ここは燃料を入れる先頭部分かしら。一般的なSLとは雰囲気が違うわね・・・」
「鉄道に詳しいんですね?」
「大好きだからねっ。沈んだままもステキな感じだけど、やっぱり走っているところを見たいわ・・・」
「油性で描いてもらっていますけど。キレイなまま保管したいので、何度か陸に戻って置いてこなきゃいけませんが・・・。って、どこから刃が!?」
 詩穂の身体を真っ二つにするかのように、巨大な刃が彼女の背後からぬっと現れた。
「誰の仕業ですか!?いたー・・・くありませんね。きれてなーいです☆」
「そこに誰かいるんですの?」
 先頭部分の岩を除去している魅華星の声が聞こえてきた。
「います、おもいっきりいますっ」
「ごめんなさいね、わたくしの光条兵器ですの。斬らないように判断しているので、斬れてませんわよね?」
「えぇ、大丈夫です。両サイドに割れていません☆」
「なんだかどっきりのようなハプニングもあるようですね」
 刀真がレンズに向かって感想コメントを言う。
「あ、たったいま。コアが陸へ引き上げられてしきました。タンクの交換でしょうか?」
「私のタンクを持ってきて、撮影しているから」
「そうですね、月夜のタンクを持ってきてあげます」
 彼は陸へ戻り交換すると彼女の分をもらって再び潜ると・・・。
「大変よ、刀真・・・。バッテリーがなくなりそう」
「えっ、先に言ってくださいよ。セットするために陸へ戻らなきゃいけないんですよ」
「きれちゃった」
 交換前にバッテリーがなくなってしまい、“ここでCM的に休憩”とインタビューを中断させた。
「まだかなり埋まっていて難航しているようだ」
「アダマンタイトの採掘は終わりましたけど。発掘の進行度合いはまだ半分ですぅ〜。でも焦ってはいけませんよぉ〜?」
 陸で海を眺めているエリザベートはコアから報告してもらった。
 地味だけど発掘作業はコツコツと気長にやるもんですぅ〜というふうにコメントを残した。

担当マスターより

▼担当マスター

按条境一

▼マスターコメント

皆様、お疲れ様です。
今回のこちらは、かなりの重労働です。
流れに沿っているアクションは、ほとんど採用させていだきました。


【進行度合い】

・アダマンタイトの採掘:完了。

・魔列車の発掘:ほぼ半分完了。


【次回の進行】

・アダマンタイトの加工

・魔列車
発掘作業
イコンでの引き上げ、ヴァイシャリーの方の駅の予定地へ作業
列車内の掃除
列車の修理

進行度合いによりますので、車内の内装設定とその他の作業は、あくまでも予定の部分です。


一部の方に称号をお送りさせていただきました。
それではまた次回、シナリオでお会いできる日を楽しみにお待ちしております。