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太古の昔に埋没した魔列車…エリザベート&静香 前編

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太古の昔に埋没した魔列車…エリザベート&静香 前編

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第12章 手を休めてブレイクタイム

「採掘の終了報告はエリザベートちゃんがもらいましたけど。魔列車の方はどうなんでしょうね?」
 神代 明日香(かみしろ・あすか)はシートの上でのんびりと、エリザベートと一緒に報告を待つ。
「見に行きたいですぅ〜」
「浮き輪やボートじゃ、現場にはいけないですよ?エリザベートちゃん」
「むぅう〜」
「そんなお顔しないで、お茶でもどうですか?」
 つまらなそうな顔をする少女にお茶を淹れてあげる。
「戻ってくると暑いけど、水中作業の方も大変なんだよな」
「ご休憩ですか?」
「ちょっとだけな」
「疲れている体には甘い物がよいですよ」
 砂糖漬けのスライスレモンをアキラに差し出す。
「ん〜、うまいなー」
「補充用のタンクは酸素の方ですか?こちらにヘリウムガスもありますが、いかがでしょう?」
「アキラさんはヘリウムにしてみては?」
「いやだ、呼吸出来ないじゃないか」
「えぇ、知ってます」
「ヨン・・・まだ根に持っている?」
 恨めしそうな目でまた見られ、プイッとそっぽを向かれる。
「だってもう眺めが凄すぎるからさ・・・。女の子いっぱいいるし。しかも貝とか・・・」
「行きましょう、さん」
「黙ってればいいのニネェ」
 アリスは嘆息してヨンについていく。
「置いていくなってば!ねぇヨンだって可愛いよ。本当だよ、嘘じゃないってー」
「あらあら修羅場ですね」
 つーっとお茶を飲みながらアキラたちの会話を聞く。
「酸素タンク、3つくださいー」
 海から上がった誼美が勇刃の分を取りにきた。
「ごゆっくりどうぞ」
 さっと明日香が淹れたてのお茶を差し出す。
「わぁ〜ありがとう。ん・・・」
 彼女がのんびりしている頃、現場では勇刃たちがまだ帰ってこないのかぁあ、と騒いでいる。
「あっ、もうこんな時間だね。お兄ちゃんたちにタンクを届けなきゃ!」
 慌てて海の中へ飛び込み急いで3人のところへ戻る。
「遅いじゃないか、誼美ちゃん!」
「ごめんね〜お兄ちゃん」
 くつろぎ空間にはまりそうになっていた彼女は、3人にタンクを配る。
「ちまっとしか削れないな」
 勇刃は列車の下の方を掘ろうとピックで慎重に掘り進める。
「発掘なんて本来そんなものよ、勇刃くん。だからといって、荒っぽくて列車に傷つけちゃだめよ?」
「そんなの分かってるって瑠奈姉」
「列車の下の方ですね?大まかですけど発掘用ピックで、チェインスマイトで掘っていきますね」
 ガッガンッと岩を削りながら壁際へ飛ばす。
「こっちの方にも破片がけっこう山盛りだな」
 ミューレリアがサイコキネシスで飛ばして片付けてやる。
「ふぅ、丁寧に削るのって大変ですね」
 陽子の方は封印解凍し、列車の下の方を潜るように削る。
「そう?けっこう楽しいよ。絶景だし」
 チャージブレイクした疾風突きで、彼女の隣で掘りながら透乃がチラチラと見る。
「たしかに海の中ってキレイですよね」
「そうだね、最高だよ」
 透乃はチャージブレイクしながら、自分の理性もブレイクしそうだ。
「軽身功だけじゃ、水中だとあまり使い道がないわね」
 水中でのスキルを試そうとした芽美だったが、水圧の影響でただの泳ぎみたいになってしまう。
「神速の方も陸上よりはスピードが落ちるけど、泳ぐスピードは上がるわね。でも、その間の呼吸がつらいわ・・・」
「芽美ちゃんで陽子ちゃんが見えないよ」
「あら、邪魔しちゃった?それにしても、ニャ〜ンズがこないわね。陽子ちゃんが凍らせる前に、殺してみればよかったかしら」
「うーん、でもお昼に食べられるし!」
「まだ機会があるからいいわ」
 芽美はゴールドマトックを握り、神速を利用して軽身功で列車を駆け上がり、チェインスマイトで埋まっている部分の天井を破壊する。
「天井の方は私がやるわね」
「任せたよ!ん〜、お腹減ってきたね」
「そろそろお昼にする?」
「やったー、ニャ〜ンズが食べられるっ」
「そういえばやっちゃんの姿が見えませんけど?」
「んもう、サボってどこに行ってるのかな」
 その頃、彼はニャ〜ンズに遊ばれ3人に助けを求めて叫んでいた。
「きゃぁあ、やっちゃんがボロ雑巾みたいですよ!」
 ニャ〜ンズが去った後に発見した彼は元がなんだったか、わからないほどになっている。
「私を置いていくなんて酷い・・・ぐすん」
「お昼だよ、やっちゃん。早く食べに行こうよ」
 透乃は彼の腕を引っ張り無理やりつれていく。



「でかいカジキがいるぞ、カジキが!この1匹がいれば、炙ったり一工夫したり、いろいろ作ってもらえるよな」
 発掘現場から離れたところで大物を発見したトマスは、狩り獲ろうと挑みかかる。
 轟雷閃の雷の気を纏わせた猟用の銛で逃げようとするカジキの目玉を突く。
 電気をくらいながらも魚はびったんびったんと暴れる。
「倒すくらいならいくらでもやるわよっ」
 トマスが離れたのを見てミカエラはライトニングブラストの電撃で痺れさせ留めを刺す。
「大物が獲れたな!魯先生のところへ持って行こうっ」
「重量級だな、カジキって」
 元気な彼と対照的にテノーリオの方は、真夏の炎天下に顔から汗をだらだら流し、ぐったりしてきている。
「見てくれ魯先生っ。こんなのが獲れたぞ」
「戻ってきましたね、坊ちゃん。アスパラとエシャロットと一緒に炒めた料理にするのもいいですね」
 2本の出刃包丁を使い頭をドンッと落とし、腹を裂きエラを取る。 
「うわぁああ、魚の内臓がぁあ」
 カジキの解体ショーを見てしまった泰宏は思わず口を両手で押させた。
「内臓も食べられますよ?いかがですか」
「私は遠慮しておく・・・うぅっ」
「そうですか?体力つくんですけどね」
 子敬はカジキの内臓をボウルに移すと、腹の中を水でキレイに洗う。
「ミカエラ姐さんには鮭をさばいてもらおうか」
「それもありましたね、お願い出来ますか?」
「え、私に料理を・・・しかも、みんなに出すモノを・・・」
「教えるから大丈夫だって、ミカエラ姐さん」
「私に恥をかかせようというたくらみですののののののの?それだったらだったらだったらゆるせゆるせゆるせませんよ、先生、熊さん?」
 表情を一変させてたミカエラは口調が変になっているのにも気づかず慌てる。
「嘘でも、ミカエラ姐さんは女なんだから・・・って、俺をさばこうとするんじゃねぇ〜〜〜っ!!」
 殺気立つ彼女とテノーリオの睨み合いが続く。
「わかった、誰にだって得手不得手はある、そこか尊重しよう。逆手に柳刃持つの、だから、おねがいだから、やめて、ね??」
「問答・・・・・・無用ーーっ。きぇえええぃいいっ!!」
「どうしてそんなにイヤがあるんだ!?」
 ミカエラにお料理を教えようとするが、刃を必死に避けのでいっぱいいっぱいだ。
「仕方ありませんね、覚えてもらうのはまた後日にしましょう。魚が痛んでしまいますし。あ、フカヒレスープが鍋にありますからどうぞ」
「いっただきまーすっ。このシャキシャキした歯ごたえ、たまらないねぇ〜」
「素材の味も出てますね」
 透乃と陽子の2人は何杯もフカヒレスープをおかわりする。
「私は1杯でいいわ」
「残酷焼きの方を食べたいから、私も1杯で十分だ」
「テノーリオ!遊んでいないで、塩を皆さんにお配りしてください」
「遊んでいるわけじゃないってっ」
 やっとミカエラの刃から逃げ切った彼は、小皿に塩を乗せて4人に配る。
「あわびとかエビもあるのか、贅沢だな」
「こりこりしているよっ」
「えぇ、新鮮ですね」
「たまにはこういうのもいいわね」
「カジキの内臓を甘辛く煮たのもありますけど?」
「食べてみたいかもっ。おつまみにいいね」
 箸で摘みお酒のつまみでもいいかな、みたいに言う。
「透乃ちゃん、まだ発掘の途中ですよ」
「わかってるってば、陽子ちゃん」
「エリザベートちゃん、はいあーん」
「あ〜んっ」
 明日香とエリザベートは便乗して海の幸を食べる。
「炒め物も出来ましたよ」
「エシャロットとカジキって合うんですねぇ?」
「切り分けて食べさせてあげますね」
「はぁ〜い。はむはむ、美味しいですぅ〜」
「ねぇねぇ陽子ちゃん、私にも・・・あーっ」
「そんな人前で・・・」
「いいじゃん、気にすることじゃないよ」
 2人のやりとりを羨ましく思った彼女は恋人に食べさせてもらおうとする。
「仕方ないですね・・・はい」
「えへへ〜、美味しい♪」
「鉄板焼きかしら?私たちももらおうよ、セレアナ」
「そうねセレン。もうお昼だし。ていうか炎天下で何、暑そうなことをしているのかしら」
 食べさせあっている光景を見たセレアナが眉を潜める。
「私たちもやらない?」
「大勢の前で無理にきまってるでしょ、もうっ」
「分かってるわよ、言ってみただけ!」
 ちょっと残念そうに言い、香ばしく焼けた鮭を口の中に放り込む。



「土砂や埋まっていた部分を退けてもらったから、私も入れるようになりましたね♪」
 アリスだけじゃなく騎沙良 詩穂(きさら・しほ)も開きっぱなしの扉から入れるようになった。
「ただの列車として使われていたのでしょうか?」
 どんな経緯で製造されていたのか、魔列車に触れサイコメトリで調べる。
「な、何ですかこの情報量はっ」
 フロッピーディスクにギガバイトの容量のデーターを保存しようとして、出来なかったかのように何も知ることが出来なかった。
「頭が割れそうな感じがしましたね・・・。でもこれで諦める詩穂じゃありませんよ☆」
 もっと場所に触れてみようと運転席へ行き、ダークビジョンで真っ暗な操縦室を見回す。
「普通の列車とは違う雰囲気みたいですね?わからければこの手で調べてみるのが一番です♪」
 ペタペタと触れてサイコメトリでも知ることが出来ず、それどころか・・・。
「ひきゃぁああ、頭がハンマーで割られそうな感じがっ」
 知るためには明らかに脳内メモリーの容量オーバーで、歴史をすることが出来ない。
 詩穂は頭を抱えてゴロゴロと転がる。
「何、1人でコントしてイルノ?」
 悲鳴を聞きつけたアリスがハテナと首を傾げる。
「ボケツッコミというかボケボケヨ」
「そ、そんな〜。詩穂の存在がイリュージョンみたいじゃないですか!」
「そもそもただのイリュージョンだったトカ?」
「ぅう〜あんまりです、しくしく・・・」
 幻ような扱いをされ彼女は膝を抱えて涙を浮かべる。
「冗談ヨ、それより・・・何か分かったノ?」
「まだ何も・・・。あ、詩穂の描画のフラワシに、列車の模写をさせましょう♪」
 一瞬で泣き止んだ詩穂は従えているフラワシに耐水性の紙と油性ペンを持たせる。
「修理する時に必要ヨネ」
「詩穂が持っているのだけじゃ足りませんか。どうせなら原寸大を描かせましょうか☆修理するための経費として、陸にいるエリザベートちゃんに頼んできますね」
 そう言うと彼女は陸に上がりエリザベートに頼み込む。
「いっぱい耐水性の紙と油性ペンをください☆原寸大に書いたのは、魔法学校に展示させてあげますから♪模写の所有者の権利は、詩穂にもありますけどね☆」
「では用意しますねぇ」
「こんなこともあるかもって、私が準備をしてきましたよ。はい、エリザベートちゃん」
「ありがとうございますぅ〜、明日香♪」
 至れり尽くせりで明日香に耐水性の紙と油性ペンを用意してもらった。
「ではこれをいただいていきますね☆」
 持てる分だけ持って行き、バシャンッと海の中へ戻っていく。
「描画のフラワシちゃん、これに外観や内部構造などを出来るだけ精密に描いてください☆」
 魔列車の原寸大の模写を始めた頃、桜月 舞香(さくらづき・まいか)は環菜に列車を引き上げる手配を頼もうと連絡をしている。
「もしもーし環菜さん?発掘したら大型飛空挺とかで吊り上げようと思っているんだけど。それの手配を頼めるかしら」
「それはもうラズィーヤに頼んで考えてもらったわ。他の方法で持ち上げるのは無理みたいなのよね」
「発掘したらイコンで引き上げる感じね。ただ先に埋まっている部分などを退けないと、列車に傷ついたり岩場にひっかかって破損する危険があるのよ」
「安全を考えるならその方法の方がいいかもしれないわね」
「発掘した後に洞窟の出口辺りまで引っ張りやすいように、一輝が何か考えてくれたみたいよ」
「なるほどね・・・分かったわ」
 それだけ聞くと舞香は電話を切った。
「えーっとその運ぶための地面は、こんな感じにしてくれないか」
 施工管理技士に描いてもらった図を天城 一輝(あまぎ・いっき)が舞香に渡す。
「出口辺りの先頭車両の・・・前の辺りは、少し山形に緩やかに滑る感じにな」
「そうしたら当然、傾斜はキツクない感じよね。出口辺りは外ハネヘアーな感じかしら?」
「下に滑るようにすると持ち上げる時、列車に負荷がかかるからな」
「引っ張り始めるところと、持ち上げる時の間は平らでいいのよね?」
「あぁ、それで頼む」
「皆に見せるから、借りていくわね」
 用紙をビニールに入れると舞香は海の中へ飛び込み、パートナーたちと発掘現場へ行く。