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リアクション
【終章】
結局、宿題戦争は、涼司の鶴の一声によって終結した。
しかし、被害は甚大だった。
長期の休み後で羽目を外しすぎた生徒と教師たちのせいで、校舎や備品に大量の被害が出た。
「……おらーっ! 自分が壊したブンぐらいは、自分で直せよ!」
涼司の号令を受け、教師軍、および中立で戦った生徒たちは、低いテンションで返事していた。
「はぁはぁ……な、なんで、……私たちは事態を収めようとしただけなのに」
「しかたないですわ。母様の出した召喚獣たちが、結構いろんなものを壊して暴れてしまったんですもの」
愚痴りながら、折れた木々を片付けている祥子に、静香は淡々とそう告げた。
「そうだな。確かにこういう作業は面倒だよな」
「うん。でも、誠治と一緒なら、そんなに苦痛じゃないかも……な、なんて」
校庭の修復作業中も、誠治とシャロの二人は相変わらずバカップルぶりを、周囲に見せ付けていた。
「はぁー……憂鬱よ。この作業の後、居残りで宿題やらされるなんて」
「だから、やっておけと言ったでしょう」
この世の終わりだという表情を浮かべるセルファを、真人は呆れた表情で見つめていた。
「うむ。結局、アレから一度も生徒は来なかったな。せっかく、多くの生徒たちに学ぶことのすばらしさを教えることができると思ったのだが……なぁ、ラブ?」
「……ええ、そうね」
残念だ残念だと繰り返しながらも楽しそうなコアに対し、あわよくば騒ぎで宿題をやらずに済むと考えていたラブのテンションは下がりっぱなしだった。
「ほら、そこーっ! サボっちゃだめーっ!」
「皆さんお疲れ様です。はい、麦茶です」
修復作業をする生徒たちを、美羽はサボっていないか確認し、ベアトリーチェは生徒たちに冷たい麦茶を振舞って、やる気を促進させていた。
「うーむ。生徒たちを扇動するまでは、良かったんですがねー」
「君、本当にそれでも教師なの? 疑いたくなるよ」
「わたくしも同感ですわね」
「そうですか? パラ実だと普通に見えますが……」
唸りながら何がいけなかったんだと繰り返すクロセルを、理沙とセレスは冷たく睨み、ガートルードはそんな二人の反応に首をかしげている。
「ふぅ……しかし、もしものために原紙を取っておいてよかったぜ」
戦いで粉砕されたレポートと同じものを後日持ってくることで、補習を免れたエヴァルトは満足そうに笑みを浮かべている。
「ったく……あの生徒。どこをどう見たら、私が宿題をしてこないような馬鹿に見えるって言うのよ」
「……ヴィクトリカ。まだそのこと根に持っているのですか?」
未だに怒りの収まらないヴィクトリカがグチグチと文句をたれているのを、アーサーはため息混じりになだめていた。
「主。もう起きて大丈夫なのですか?」
「ああ、大丈夫だ。少し落ち着いた。ただ……何でか、二の腕がヒリヒリするんだけど」
「ちっ……イルベルリのせいで、あんまり食べられなかった」
「だから、友達を食べようとしちゃだめでしょ!」
主を心配するアウレウスに、グラキエスはヒリヒリと痛む二の腕をさすりながら、返事を返す。その後ろで、不満げな表情を作るロアを、イルベルリが必死に説教していた。
「はぁー……せっかく、雅羅さんからメアドをゲットできるチャンスだったのに。グリムがメリーなんて呼んだせいだぞ」
「わかったわ。後でメリーは、厳しく叱っておくわ」
どこかかみ合わない会話をしながら、大助とグリムはメリーの壊した壁を補強していた。
「ったく……ついサポートに熱中してしまったな。隙を見て、放送室から彼女募集をかけようと思ってたのに」
「ああ、出会いが云々って、本気だったんですね」
ひとり愚痴るシャウラに、ユーシスは苦笑いで答えていた。
「くそ〜! 教師どもめ! いつか、この恨み、はらしてやるからな〜!」
「まったくだ。こっちは、コレクションの写真まで出費したのに」
「そうよそうよ。私なんてドアぶっ飛ばしただけで、ゲンコツされたんだから!」
「あの、皆? それを逆恨みというのだと思うのだけど?」
自業自得な説教を受けて不貞腐れる勇刃、コルフィス、香奈恵の三人に対し、ひとり茨だけが冷静に突っ込みを入れていた。
「うふふふっ! 清書、終了! 後は、明日このレポートを提出するだけね!」
「お疲れ様です。けど、玲奈? 宿題の提出って、今日の朝までじゃなかったですか?」
そんなフィーの言葉に、意気揚々とレポートを手にしていた玲奈は、一瞬で凍りついた。
「うぅ、えぐっ、ぐぐぅうっ!」
「おい、周。お前、たかがレポートひとつでいつまで泣いてんだよ?」
懇親のレポートが水でやられたショックから立ち直れていない周を、壮太が必死になだめていた。
「も、もうだめ……三日徹夜した後に暴れたから、もう色々だめぇ」
「な、何言ってんのよ……もう少しがんばりなさい……あ、綺麗なお花畑が見えるぅ」
徹夜明けに過度の戦闘を行ったさゆみとアデリーヌは、うつろな瞳で校庭をならしていた。
「……うむ。みと。この材料は屋上のほうへ運んでくれ」
「了解しました、洋さま」
暴動制圧のためにきた洋とみとは、あれだけの戦闘の後でも、けろりとして校舎の修復作業を手伝っていた。
「ううっ、この見積もり……確かに生徒たちに作業させてるから人件費は浮くけど。涼司くん、大丈夫かな?」
不安げな表情で、加夜は修理用の材料の総額を見つめ、涼司のことを心配していた。
「……だから! その修行に対する集中力を勉学のほうにも向けることで、」
「ああ、もう! うるさいわね! 私の勝手でしょ!」
「いや、寿。少しは彼の言うことを聞いて、宿題しなきゃだぜ」
「うん、うん。そのとおりです」
淡々と説教する大吾をうざがる寿。そんな寿を、さらにキルティとレイが言及していた。
「いててっ……雅羅さん、あんなに怒んなくてもいいのによぉ」
「うわぁああんっ! あんなに手を痛くして写したのに、補習させられるなんてぇー」
頬にくっきりとできたビンタの後をさすっている食人の横で、ヴェイダーは今日の苦労が水の泡に消えた事実に、涙を流していた。
「くそ……何故、ジャスティシアである俺がこんな目に」
「ははっ! 暴れたんだから、しかたないだろ」
自分で廊下に空けた穴を補修しながら、愚痴るシオンを、同じように補修作業しているヴァイスがケラケラと笑っていた。
「はぁー……私はなんてことを」
「柚。そんな落ち込むなよ。大丈夫だって、溶かし本を弁償しろなんて言われないよ」
「そうですわ。むしろ、有無を言わさず、下の階に落した私に対して責任を感じてください」
本を溶かしたことでブルーになっている柚を、三月が慰める。そんな二人をジト目で見つめながら、セシルは落下した際に強打した腰をさすっていた。
「あーあ。せっかく、雅羅ちゃんに感謝してもらって、お礼に雅羅ちゃんの席をクンカクンカできるチャンスだと思ったのに」
「ちょっと待って、お姉ちゃん。本気でそれをお願いしようと思ってたの?」
がっくりと本気で落ち込みながらそんなことを言う瑠兎子に、改めて夢悠は顔を引きつらせていた。
「おい、お前ら! しっかり働けー! 校舎の修理と、夏休みの課題がお終らねえヤツは帰らせねえからな!」
そんな涼司の言葉に、生徒たち全員がそろって『ええーーっ!!』と悲鳴に近い声を上げた。
こうして、第一次蒼空学園宿題戦争は幕を閉じたのだった。
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担当マスターより
▼担当マスター
海原三吾
▼マスターコメント
どうも皆様、お付き合いいただきありがとうございました。
今作「第一次蒼空学園宿題戦争」、楽しんでいただけたでしょうか?
今回はコメディに挑戦ということもあり、色々とビクビクしながら書いていました。
いやー、笑いって難しいですね。
それでは、また次回作で会えることを期待しています。