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彼女はデパートを見たことが無い。

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彼女はデパートを見たことが無い。

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「……ここも、人いっぱい」
 上の階へと来たニアは先ほどとは違う雰囲気を楽しみながらフラフラと歩いていた。
「やぁやぁ、そこのかわい子ちゃん! お一人かい!?」
 可愛い子を見つけて興奮しながらニアに近寄るコルフィス・アースフィールド(こるふぃす・あーすふぃーるど)
「かわい子ちゃん……。ニアの事?」
「もちろんだよ! あ、そうだ。キミの名前は?」
「ニア」
「そうか、ニアっていうのか。俺はコルフィス! よろしくな!」
「うん。それで、ニアに何か用?」
 首を傾げるニア。そして、心撃たれるコルフィス。
「うっ! そのしぐさ……可愛い!」
「……どうしたの?」
 一人もだえているコルフィスにさらに首を傾げるニアだった。
「あ、ごめんごめん。それよりさ! 俺と一緒に、恋の旅をしてみないかい!?」
「……恋の、旅?」
「そう! 一緒にデパートをデートして楽しもうぜ!」
「楽しい……うん、行く」
 恋の旅という言葉にピンと来なかったニアだが、楽しいという言葉を聞いてこくりと頷いた。
「おーい! コルフィス! あ、こんなところにいた……、ってまたナンパしてたのか」
 コルフィスを捜していた健闘 勇刃(けんとう・ゆうじん)がやってきた。
「コルフィス、そんなことしてないで行くぞ」
 勇刃が引っ張って行こうとするが、全くビクともしないコルフィス。
「その程度では俺を止められないぜ!」
「よほど好みらしいな……。しょうがない、付き合ってやるか。えっと、君の名前は?」
「ニア」
「ニアか。よろしくな」
「うん、よろしく」
「さぁ、ニアちゃん行こうか!」
「わぷっ!」
「……?」
 と、三人が歩きだそうとしたところにニアにぶつかってきた十五夜 紫苑(じゅうごや・しおん)
「あっ、おねえちゃんごめんなさい」
「……平気?」
「うん、オレはへいき!」
「ごめんなさい、紫苑がご迷惑を……」
 紫苑がぶつかったのを謝りに来た、樹月 刀真(きづき・とうま)
「大丈夫」
「それは、良かった。ん? 勇刃達も来てたのか」
「クリスマスパーティーの食材を買いに来たんだけど、コルフィスがねぇ……」
「ニアちゃんは何処に行きたい?」
「……楽しければ、何処でも」
「おねえちゃんはデパートはじめて?」
「うん、人が一杯いて、楽しい場所」
「へぇ! じつはオレもはじめてなんだ!」
 勇刃はニアと話すコルフィス達の方を見る。
「そういえばあの子は誰なんだ?」 
「ニアと言うんだけど、一緒にデパートを見て回るってことになったんだ」
「それで一緒にいたのか」
「そうだ、はじめて同士だし、いっしょに行こうよ!」
「む、ニアちゃんは俺と一緒に……」
「……多いほうが、楽しい。うん、良いよ」
「なっ!? ニアちゃんまで……!」
「……ダメ?」
 首を傾げるしぐさに再び心撃たれるコルフィス。
「……可愛いっ! もちろん、良いとも!」
 三人の会話を聞いて苦笑する刀真。
「……ということらしいから俺達も一緒で構わないか?」
「もちろん」
「刀真? 紫苑連れてくるのにどれだけ時間かけてるのよ?」
「……別に、いつまでかけてくれても良いんだけど……」
 いつまでたっても来ない刀真を捜しにきた漆髪 月夜(うるしがみ・つくよ)ラグナ ゼクス(らぐな・ぜくす)の二人。
「すまない。それと――」
 刀真が二人に事情を話す。
「……ということで、これからニア達と一緒に行く事になった」
「なるほど、そういうことならせっかくだし一緒に楽しみましょ!」
「マスターがそういうのでしたら僕は構いませんが……」
「よし、じゃあそろそろ行くか」
「……どこに連れて行ってくれるの?」
「そうだな……、昼時だし、まず昼食でもどうだ?」
「……ご飯、食べる」
 ニアが頷くと同時にニアのお腹から可愛らしい音が聞こえてくる。
「お腹の音まで可愛らしいっ! よしっ、早速食べに行こうか!」
「ごはん食べるぞー!」
「じゃあ、決まりだな」
「……でも、お金、ない」
「そういうことなら――」
「俺が貸してあげますよ」
 コルフィスが言い終わる前に刀真がニアに言う。
「うん、いつか、返せたら」
「…………」
「どうしましたコルフィスさん?」
「いえ、なんでもないです……」
「……?」
 しょんぼりするコルフィスに首を傾げるラグナだった。
「まぁ、良いか。早速行きましょう」
「あ、待ってくださいマスター」 
「……気が付いたらなんか賑やかになったな……」 
 勇刃はそう呟きながら刀真達の後を追った。