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リアクション
■■■
反乱軍と教師軍の戦いは、刻一刻と激化していく。
そんな中、教師軍が優勢という現状を覆そうと、一部の反乱軍生徒たちは、とある計画を立てていた。
「……本気なんですかね、あの作戦?」
「ああ、本気だろうな。あいつら、本気で職員室を襲撃しようとしてるよ」
シャウラ・エピゼシー(しゃうら・えぴぜしー)のはっきりとした答えに、相棒のユーシス・サダルスウド(ゆーしす・さだるすうど)は苦虫を噛み潰したような表情を浮かべた。
「いくら現状の打開のためとはいえ、やっぱり無茶ですよ。敵の本拠地を占拠なんて」
「いいんじゃない。どうせこれも夏休みから延長の悪ふざけだろ? まぁ、教導だったら洒落にならないけどさ」
そう言ってシャウラは気楽に笑う。そんなシャウラたちの後ろには、職員室襲撃のため、武装した生徒たちが集まっていた。
「ありがたいことに山葉学園長は、イルミンスールに出張中らしいしな。攻めるなら今のうちってところだろ」
「はぁ。まあいいでしょう。どうせ、僕たちのすることは、襲撃じゃなくてサポートですし」
「そういうことだ。できれば、もうちょっと色気のあるとこで活躍したかったが……、いくぞ!」
シャウラの声に応じ、ユーシスも動く。二人が先頭で廊下を駆けていった。
その先にあるのは、教師軍の本拠地『職員室』。
だが当然、そんな場所にやすやすと反乱軍が入れるはずもない。職員室の前には、指揮官らしき教師と、それを取り囲むように教師軍の生徒たちがいた。
「きたぞ! 反乱軍だ!」
「迎え撃て! ひとりも逃がすな!」
教師の言葉に従い、教師軍の生徒たちが一斉にシャウラとユーシスを狙う。
だがシャウラの弓のほうが、わずかに早かった。スキル「サイドワインダー」によって放たれた矢が、絶妙な角度でシャウラが狙った物を破壊する。
職員室の重いドアだ。その留め金だけを見事に破壊する。すると、ドアは重力に従って倒れる。その先には、例の指揮官らしき教師が立っていた。
「え……ぎゃああっ!」
潰された蛙のような悲鳴をあげて、教師が倒れる。指揮官が倒れ、教師軍の生徒たちに困惑という名の隙が生じた。
そんな絶好の機会を、反乱軍の生徒たちは決して見逃さない。
「おっしゃああっ! 今のうちだ!」
そんな雄叫びをあげ、健闘 勇刃(けんとう・ゆうじん)が先陣を切った。スキル「バーストダッシュ」で一気に加速し、職員室へと乗り込んでいく。
そんな勇刃を止めようと、職員室内にいる教師たちが立ち上がる。今にも教師全員で勇刃を攻撃しようとしたその時だった。
――ドォオオオンッ!
「な、なんだ?!」
突如、爆発音が響き、職員室の反対側のドアが吹き飛んだ。それに気を取られ、教師たちの視線が一瞬、勇刃から離れた。
「もらったぜぇえええっ!」
「ぐぁああっ!」
「ぎゃああっ!」
そんな隙を見て、勇刃がスキル「ゴルダ投げ」を使用する。勇刃の手から放たれた硬貨の弾丸を受け、教師たちは次々に倒れていった。
「うふふっ……計画成功」
そんな勇刃の活躍を、ドアの影からひっそりと見つめて、君城 香奈恵(きみしろ・かなえ)が悪い笑みを浮かべていた。
「香奈恵。お前、今なにをしたんだ?」
香奈恵の横に立つコルフィス・アースフィールド(こるふぃす・あーすふぃーるど)が顔をヒクつかせながら質問する。それに香奈恵は満面の笑みで答えた。
「大したことじゃないわよ。ちょっとドアを爆弾で吹っ飛ばして、先生たちの注意をそらしたの」
サラリとすごいことを言う。それにどうしたものかとコルフィスは苦笑いを浮かべた。
だが今はそんなことより、勇刃の援護だと香奈恵の件は無視することにした。
「おし! 反乱軍のみんな! 今のうちに教師に没収された物を取り返すんだ! 無事に取り返せたら、俺の秘蔵美少女写真をくれてやるぞ!」
『オォォオオーーーッ!』
コルフィスの言葉に、周囲にいた反乱軍の男子たちがものすごい歓声をあげる。誰も彼もがやる気に満ちていた。
「……すごい気迫ね」
そんな男子たちを見つめ、枸橘 茨(からたち・いばら)は呆れたように顔をしかめた。
「まあいいわ。私は私の仕事をするだけね」
そう言うと、茨は職員室に背を向ける。その視線の先には、教師軍の生徒たちが見えた。敵の援軍だ。
「悪いけど、ここは通させないわよ」
そう告げ、茨は手をかざす。瞬間、こちらへ向かってきていた教師軍の生徒たちは、一斉にその場に倒れた。
スキル「奈落の鉄鎖」の効果だ。生徒たちは皆、床にうつ伏せの状態で身動きが取れなくなっている。
「さあ、かかってきなさい。いくらでも私が相手になるわ」
「うおおっ! これはスッゴい戦いになってきたね!」
反乱軍の職員室襲撃を、部屋の隅からじっと見つめているのは、如月玲奈(きさらぎ・れいな)だ。反乱軍の生徒が、必死になって教師にぶつかっていくのを見て、手に持ったレポート用紙になにやら書き込んでいる。
「玲奈。さっきから一体何をしてるのですか?」
パートナーの奇行を見て、レーヴェ著 インフィニティー(れーう゛ぇちょ・いんふぃにてぃー)が顔をしかめる。そんなフィーの視線を受けて、玲奈は興奮した様子で告げる。
「何って、レポートだよ! この戦いを記録して、自由研究のレポートにするのよ! 名づけて『教師軍VS反乱軍 宿題を賭けた聖戦』……どう! ねえ、どう!」
眼を輝かせて玲奈はレポートを見せる。
それにフィーは、やや疲れた笑みを浮かべた。
「というか、まだ終わってなかったんですか、宿題」
「いやー、ほかの宿題は終わったんだけどね。自由研究だけまだだったから、ちょうどよかったよ」
呆れるフィーとは対照的に、玲奈はニコニコと満足そうに笑みを浮かべていた。さらにレポートに筆を走らせる。
「えーっと……しかし『宿題』が存在する限りこの聖戦は未来永劫続くであろう。私はその始まりをここに記す……っと! 完成! よーし! 早速、学校に戻って提出してこよーっと!」
「え! この騒ぎは止めないんですか! ああっ、玲奈! 待ってくださいっ!」
意気揚々と帰っていく玲奈の後を、フィーは慌てて追いかけていった。
反乱軍と教師軍の入り乱れる職員室。
おそらく、現状でここほど激しい戦闘が行われている場所はなかった。
そんな激戦の地でも、最も激しい戦闘を行っている二人がいた。
「はぁはぁ……やるじゃねえか、壮太」
「ふぅー……周のほうこそ」
鈴木 周(すずき・しゅう)と瀬島 壮太(せじま・そうた)は職員室の中央で、互いににらみ合っている。お互い一歩も退かずに、息を切らせながら対峙している。
「てか、壮太。お前、なんで教師軍にいるんだよ? どっちかって言えば、お前は反乱軍側だろ?」
「けっ! こっちは単位ギリギリなんだよ。こんなくだらねえことで、授業潰されて留年なんてなったらこっちが困んだ」
フンと鼻を鳴らして、壮太は答える。大学を考えている身としては、さっさとこの騒ぎを止めて単位を稼ぎたいのだ。
しかし、周はニヤリと笑う。
「へっ! 教師に媚売りやがって」
「そんなんじゃねえっての。てか、お前こそ柄じゃねえだろ。女が絡んでもいねえのに、職員室襲撃なんて……何を考えてやがる?」
「俺は教師に没収されたレポートを取り返したいだけだ!」
「没収って……つまり、それぐらい酷いレポートだったんだな」
「ふざけんな! あのレポートは、俺の最高傑作だぞ!」
そう自信満々に周は告げる。だがどうせ女に関する何かだろうと、壮太は想像してため息をついた。
「ま。どっちにしても、おとなしくオレに捕まるんだな」
そう言って壮太は机と椅子を浮かせる。スキル「サイコキネシス」の力だ。
「ちっ、面倒だな。……そっちがそうくるなら!」
そういうと、周は大きく跳躍する。そして、天井に向け、スキル「煉獄斬」を放った。
「これならどうだ!」
「? 何を……っ!」
首をかしげた壮太も、すぐに周の狙いに気づく。次の瞬間、火災報知器が鳴り響き、職員室のスプリンクラーから大量の水が振り出した。
「ふははっ! 今のうちにレポートはいただいていくぜ!」
「くっ! 周! お前なんてことを!」
水に壮太が困惑しているうちに、周は教師の机へと駆けていった。
しかし、
「って、うわぁああっ! 俺の傑作レポートが! 『蒼空学園内におけるスカート内部視認可能スポット』が水でグシャグシャにぃいいいっ!」
「……自業自得だ」
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