薔薇の学舎へ

波羅蜜多実業高等学校

校長室

葦原明倫館へ

彼女はデパートを見たことが無い。

リアクション公開中!

彼女はデパートを見たことが無い。

リアクション

「フハハハ! これで、ホワイトキャットマンも迂闊には攻撃できまい!」
「お、おとなしくしていないと、この子が、た、大変な事になりますよ」
 ハデス達のところには人質役として舞台に上がったニア。
「くっ! なんて卑怯な事を……!」
「人質がいるのでは聖剣の俺も手出し出来ない……!」
「さぁ、覚悟して――」
 っと、ハデスが言いかけたところに、
「『サンダーブラスト』!」
 何処からともなく放たれた雷が舞台の上を襲う。
「っ!」
 白竜が咄嗟に『対電フィールド』を展開し、防御。周囲が一瞬唖然となる。
「……やられた! しかし……倒れん!」
 だが、白竜がそのまま演技を続けた事により、演技の一部だと理解した観客。すごい演出に歓声が上がる。

「えっ、今のどこから?」
「分かりません……、でも次が来る前に探し出しませんと……」
 美羽達も唖然としていたが、すぐさま周囲を見回し元凶を探す。
「でも、今の声どこかで……、あっ!」
 そこでアリスが翠の存在に気付く。
「翠ちゃんだ! おーい!」
 アリスが手を振ると、翠も気付いたらしくアリスの方へと駆け寄ってくる。
「あっ、アリスちゃん! もう、探したんだからー」
「ごめんね」
「でも見つかってよかったー」
「翠! いきなり駆け出さないで……あ、アリス! こんなところにいたのね」
 そこに翠を追いかけてきたミリアも合流。
「アリスちゃん迷子だったんだね。ニアちゃんと一緒だったからてっきり……」
「あ、美羽さん達。ごめんなさい。アリスがご迷惑を……」
 ミリアが美羽達に気付いてミリアが頭を下げる。
「ううん、気にしないで平気だよ♪」
「むしろ楽しかったので大丈夫ですよ」
「フハハハ! どうだ! オリュンポスが作り出した裁きの雷は!」
「くっ! なんて強力な力だ……! でも、こちらだって!」
「むむっ! まだ悪い事しようとしてる……!」
 その間にも続くショーそれを見て翠が頬を膨らませる。
「悪い事はダメなんだから! 『サンダーブラスト』!」
「えっ!?」
 その場にいた面々が呆気にとられている内に再び放たれた雷が舞台を襲う。

「カリバーン……力を貸してくれ!」
「むむっ! この状況で何をしようと言うのかね!?」
「行くぞ、必殺――!!」
 と、言いかけたところに再び襲ってくる雷。
「まずいっ!」
 白竜は再び『対電フィールド』を展開し防御。
「きゃわわわわっ!?」
 が、そのフィールドに入れなかった不幸な少女アルテミス。見事に一人だけ感電していた。しかし、これはチャンスと思った白竜。
「必殺! ライトニングブレイカー!」
 と、適当に必殺技の名前を出して剣を振る。ハデス達も理解したようで、あたかも攻撃を受けたかのように吹き飛ぶ。
「きゃあ!」
「ぐはぁ! や、やるではないかホワイトキャットマン!」
 そしてその間にニアを救出する白竜。
「大丈夫かい、お嬢さん」
「……うん、平気」
「勇者! 今がチャンスだ!」
「よしっ!」

「むーっ! もういっかい――」
「……はっ! 翠! ストップ!」
 まだ続くショーに再び『サンダーブラスト』を撃とうとする翠を我に帰ったミリアが止める。
「なんで止めちゃうのー!?」
「えっと、翠ちゃん。これは悪い事してるわけじゃないんだよ?」
 他の面々も翠の説得を始める。
「え? でも……」
「翠ちゃん、あれはお芝居なの」
「おしばい……?」
「はい。悪い事ではなく、お客さんを楽しませようとしているだけなので攻撃はしないでいただけると助かります」
「翠、分かった?」
「……うん、分かった」
 翠は理解したようでこくりと頷いた。
「後でみんなに謝らなくちゃ……」
「あはは……、ほら、それよりもせっかくなんだから一緒に観ようよ♪」
「……そうね」
「翠ちゃんも一緒にみよ♪」
「うん!」
 翠の説得に成功し、ミリア達も一緒にショーを見ることとなった。

「さぁ、子供達の夢を奪う悪の秘密結社オリュンポス! 覚悟!」
 白竜がカリバーンを構える。
「聖剣である、この俺が正義の鉄槌をくだしてやる!」
「悪を断ち切る聖なる剣! カリバーン!!」
 白竜がカリバーンを振り下ろすと同時に、ハデス達の足元付近に仕掛けられた噴出花火が吹き上がる。
「きゃあ!」
「きゃあぁぁぁぁ!」
「ぐわぁぁぁ! この俺達が負けるとはぁぁ! 覚えていろホワイトキャットマン!!」
 というハデスの台詞と共にアルテミスの持っていた袋からプレゼントが飛び出し会場へと降り注ぐ。
「子供の夢を奪う悪は敗れた。これは私達からのプレゼントです」
「みんなしっかり持って帰るのだぞ! 今日は集まってくれてありがとう!」
 という白竜とカリバーンの言葉でヒーローショーは大歓声の内に終了した。

「みんな、おつかれさまー♪」
「お疲れ様です」
「ごめんなさい、途中で翠が大変な事をしてしまって……」
「……楽しかった」
 着替え終わって出てきたハデス達を出迎えるニア達。
「あれは及川 翠のものだったか。だが、おかげでショーを盛り上げることはできた。感謝しようではないか」
「そうですね。私も使わせてもらいました。感謝しています」
「わ、私はまだ少し痺れていますけど……」
「大変だったみたいだね。オレは子供達に囲まれて大変だったよ」
「私はものすごく恥ずかしかったです……」
「勇者の剣……またやりたいものだ」
「そうだ。君も人質役をありがとう。良かったらコレ、差し上げますね」
 白竜がニアに渡したのは雪の結晶の形をしたヘアアクセサリー。
「……良いの?」
「はい、元々用意したプレゼントの余りですから。もしよければ貰ってください」
「……うん、ありがと」
「あ、私がつけてあげますね」
 咲耶がニアの髪へとつけてあげる。
「はい、出来ました」
「……嬉しい、ありがと。ショーも、楽しかった」
 満足げにヘアアクセサリーに触れるニアだった。