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太古の昔に埋没した魔列車…エリザベート&静香 前編

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太古の昔に埋没した魔列車…エリザベート&静香 前編

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第13章 ニャ〜ンズを食べる?もふもふしたい?

「魔列車よりも・・・俺が気になるのは・・・っ」
 パラミタ内海に飛び込んだロア・ドゥーエ(ろあ・どぅーえ)は、キョロキョロと辺りを見回して何かを探している。
「それよりもとはロア・・・。いったいここに何しにきたんだ?」
 レヴィシュタール・グランマイア(れびしゅたーる・ぐらんまいあ)は彼の様子に、何かよからぬことを考えているのではと、顔に渋面を浮かべる、
「グラキエスだ。おお、ドラゴニュートと吸血鬼のパートナーも一緒か」
 目的の食材を探していると、採取した物をイコンで運搬してきたグラキエス・エンドロア(ぐらきえす・えんどろあ)たちを見つけた。
「こっちにも来たのか?」
「あぁ、まぁな」
「発掘現場はこっちだぞ」
「ちょっと探しているやつがいてさ」
「ほう・・・、どんなやつだ?」
「この海に猫型のサメがいるんだってよ。フカヒレだぞ、フカヒレ!そいつはどんな味がするんだろうな・・・」
「猫・・・」
 その単語を聞いたグラキエスは食欲よりも、見たい・・・出来れば触りたいと、手をにぎにぎする。
「とりあえず現場にいかないか?」
 ニャ〜ンズに会いたいのを我慢し、ロアに現場へ向かうように言う。
「まず先に俺がやるべきことは、ニャ〜ンズのを捕獲して食べることだ!」
「―・・・・・・食べるだとっ?俺は・・・触りたい」
「え・・・?」
 ぼそっと呟いた彼の言葉にゴルガイス・アラバンディット(ごるがいす・あらばんでぃっと)が、ぎょっとした顔をする。
「ニャ〜ンズに触ってみたい」
「あぁ、猫型のサメのことか。(我がふかふかのもふもふの生き物なら・・・こんな不憫なことには!)」
 本当は動物が好きなのに狂った魔力を宿すせいで、逃げられてしまうグラキエスのために、自分がもふもふのかわいい動物であればよかったのに!と本気で考える。
「あぁああいったぁああ!何かに噛まれたっ」
 ベルテハイト・ブルートシュタイン(べるてはいと・ぶるーとしゅたいん)はガブッと何者かに尻を噛まれ悲鳴を上げる。
「いた・・・いたぞ!あのサメ、猫型のサメだあぁあ!!」
 食欲魔人のロアがじゅるりと唾を飲み込む。
「なぜこっちに!?」
 ニャ〜ンズに尻を噛まれたあげく、ベルテハイトはボールのように遊ばれる。
「あのもふっとした尻尾、あの目・・・ふかふかの耳っ」
 触りたい触りたい触りたい触りたいと心の中で連呼し、グラキエスは目をギラつかせる。
「うまそうだなぁ」
「本当に食べるのか!?あんな可愛い生き物を・・・食べてしまうのかっ」
「あわわわ、揺らすなって」
 ロアはグラキエスに肩を掴まれガックンガックンと揺らされる。
「かっ、可愛い・・・・・・。もっと聞かせてくれ!」
 みゃぁああん、と鳴き声を聞いた動物大好きな彼は、ぐにゃぐにゃっととろけそうになってしまう。
「猫だな」
「あぁ猫か」
「海に住む猫だな」
 2人をレヴィシュタールたち3人が遠くから眺める。
「頼むロア、1匹だけにしてくれ。可愛い生き物は保護しなきゃいけないんだっ」
「えー?グラキエスがそういうなら考えとく」
「あの食欲から生まれたようなロアがいうことを聞くかどうか・・・。互いに、気に入っているようだからな。グラキエスの要望をシカトするとは思わないが」
「なぁ、トラッパーで捕らえてくれよ」
「むー・・・・・・。猫といえば、狭いところか」
 閃いた様子でグラキエスはワカメを編んで、倒した魚を中に入れて仕掛ける。
「肉も食べるんじゃないか、猫なら」
「ふむ、肉か」
「どうしてこっちを見るんだ!?」
「2種類あれば喜ぶとおもってな、ゴルガイス」
「な、何だ2種類とは。1種類はその魚として、もう1つは・・・・・・。分かったから・・・そんな目で見るな。―・・・ほらほらー、紐だぞ」
 ゴルガイスは鮫肌の服と特技の水泳を生かし、ワカメを紐のようにつなげて引き寄せる。
「このまま罠の方に・・・。えぇえ、罠がスルーされたぞ!?」
 本物の猫のようにぐにゃっと柔らかい身体をまげ、追ってくる相手に驚きの声を上げた。
「―・・・はっ」
 遠くから仕掛けに入れ〜入れ〜というグラキエスの視線に気づく。
「入ればいいんだろ、入れば!うわぁああん」
 清水の舞台から紐ナシバンジーさせられた気分で、彼が仕掛けたトラップの中に飛び込む。
「よし捕まえたぞっ」
「我ごとかぁああ」
 ニァ〜ンズと一緒に登山用ザイルで捕縛された彼が喚く。
「これ、SP足りるか?」
「酷いな・・・、我も凍らせる気だな」
「私たちの氷術では凍結させきれないぞ、ロア。というかザイル抜けそうな気が・・・っ」
「あちゃー。しかもめちゃくちゃ怒っているな。あははっ」
「ロア、あははじゃないっ。どうするんだ!」
「私のパラダイス・・・いえ、現場には近寄らせないわ!」
 桜月 綾乃(さくらづき・あやの)が強化型光条兵器ルミナスワンドのバニッシュで追い払おうとするが・・・。
「きゃぁああ、突進してくるぞっ」
 ブォンッと尻尾をふられ、ニャーンアタックをくらいそうになる。
「あいやー可愛いサメアルな。でも、怒り狂ってどうにもならいみたいアルネ」
 彼女から引き離そうと奏 美凜(そう・めいりん)は等活地獄で海のギャングの気を引く。
「狩ったら美凜に料理でもしてもらうかしら?」
 呪鍛サバイバルナイフを手に隠形の術で舞香が岩陰から迫る。
「大人しくさせるなら、やっぱり頭を狙わなきゃね」
 ブラインドナイブスで死角を狙い、ギラリと頭部に刃の先を向ける。
 急所の脳天をざっくと刺し、ズズッと裂き仕留める。
「見ちゃいけない、グラキエス!」
 彼に衝撃シーンを見せたらどうなるか分からないと思い、ベルテハイトがとっさに両手で目隠しをする。
「何で目隠しをするんだ?」
「まだだめだっ」
「俺でも目の前で、あれは出来ないな・・・」
 陸へ運んでいく様子を眺めながらロアは、動物大好きな彼の前じゃ無理だなぁと呟く。
「もういいぞ」
「ふぅ・・・どうして目隠しなんかした?」
「世の中には見ないほうがいいこともあるんだ」
「あれじゃないですか?流行っぽい言葉の、肉食系女子っていう感じの。発掘現場に、すでにそれらしい人がいるみたいですし。そう見えませんか?」
 ザイルから抜け出したゴルガイスが横から口を挟む。
「確かにそうかもな」
 彼の言葉にレヴィシュタールが即答でこくりと頷く。
「えぇー、じゃあもしかして俺たちって草食系?なんか響きがひょろっぽそーだな」
「グラキエスをリーダーに、ほんのり草食系チームか?ロア」
「ほんのりって何だよ。びみょーなネーミングだな。それに狩るほうだし、狩られるのは簡便だ」
「ロア・・・そのセリフは今の話の流れだと、誤解を生むぞ。確かにロアは食材を狩る派だけどな」
「ん、何だグラキエス」
 つんつんっと指で突っつかれゴルガイスが振り返る。
「すまない!すっかり忘れてた。頼むからすねないでくれ、俺が悪かったから謝るからっ」
 ニャ〜ンズと遊べずドンヨリとした顔をして背を向ける彼に謝り、光術で明りを点滅させて海のギャングたちを呼び寄せる。
「俺が獲った感じじゃないけど、食べる分は確保したし。次はグラキエスにつきあわなきゃな」
「遊ぶのはいいが、ロア。タンクの残量に気をつけろよ」
「分かってるって」
「これに追いかけてくるとは、猫だな・・・」
 グラキエスは背中にセットしたネロアンジェロのスピードで避けながら、ワカメで作った紐をゆらゆらと振る。
「ほーれほれ。こっちにもこい!」
 シャーーーーーッ。
 威嚇したような声を上げたニャ〜ンズがロアにニャーンアタックをしようとする。
「当たらないぞ、そらこっちだっ」
 シャーーーーーッ。
 フォァアァアアアアッ。
 毛を逆立て彼に向かって突進する。
「なんだかロアのほうだけ、異様にシャーシャー言われてないか?」
 敵視されてしまっているんだろうと、レヴィシュタールは肩をすくめる。
 ギャングたちに威嚇されず遊んでいるグラキエスの方は・・・。
「よし・・・これをよく見ろよ・・・」
 ヒュッとワカメの紐を放り投げ、それに群がっていた隙に柔らかなニャ〜ンズのボディーにダイブする。
「ふかふかだな」
 振り落とされないように掴み、もふっと顔をうずめる。
 乾いた毛の上ならもっと心地いいのだけど、それでも満足だというふうな幸せそうな顔をする。
「こんなものまであるのかっ」
 胸ヒレの裏側を触るとプニプニとした肉球を発見した。
「ロアーーッ!」
「おー、どうしたー?」
「ニャ〜ンズには、肉球があるぞーっ!!しかもプニプニだ、・・・・・・俺は感動したっ」
「ぉお、そうなのかーっ。触れてよかったなぁあ」
「このまま眠ってしまいたい・・・」
 攻撃しない危なくない人だと認識されたおかげで触れることが出来た。
「あ、タンクの酸素がヤバイな。そろそろ戻らないと」
「そうか、俺も戻るか・・・。ん、送ってくれるのか?ここでいい、狩ろうとする者に襲われるかもしれないからな」
 ぐるぐるぐる〜と機嫌のよさそうな相手の頭を、よしよしと撫でたグラキエスは陸へ戻る。



 生徒たちが陸へ戻り始めると、日が傾き沈みかかっている。
「もうすぐ夜だね。温かい料理の用意でもしようかな」
 皆が海から戻ってくる頃かな、と思い弥十郎はブイヤベースを作る。
 レンガに固定された鉄の棒に寸胴鍋を吊るし、獲れたての小魚でスープを取り、台の上に置いておく。
「たまには炭火でもいいね」
 別の鍋を吊るして油を引き、たまねぎとニンニク、セロリをジュウジュウと炒める。
 数種類の魚を加えて炒め、もう1つの鍋のスープを入れる。
「後白ワインを・・・って、あれ?持ってきたはずなのに・・・。なぁああいっ!!」
「どうしたんだ?」
 弟子の騒ぎ声に何事かと直実が駆け寄る。
「おっさん・・・ワイン忘れてきちゃったよ・・・・・・」
「これで代用できるか?」
 たまたま持っていた超有名銘柄の日本酒を弥十郎に渡す。
「ありがとう!お酒とフェンネル・・・お塩をぱらぱらっと加えてっと」
 炭を火の中に入れて強火にする。
 15分後・・・。
 ジリリリッとタイマーが鳴り、火から鍋を下ろす。
「ちょうど15分だね」
「何で15分何だ?」
「ブイヤベース憲章というので決まっているみたいなんだよね」
 おたまですくい鍋から器に盛りつける。
「味見してみてよ。どうせ、その般若湯も飲むんでしょ?」
「お、分かってるじゃないか」
 笑いながら受け取り、ぐっと飲み干した。
「あ、作ってみたんでどうぞ」
 弥十郎は施工管理技士にも出来立ての手料理を振舞う。
「ん・・・気づかわなくてもいいのに」
「早朝から来てくれたからね♪」
 テーブルに皿を並べ、ブイヤベースの準備をしながら微笑み返す。
「また明日、作業してそこで休もうか」
 陸に上がったアキラたちは、料理☆Sasaki 不定期営業中の看板が置かれた入り口を通る。
「温まりますね」
「あったかいワネ」
 ヨンとアリスもスプーンですくって口に運ぶ。
「夕食もちゃんと用意されてみるみたいよ、セレン」
「かなり冷えちゃったから助かるわね」
 セレアナの隣に座り器に手を当てて温まる。
「いい匂いだな、3人分くれ」
 テントの近くから漂う香りに誘われ、和輝たちも夕食を食べる。
「はーいどうぞ」
「どうも・・・。アニスも食え」
「うん・・・海の傍で食べてくるね」
「あらら、あの子の近くにいっちゃったわね」
「たまねぎが入っているから、あげちゃだめだよー!」
「わかったー」
 ニャ〜ンズに与えないように言う弥十郎にアニスが返事をする。
「朝方1匹獲ってきた人がいるけど、2匹目かな?」
「獲ったサメでフカヒレスープを作るアル!」
 鍋の傍にいる弥十郎に声をかけられ、美凜は血まみれのニャ〜ンズを見せる。
「皆さんはお疲れでしょうから、私が料理してあげましょう」
 子敬はフカフレを鍋に煮始め、生姜と白ネギを刻んで煮ておいたものと一緒に炒める。
 沸かした湯をトプトプと加えてから鶏ガラスープの素と酒、醤油を入れて塩をスプーンでくすい入れる。
「片栗粉で少しとろみをつけて・・・。完成です!」
「いい香りアルネ」
「コラーゲンがたっぷりね」
「―・・・獲物しか獲ってませんから、明日は働かなくては」
 舞香と綾乃も器によそってもらう。
「生臭くないし、さっぱりした感じだな」
 ロアたちも子敬が作ったスープを口にする。
「お刺身や炙ったのもありますよ。お好みでネギやみょうがを巻いてどうぞ」
「いろんな食べ方があるのか!ん、肉っぽい感じの食感なんだな?うまい、うまーいっ」
「グラキエスも食ってみろよ」
「いや、俺はエビなどをもらおうかとな」
 さすがに抵抗があるのか、それが何なのか知っている彼は口にしようとしない。
「テントはちゃんと2つあるんですね☆皆、ハミガキしました?ちゃーんと顔洗いました?ではお休みなさい〜」
 詩穂は皆に手を振ると女子用のテントへ入った。