First Previous |
1 |
2 |
3 |
4 |
5 |
6 |
7 |
8 |
9 |
10 |
11 |
Next Last
リアクション
第五章:渋井 誠治
同日 某時刻 海京某所
(オレはラーメンを愛しているあんなものはラーメンじゃない。ラーメンの『魂』がない!)
静かに、しかし激しい闘志を燃やして、渋井 誠治(しぶい・せいじ)は胸中に呟いた。
(ラーメン好きの仕業と見せかけて、本当はラーメン嫌いなヤツの仕業だろう。ラーメンのイメージダウンを狙ってるんだろうがそうはいかないぞ)
自らに言い聞かせるように、彼は更に胸中で呟くと、顔を上げてしっかりと前を見据える。
(ラーメン職人のオレがラーメンを救ってみせるぜ!)
今、彼がいるのは海京の一角。割と開けた路地には、彼が出した屋台が建っており、その屋台を押し潰さんばかりの勢いで無数のキメラーメンが殺到している、まさに真っ最中だ。
キメラーメンは無数に存在するようなので、どうにかして一ヶ所に集めて一網打尽にしたいと考えた彼は、メラーメンの発生場所を銃型HCに入れ、その中心となる場所で屋台を開いて『本物のラーメン』を作ってキメラーメンを誘い出す作戦を試みた。
その作戦は見事に功を奏し、無数のキメラーメンが瞬く間に集まってきたのだ。その群れと相対しながら、彼はゆっくりと息を呑んだ。多勢に無勢なのは理解しているつもりだったが、この規模は想像以上だった。
大量の麺が一斉に伸ばされ、瞬く間に屋台は膨大な量の麺に巻きつかれ、姿が完全に覆い隠されてしまう。屋台の中にいたおかげで、誠治は麺の直撃すら免れたものの、彼をガードしている屋台はそれほど長く保ちそうにはない。
既にミシミシと音を立てる屋台は、もう圧壊寸前であることは明らかだ。だが、誠治は自分を叱咤するように言い聞かせ、屋台から脱出したい衝動をこらえる。
この作戦が真価を発揮する為には、ギリギリまでキメラーメンたちを引き付けることが不可欠なのだ。
(オレはラーメンでパラミタを平和にすると誓った男だ。こんなところで負けてられないぜ!)
麺の隙間から僅かに見える光景は、絶句を禁じえないものとなっていた。更に数を増やしたキメラーメンが殺到し、路地はキメラーメン一色に埋め尽くされている。そして、そのキメラーメンたちは麺を伸ばすだけでは飽き足らず、遂には一斉に屋台へと飛びかかった。
(今だッ!)
それを確認した誠治は意を決し、屋台に撒きついたラーメンを手で強引に押しのけると、こじ開けるようにして屋台の外に飛び出すと、脇目も振らずに全力疾走し、前方に見える川に飛び込むべくジャンプしたのだ。
それと同時に手の中に握ったスイッチを親指で押し込む。すると、彼の背後で屋台が大爆発を起こす。彼が屋台に仕掛けておいた機晶爆弾が点火されたのだ。
盛大な爆音とともに、巨大な爆風と爆炎が無数のキメラーメンを巻き込み、爆破していく。しばらくして爆煙が晴れると、そこにキメラーメンの姿は一つもなかった。
First Previous |
1 |
2 |
3 |
4 |
5 |
6 |
7 |
8 |
9 |
10 |
11 |
Next Last